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競馬回顧 2020年4回京都

第162回天皇賞・秋(GⅠ)

アーモンドアイ

シープスキンノーズバンド。後肢にバンテージ。例に依って淡々と歩けていた。牡馬相手で横の比較だとそこ迄目立たないが、それでも3歳時と比較すれば大分ドッシリと見せる様になっている。ダノンプレミアムには叩かれる形になったが、キセキがセンター枠の馬を潰してくれたことでスッと好位。勿論、道中の折り合いは付く馬で、スローでも全く問題なく流れに乗れていた。抜け出すタイミングも何時でも良かったのだろうが、少頭数で捌き易くなり、自然と前がバラけて追い出したのはラスト300m。ただ、これだけ楽だった割に0.1秒差。思いの外、詰められた感が有る。GⅠ8勝の実績にケチを付けられないが、確実に終わりが近付いていることもまた確かだろう。あとはそれが残り少ない現役中に出るかどうか。

フィエールマン

-12kg。元々が細身に見せる馬で、この馬としてはこれ位で丁度。距離を意識して有る程度絞った分も有るだろう。キセキがまさかの好発で、内外から寄せられ、行き場がなくなり後方から。ただ、この馬自身もオットリしたタイプの馬だが、クロノジェネシスと違って今日は腹を括って後方一気に賭けたのが正解。内目に居た道中からクロノジェネシスの外へ持ち出して、今日のスローだと一手遅れた印象も有った程だったが、ラスト300mで左手前になり、そこから150mで右手前に戻ってグイッとひと伸び。デビュー以来、一番切れる脚を使えた。GⅠ勝ちが有っても全て3000m超では種牡馬としてあまり意味がなく、何処かで2000〜2400mのGⅠを勝ちたいところ。

クロノジェネシス

毛ヅヤが冴えて、トモも張っている。馬体にケチを付けるところはないが、何時もより明らかに気負っていた。ゲート内の駐立も悪かったが、これもフィエールマン同様、スタート直後に挟まれる形で、後手に回って中段やや後方から。前走阪神戦の極悪馬場で圧勝した様に、気持ちの強い馬でこうなると怒って行きたがってしまうのは仕方がないところ。直線は良く頑張っているが、アーモンドアイの後ろから負かすのは厳しく、ラスト150m位で馬が諦めた様で止まったところをフィエールマンにも掴まって3着に。次はゲート五分に出て巻き返したいところ。

ダノンプレミアム

2人曳き。前肢にバンテージ。-10kg。馬体を絞っても迫力充分。ただ、何時も以上に煩かったのがマイナス。下見で気負っていたことも有り、変に小細工するよりはとハナへ。1000m通過が60.5秒とスローに落とせた。直線向いてから手前が替わらなかったのが痛い。ラスト200mでバッタリ止まってしまった。もう少しペースを上げた方が良かった気もしないでもないが、距離が怪しい馬だけにこれで仕方がないところか。

キセキ

前後肢にバンテージ。+6kg。最近は判で押した様に同じ様な馬体で出て来るのだが、気合乗りは前走京都戦より少しだけ良かった。最近では珍しく好発。外枠だったということも有るが、意外に出脚が有って好位を確保。道中の行き振りも良く、むしろ引っ張る気味で追走出来た。直線向いてからは流石に回転数が足らなかったが、それでもこのスローで掲示板は確保。次走以降は距離も延びるだけに、面白い存在となりそう。

第9回アルテミスステークス(GⅢ)

ソダシ

前後肢にバンテージ。前走札幌戦でも触れたが、2歳馬としては完成度が高い。馬体が整っており、歩様も力強い。好発。内の出方次第ではそのまま行かせても良かったのだろうが、オレンジフィズが内から主張して、番手から。ただ、外に居た関係で壁なしの形だったのだが、行きたがったのは一瞬だけで直ぐに折り合いがちゃんと付いたのが大きい。今の馬場は内一辺倒ではなく、折り合いさえ付けば外の方が伸びる。東京としては多少早目に追い出した様にも見えたが、最後迄確かな脚取りで完勝といえる競馬だった。ただ、馬場状態を考慮しても1分34秒9は平凡。完成度は高いが、本当の良馬場で時計勝負になると分が悪いかも。前走で述べた様にベストはダート。

ククナ

シープスキンノーズバンド。前肢にバンテージ。-8kg。数字は輸送分だろう。どちらといえば寸詰まりの縦長に見せるタイプ。歩様も伸びるタイプではなく、見た目だけならマイラー。出遅れたというより、外の馬の方が総じてゲートが速く、中段やや後方から。これだけだったらまだ良かったが、向正面半ば過ぎから中段位置がゴチャついて、そこから更に1馬身下げざるを得なくなったことにより、直線も中々前が開かず、前が開いたのはラスト1F。最後はディープインパクトの様な前脚を目一杯伸ばして掻き込む様な走法で伸びて来た。この鞍上にしては珍しい騎乗ミスだが、馬は頑張っている。ソエが出たとのことで年内休養とのことだが、この世代で今迄重賞に出て来た牝馬の中では一番インパクトの有る内容。

テンハッピーローズ

シープスキンノーズバンド。438kgの割に良く出来た馬。背丈が低いということも有るだろうが、馬体のバランスがいい。あとはもう少し歩様に力強さが来れば理想的。ゲート自体は速かったが、ソダシの方がそこからの出脚も速く、早目に引いて中段から。外に居た関係で道中のゴチャつきに巻き込まれなかったことは良かったが、ソダシと違って道中はところどころで少し行きたがっていた様に見えた。直線向いてからジワジワ伸びているが、道中で不利が有って更に後ろに居たククナにやられており、高い評価はし辛いところ。前走から500万にはメドを立てているが、オープンで闘うにはもうちょっと折り合い面をスムーズにしたい。

ストゥーティ

-6kg。420kgの数字通り、細身に映るが、馬体に窮屈なところがないのがいい。落ち着きが有って、歩様も実にスムーズ。一完歩目が怪しかったが、そこからの二の脚が速く、一瞬はハナへも行けそうな勢い。そこで引いて好位のインで我慢させる形。ただ、道中は力んでいた様にも見えた。内からそれなりに頑張っているが、420kgの馬が内目を通ると伸びが甘くなるのは仕方がないところ。今日の内容だけだと500万でギリギリ通用するかどうかだが、新馬即重賞でこれだけやれれば充分だろう。成長すれば先々走って来そう。

クールキャット

前肢にバンテージ。+14kg。一般論としてこの時期の馬体増は感激すべきところだが、腹回りがボテッと映った。かといって、トモの厚みも感じず、まだ鍛錬の余地を相当残している。基本的には胴長でスッキリとした馬。これもゲートというよりは、二の脚でカバーして好位直後から。今日のこの位置は宜しくなく、ククナ程ではなかったが、少し窮屈な競馬を強いられた感も有った。直線も、眼前のシャドウファックスがフラフラで思い通りに走れなかった印象。この馬の場合はトビが大きいだけに尚更応えただろう。恐らく距離ももっと有った方がいい。

第63回毎日放送賞スワンステークス(GⅡ)

カツジ

シープスキンノーズバンド。馬体に大きな変化はないが、この馬としては硬さがなかったのが何より。水平首で集中して歩けており、全く人気はなかったが、下見から雰囲気は良かった。出ッパ自体は決して速くなかったが、そこからの出脚が速くスッと2番手。直ぐ内のロケットが行ってくれたことも組み立て易かった要因の一つだろうが、そのロケットが最内へ寄せたのに対し、こちらは最初から馬場の真ん中へ。3角でハナに立ち、コーナーは内ラチへ寄せ、直線は再び馬場の真ん中へ。メリハリのない競馬だったが、外の馬群が圧縮される形となり、何時の間にかゴールを過ぎていた様な印象。要はデキの良さが為せる技で、気力任せに押し切った格好。次走は何とも。

ステルヴィオ

メリハリの利いた造り。実績通り、アドマイヤマーズと共に馬自体が格上といった印象。皮膚を薄く見せていた点も好印象。気性的に多少散漫なのは何時ものこと。大外枠だったが、この馬としてはゲートを決め、出脚も有って積極的に乗られて好位から。3角迄はスムーズだったが、4角手前でボンセルヴィーソとプロディガルサンの間に挟まれて手綱を引っ張る場面。少なくとも1馬身のロスが有った。元々いい脚が長く続かないタイプで、今日の流れで果たしてどうだったかは微妙な面も有るのだが、前走東京戦にしても外からしっかり走れており、馬体が3歳時より20kg以上増えている点からも成長も有って、勝っていた可能性は高い。勿体ない内容。

アドマイヤマーズ

2人曳き。+6kg。時々ポカの有る馬ながら、昨秋東京戦も見た目に何の問題もないのに走らずで良く分からない部分も多いのだが、今日もキッチリ出来ていた。多少発汗は有ったが、気配も良さそう。ゲートを真っ直ぐに出ず、この馬としてはゲートで後手に回ったが、今日はどの道、ロケットに叩かれる形で、上手く立て直して好位へ。カツジと3角で内外入れ替えられたのも良かっただろう。直線も出来る限り馬場のいい外へ。ただ、結果的にそこでパッチンを食らう形になったステルヴィオに差されて3着。案外感も有るが、一応、出遅れ、初の1400m、58kgは言い訳になる。競馬の上手さで勝負するタイプの馬で、今日の特殊な馬場も向かなかった。

アルーシャ

-6kg。良し悪しは別にして、オープンの1400mということで雄大に見せる馬が多い中、1頭だけシャープな馬体は逆に目立つ。ただ、毛ヅヤが冴えて、気配も良さそう。好発。出脚にも余裕有ったが、行きたい馬に行かせて中段から。3角手前辺りから好位グループがゴチャつき、更に4角でもゴチャゴチャしていたが、ワンテンポ待ったのが正解。スムーズに運んで直線もそれなりに脚を使っている。ただ、その直線はずっと右手前。実績が示す通り、左回りの方が良さそう。今日は鞍上が上手く乗ったという評価。

シヴァージ

遮眼革。前後肢にバンテージ。+6kg。多少立派なのも確かだろうが、元々腹袋が目立つ体型。歩様も力強い。ゲート自体もイマイチだったが、元々前へ行くタイプではなく、そのまま後方から。出脚自体は悪くないのに、そこから進んで行かず、置かれそうになるのは何時も通り。ただ、追い込み馬にとって今日の様に皆が外へ持ち出して来る展開になるとキツい。これでも良く走っている方だろう。今後も展開一つ。

サウンドキアラ

休み明けでも馬自体は出来ていたが、今日は何時になくイラついていた様にも見えた。精神面に疑問。ゲートは五分。最初は誰も居ない内ラチ沿いを走らせていたが、馬が居ない為か、馬場を気にしたか、変に行きたがっており、ならばと馬群に寄せて行く形。これでリズムを取り戻し、4角でアドマイヤマーズの直後と射程圏だったが、追って案外だった。今日はデキも怪しかったが、牡馬相手でこの馬場だとパワー負けするのかも。

第81回菊花賞(GⅠ)

コントレイル

前走中京戦からは平行線。何処にも悪いところはないが、馬体に迫力の欠片もないのは2歳時から。ゲートは五分に出て中段から。抽選運はいい方で、皐月賞1番枠→ダービー5番枠→菊花賞3番枠と、この3戦は何れも内枠を引き当てていたが、今日に関しては内目が悪くてこれがアダ。アリストテレスにピッタリマークされたことも有り、外に一度として出せるシーンがなく、馬も気を遣って力んでいた。ただ、京都の外回りは直線でバラけ易く、特に今日の様な前が止まる展開と馬場状態なら尚更で、スムーズに追い出せたことが何とかクビ差凌ぎ切った要因。徹底マークがアリストテレスだけなく、もう1頭居たら分からなくなっていたが、それでも勝つのだから底力は流石というところ。現段階で年内未定とのことだが、初めてマトモに消耗する競馬になった。父ディープインパクトも引っ掛かりながら走ったこのレースの後に負けたことを考慮すれば、休ませた方がいいのは間違いない。

アリストテレス

前後肢にバンテージ。+8kg。この時期にしては発汗が目立ったのはマイナスだが、垢抜けた馬体。あとはもうちょっと踏み込みがしっかりしてくれると文句なし。少し枠は離れていたが、最初からの決め打ちでコントレイルを徹底マーク。単にマークといっても色々やり方は有るが、基本的にはコントレイルから見て左後方から。コントレイルにプレッシャーを掛けつつ、こちらは折り合いも付いて完璧に乗られたが、あれで勝てなかったら相手を称える外ないだろう。強いていえばもうちょっと成長が欲しかったか。結果論だが、春が2着続きで、中々クラシックの権利が取れずに苦労したのが響いたか。何処かでひとつ勝っていれば違ったかも。何れにしてもまだ上昇の余地が有り、来年は主役クラス。

サトノフラッグ

シープスキンノーズバンド。馬装の割に重心が低い歩き方で、首でリズムを取って気配良好。歩様に伸びが有った点も好感。叩いて良くなっていた。やや出負け。出脚もなさそうで、後方に近い位置。只管ジックリ乗られ、2周目の3〜4角では最後方になる場面も有った程だったが、直線だけの競馬で3着浮上。前が競っていたことも有り、2着との3馬身半差は気にならないとしても、4着ディープボンドとはクビ差。展開がハマってこれだと高い評価はし辛い。現状だとGⅢでも入着級。

ディープボンド

前後肢にバンテージ。口から泡を吹いて気負っていたが、トモが張って馬体は充実。毎回述べているが、東京2500mタイプの馬。好発。出脚も有る馬で、行きたい馬に行かせて好位から。基本的にはコントレイルの一歩前からの競馬。道中の折り合いは付いており、位置取りと勝負どころでの仕掛け以外はコントレイルを気にせずに乗られた。有る程度、自分の力は出せたといえそうだが、もう少しゆったり構えて追い出せれば3着有ったか。それでもコントレイルより前に居た組では唯一の掲示板。スタミナは間違いなく持っている。

ブラックホール

前肢にバンテージ。馬は数字通り貧弱だが、皮膚を薄く見せてデキ自体にケチは付けられない。歩様も中々力強さが有って、明らかに良くなっている。ゲートは決めたが、これも後方からジックリと。コントレイルをマークする集団を眺めながらの競馬だったが、結果的にその集団の最後方だったヴェルトライゼンデが動けなかったのが痛かった。相手を気にせず、直線迄待ったサトノフラッグが3着だったが、サトノフラッグの位置ならこの馬が3着だったかも。何れにしても能力面で高い評価は出来ないが、ちょっと勿体ない印象。

第23回富士ステークス(GⅡ)

バンドギャルド

パシュファイヤー。-6kg。単にスカッと見せていたというより、筋肉が浮いて純粋にデキが良かった。ただ、下見はかなり煩かった。この頭数の割にスマイルカナや速い馬も多かったが、ゲートを決めて急かすことなく中段から。ユッタリ乗れたということではないが、バラけた位置でこの馬としては折り合いが付いていた。直線も馬場のいい外へ自信を持って持ち出し、手応え通りに突き抜けた。春は32秒台の脚でも届かない馬場だったが、外差しが利く馬場と展開でやっとハマった。ただ、今日は相手に恵まれた感も強い。次走GⅠとなると展開が向いて連に来れるかどうかのレベル。

ラウダシオン

+16kg。もう少し絞ってもいいかも知れないが、馬が張っていた。歩様に力強さが有って、春とは別馬。好発。最初は前を追い掛けそうになっていたが、スマイルカナとシーズンズギフトがやり合う形となり、徐々に前との間隔が開いて行って、3角位で何とか宥めた。直線向いても手応えに余裕が有り、少し追い出しを待てる位。最初が左手前だった関係で少しフラついたものの、エンジンが掛かってからはしっかり伸びていた。春の内容からラチを頼った方が確率は高そうだが、それでしっかり走れたのだから、下見通り馬は強くなっている。斤量をこなした点も収穫大。

ケイアイノーテック

オーストラリアンブリンカー。前後肢にバンテージ。ガッチリとした造りは見栄えがする。多少硬い面が有るのは何時ものこと。大トビで出脚もない馬だが、行く気もなく後方から。直線大外も毎度だが、眼前に勝ったバンドギャルドが居たのがいい目標になった。一瞬の脚は無論、バンドギャルドの方に分が有ったが、ジリジリ伸びて3着浮上。展開や馬場状態が向いたことは勿論だが、これが3歳春以来の馬券圏内で、単純にメンバーレベルが低いということが大きい。

ペルシアンナイト

-10kg。このメンバーだと馬の迫力は一枚上。ただ、見栄えとしては前走札幌戦の方が良かった。今日は若干でも馬が萎み気味。これも行く気はなく折り合いに専念。序盤だけ怪しかったが、前に馬を置いてこの馬としては我慢して走れていた。ただ、乗り方に注文が付く関係で、直線も馬場の悪い内目から。伸びてはいるが、馬場のいい外をノビノビ走った馬に分が有った。案外感もない訳ではないが、元々が右回りの方がいいタイプ。評価に迷う内容でも有る。

タイセイビジョン

前肢にバンテージ。もうちょっと落ち着いて欲しいところだが、スッキリ見せてデキ自体は悪くない。ゲートを決めて中段から。本来は出脚の有る馬で、行こうと思えばもう少し行けた筈だが、今日はこの馬としてはジックリと乗られた。ペルシアンナイト同様、これも枠の関係で直線は比較的内に進路を取ったが、ジリジリだった。ただ、今日のパワー勝負では些か厳しかっただけで、器用さは持っている。内枠を生かせる馬場状態ならこのメンバーでも大崩れはしない筈。

第25回秋華賞(GⅠ)

デアリングタクト

+14kg。下見は最後方を周回。休み明けだけに、減って出て来るよりは好感が持てる。毛ヅヤが冴えてデキ自体も良さそうだが、如何せんイレ込みがキツい。毎度のことながら、ゲートでやや後手に回って中段やや後方から。ゲート内も結構煩かった。ペースが落ちた向正面で少し番手を上げ、あとは自分の外から来た馬に併せて、被されない様に進出。コーナーでの手前の替え方が雑で、ちょっと外へ膨れ、直線も右手前で走っている時間が結構有ったが、最後に左手前に替えて追い縋るマジックキャッスルを突き放した。鞍上が自信を持って乗って、それに馬が満点回答で応えた印象。文句なしの3冠といえるだろう。ただ、今後の馬券ということになれば話は別で、今日もゲートが危なっかしい。下見で落ち着いているに越したことはないところ。

マジックキャッスル

シープスキンノーズバンド。+10kg。細身の馬だけに馬体が増えたのは特に歓迎。数字以上の重量感が有った。馬格がないので小脚が利くのだろうが、好発。急かす様子もなかったが、そこからの行き脚も抜群に速いという訳ではなく、中段。序盤はデアリングタクトの一歩前に居た。向で正面でデアリングタクトが動いた際に付き合わず、更に外から動いた馬も多かったが、デアリングタクトの直後でジッと我慢。この矯めが最後の脚に繋がった。小回り2000mの外枠でどうかと思ったが、兎に角器用。小柄なタイプで2分を超える馬場状態も向かない筈だが、多少なりともパワーアップもしているのだろう。

ソフトフルート

2人曳き。胸がい。このメンバーでもそれ程馬は負けていない。皮膚を薄く見せて、しっかり踏めており、何より気配が良かった。ゲート内の駐立も悪かったが、思い切りアオッてしまい、2馬身近い出遅れ。そのまま最後方から。今日の馬場で内を突くのは得策ではなく、外を回さざるを得ないのだが、道中が最後方だったことも有って、4角も大外。更にデアリングタクトが外にフクれたことで合計10馬身近く外を回されてしまったが、渋太く伸びていた。今日の展開はこれはこれで良かった感も有り、五分に出た時の結果が果たしてどうだったかは微妙だが、前走中京戦はマトモにゲートを出ただけに、悔やまれるところ。それでも、前述の前走1000万が圧勝だった様に、重賞でも足りる力は持っている。

パラスアテナ

前後肢にバンテージ。-8kg。下見は物見をしながらの周回。一歩一歩が力強く、見た目に機動力が有りそう。これもゲートをアオり気味に出て後方から。枠の並びからも最初からの決め打ちでデアリングタクトを意識して乗られたのだろうが、今日は行き振りがイマイチで、3角手前位から置かれそうになっていた。3〜4角中間でやっとエンジンが掛かり、ソフトフルートには抵抗し、何とか3着確保かに見えたが、首の上げ下げで惜しい4着。能力で負けたという印象ではないが、本来の鞍上が乗れなかったのは結果的に痛かったか。

ミスニューヨーク

キビキビ歩けており、気配は文句なし。多少胴回りに薄さを感じなくもないが、逆にいえばトモにボリューム感が有った。外枠からジワッと行かせて好位直後。丁度馬群がバラけて、上手くポケットに潜り込めた。勿論、今日の馬場で潜ったことが必ずしもプラスとはいい難い部分も有るのだが、マジックキャッスル同様、結果的に脚が矯められたことは確か。それで居て、4着パラスアテナと3馬身半差。1000万は勝っているが、重賞どころか準オープンでも厳しいかも。

第68回アイルランドトロフィー府中牝馬ステークス(GⅡ)

サラキア

小ぢんまりと見せるのは何時ものこと。3歳時よりはマシになっていることも確かだが、まだ歩様にも非力さは残る。ゲートは決めたが、あまり進んで行かず、向正面で徐々に番手が下がり、結局は3角で後方。ただ、そこから外を回って急にハミを取る様になり、直線も1頭だけ脚が違っていた。結果論として、「道悪は良くないものの、引っ掛かる馬でも有り、この馬場で折り合いが付いた」という説明にはなるのだが、こんなケースは最近ないパターン。先週に弟のサリオスがGⅡを勝ち、今週は姉のこの馬。最大の勝因は血統の勢いという気もしないでもない。

シャドウディーヴァ

前肢にバンテージ。+8kg。もう少し重心が低いとベストだが、首でリズムを取って気配上々。馬体も最近の中ではいい方。1馬身出遅れて、そのまま後方。3角手前でサラキアと並走。これも道中の行き振りは良くなかったが、コーナーになると比較上マシで、直線はダノンファンタジーとラヴズオンリーユーの間から長くいい脚を使っていた。東京巧者は間違いないところだが、これも道悪がいいとは思えない。サラキアにもいえることだが、コーナーの外に良馬場前提の馬でも走れる馬場が有ったという外ない。

サムシングジャスト

2人曳き。メンバー中、唯一の500kg台で、馬体からパワフルさは感じるが、下見の動きはモッサリ。ゲートは半馬身程分が悪かったが、最初から行く気もなく最後方から。道中の行き振りは比較上、悪くなかった方。向正面とコーナーは外を回っていたが、直線は内外の馬場差が少ないということで内へ。勢いは外の方が良かったが、この馬も脚取りは力強く、3着確保。下見の印象通り、道悪は得意。スピード勝負となると分が悪いとしても、京都が改装に入る為、来年の関西は阪神、中京と力を要する馬場状態の2場が開催の主体となるだけに、この馬の出番が増えそうな気も。

トロワゼトワル

今季は休み明けの新潟戦から、前走中山戦も含めて高値安定。何より気配が良くて、歩様も落ちていない。出脚はダノンファンタジーの方が速い位だったが、押してハナへ。そのダノンファンタジーとは最大8馬身以上離した逃げで、思い通りの単騎で行けたのだが、4角でダノンファンタジーが待ち切れずに来たこと、雨で内が微妙に悪い馬場状態、最後に1800mの距離と悪い要素が三つ重なって4着に。恐らく悪材料が一つなくなる毎に着が一つずつ上がった筈。使い込める馬ではないだろうが、今後もハマれば一発期待出来る。

ラヴズオンリーユー

+12kg。休み明けなら馬体はこれでもいいが、もうちょっと歩様にバラツキが有り、ブレなく歩いて欲しい印象。出たなりで中段から。道中の行き振りはそこ迄は悪い様に見えなかったが、3〜4角中間でサラキアに並ばれた際に、一瞬だけ脚を滑らせた様な格好になり、そこからは雪崩れ込んだだけだった。走る位置の問題も大きいだろうが、休み明けで気持ちが前に来ていなかったことも大きいだろう。距離も1800m以下は短過ぎる感も有り、叩いて改めての狙い。

第71回毎日王冠(GⅡ)

サリオス

+10kg。数字分だけ単純に馬が良くなった。競走馬としてはもう少し絞ってもいいだろうが、歩様に力強さが有って、休み明けとしては満点。好発、出脚も速い馬だが、急かすことなく4番手から。前がやり合う形となり、1000m通過58.0秒は馬場状態を考慮すれば結構速かったが、短手綱で折り合い重視で乗られた。直線向いてからも追い出しを待てるだけ待ってから追い出す形。他馬がハイペースと微妙に緩い馬場に苦しむ中、1頭だけ手応えが違っており、追い出していとも簡単にに突き抜けた。パワー、スピードと競走馬として必要な要素の全部が違った印象。次走は国内ならマイル戦とのことだが、京都よりは阪神の方がいいタイプだろう。その点でも有望。

ダイワキャグニー

遮眼革。シープスキンノーズバンド。前後肢にバンテージ。前走重賞勝ちで去勢されたが、見た目に大きな変化はない。ただ、去勢した分、歩様はスムーズ。気配もイレ込みと迄はいえず、活気が有るといえる範囲。逃げるトーラスジェミニをコントラチェックが突く展開となったが、そこから離れた3番手。前述した様に単純なペース自体も速かったが、真後ろにサリオスが居て、意識はずっと後ろに有った。追い出すタイミングもサリオスを確認しつつ、そのサリオスが持ったままで、結果的にサリオスよりワンテンポ早く坂下辺りで追い出す形。坂を上った辺りで左手前になってしまい、伸びを欠いたが、何とか2着は死守。今日はサリオスに助けて貰った2着。去勢が失敗だったかどうかは何ともいえないが、パフォーマンスだけなら前走の方が良かった。

サンレイポケット

前後肢にバンテージ。胴長で馬が多少薄い印象も有るのだが、歩様は伸びやか。首を伸ばしてノンビリと歩けていた点も好印象。出脚が多少甘い気もしたが、押して中段。恐らくは戦前からの決め打ちでサリオスをマークする形。4角でサリオスの1馬身後方。直線向いて持ったままのサリオスに対し、懸命に追っても外へヨレて差が開いて行ったが、それでも最後迄良く頑張っていた。惜しい3着。前走新潟戦からクビがハナ差になったが、前走で触れた通り、鞍上が出世する為にも2着が欲しかった。真っ直ぐ走れていれば2着が有っただけに鞍上の技術不足といわれても仕方がないだろう。今日の3着は前走以上に痛恨。

カデナ

前のサリオスとは迫力が違い過ぎるが、それでもこの馬なりにしっかり造り込んで有った。歩様にも硬さは感じず。出ッパも微妙に甘かったが、例に依って行く気もなくそのまま後方から。3角過ぎからジワッと差を詰め、サリオスをマークするサンレイポケットの直後。徒に外を回さず、入着狙いで丁寧に乗られたのだが、一瞬は3着も有りそうな脚勢ながら、最後に甘くなった。雨の影響で少し力を要す馬場になっていたことも影響しただろうが、基本的にはいい脚が長く続かないタイプ。

ザダル

2人曳き。-2kg。大分涼しくなって来たが、その割に発汗が目立った。馬体も少し細く見せており、これ以上は減って欲しくないところ。下見はイレ込んでいたが、ゲートは五分。ならばと、これもサンレイポケット同様、有る程度の決め打ちでサリオスをマークする形。道中の折り合いも問題なく、展開としては上手く行った方だろうが、いざ追ってからがフラフラだった。見た目通り、上位とはパワー差が有りそう。

第55回農林水産省賞典京都大賞典(GⅡ)

グローリーヴェイズ

前肢にバンテージ。多少歩様のスムーズさを欠いて怪しい部分も有ったが、馬体は充実。何より馬に活気が有った。特に急かす様子はなかったが、この馬の出脚でジワッと好位。道中は兎に角余計なことをせず大事に乗られた印象。京都外回りだと坂の下りで動きたくなるところだが、下り切ってキセキを待ってからの追い出し。スパッと切れたというよりは、キセキが伸びれば、その分だけ伸びた印象。前走阪神戦はサッパリだったが、流れに乗れさえすれば勝負強い。ただ、恐らくは京都を走るのは生涯最後。次走は東京か香港とのことだが、平坦の方がいいのは間違いなく、昨年も制した香港の方が確率は高い。

キセキ

前後肢にバンテージ。最近は見た目の変化がなくなって来た。雄大な馬体で、序に気配も一緒。下見はゆったり構えられている。ゲートを出ないのは最近のパターン通り。ただ、鞍上が替わった影響なのか、最近の中では結構行きたがっていた様に見えた。最後方で馬を前に置いて何とか宥めようとしていたが、3角手前から進出。何時ものパターンといえばそうだが、少々ロスが有っても最後迄伸び切る馬が何時も程の踏ん張りではなかった。マトモに走ればグローリーヴェイズのレベルなら何とかなった筈で、道中で行きたがっていた分、パフォーマンスが落ちている。次走は東京2000mとのことだが、今日の様に最後方からの競馬となることは間違いなく、ひと雨欲しいところ。

キングオブコージ

基本的には歩様の硬い馬だが、今日はそこ迄気にならず。胴長の馬とはいえ、少し馬体の張りも緩く映った。自在性の有る馬で、行こうと思えば行ける筈だが、大外枠でも有り、無理せず後方からジックリと乗られた。キセキの早目進出には付き合わず、直線迄待ってからの追い出し。それなりに伸びているが、前には届かず。大外枠が多少なりとも応えた部分は有るだろうが、ちょっと能力差は有りそう。内枠ならセコい競馬は出来るタイプだが、GⅠで真っ向勝負となるともうワンパンチ欲しい。

シルヴァンシャー

-10kg。数字分だけスッキリした印象。これ以上は減るとマズいだろうが、トモのボリューム感は有って歩様も力強い。ゲートをアオり気味に出て、ダッシュが鈍ったが、直ぐに立て直して中段から。基本的には枠なりに内目を回って来たが、ところどころで機動力がなく、追ってからもジリジリだった。ただ、3着の昨年よりは今年の方が遥かにメンバーが揃っており、1年を経ての成長は有りそう。一応は重賞にメドを立てたといえる。

ステイフーリッシュ

小ぢんまりとした造りは毎度で、馬体に大きな変化はないが、中1週の影響か、何時も以上に歩様が硬く映った。内枠でゲートが決まったことも有り、好位から。坂の下りで惰性を付けて行くこの馬の京都出走時の何時ものパターン。ただ、もうちょっとここで進んで欲しかったところ。先頭に立とうとするところで、外のグローリーヴェイズに捕まっていた。前走中山戦の轍を踏まない様に早目に動かしてこの結果。メンバーが些かキツかったことも確かだが、下見通り、中1週の影響は少なからず有った様。

第6回サウジアラビアロイヤルカップ(GⅢ)

ステラヴェローチェ

+14kg。単純に成長分。胴長ということも有るが、まだスカッと見せる。可動域が広く、手先のスナップも利いていた。このメンバーだと馬が一枚上。前走阪神戦は逃げて勝った馬だが、半馬身程出遅れたことも有り、後方からジックリと。外を走らせていても、明らかに下を気にして走っていていたが、直線に持ち出してから一番外へ持ち出すと1頭だけ脚が違っていた。特殊な馬場だが、1分40秒近い時計ともなれば走り辛さは他馬も一緒で、案外この3馬身差がそのまま能力差という気もしないでもない。ただ、しかも例年より低調なメンバー構成。今日の反動も案ずるところで、次走は微妙。

インフィナイト

488kgとソコソコ数字が有る割に全体に力が付き切っていない印象。歩様も伸びやかでは有るが、まだ力強さに欠く。ゲート自体は速くなかったが、そこからの行き振りは良く、中段の内目で楽に追走出来た。他馬が徐々に苦しくなって来る中、徐々に前へ取り付き、4角で先団の直後。直線に向いてからも狭いところをちゃんと割って来れたが、ステラヴェローチェの脚が違っていた。道悪適性は高いが、能力差で負けた格好。尤も、道悪適性といっても前向きな気性面が適性の大半だろう。重賞で五分に闘うにはもっとパワーアップが必要。

セイウンダイモス

-14kg。トモにボリューム感が有り、絞れたと見て良さそう。首でリズムを取ってヤル気充分。もうちょっと歩様がパンとすれば尚いいが。半馬身程出遅れて後方から。道中は1200mの後ということで、少し行きたがる場面も有ったが、逆にこの馬場で脚を滑らせたか、一旦は最後方に後退。それでもへこたれることなく、3〜4角中間からジワッと進出、追い出してからもバランスを崩す場面が有ったのだが、それでも健気に全身を使って、渋太く脚を伸ばしていた。これも根性一本で走るタイプ。

ジャンカズマ

シープスキンノーズバンド。寸が詰まって、硬さはないものの、歩幅が小さいタイプ。テンションもこれ以上は上がって欲しくないところ。出脚には余裕有ったが、内からピンクカメハメハが主張して2番手から。下見同様、レースも比較的ピッチの利いた走りで、比較的馬場を苦にせず走れていた。直線に向いてからの反応も良く、坂下で先頭。ただ、そこからが続かなかった。最後は上位とのパワー差が出た格好。現状だと500万も怪しい。

キングストンボーイ

皮膚を薄く見せて、馬自体はカッコ良く見せるタイプだが、まだ全体に筋肉が付き切っていない。歩様も甘い。出遅れ1馬身不利。それでも3角迄には馬群に取り付いて、行き振り自体はそこ迄悪くなかったが、直線に向いて追い出してからが案外。出遅れてちゃんと流れに乗れていなかった影響も大きいだろうが、馬自身も鍛錬が必要。