戦前の争点は、「『この馬の東京芝9Fの適性』と『昨年より強化されたメンバー』」だったが、この馬の適性が勝ったということなのだろう。ただ、この馬とて前走辺りから地力強化の跡も見える。前走、接戦まで持ち込んだタヤスメドウはGⅡクラスで充分通用する馬。それに0.2秒差。完勝も当然だったか。
北村宏騎手は外に振られたと大外枠を嘆いたそうだが、遮眼革を着用し、しかもレコード駆けするようなスピード馬に道悪。内枠であれだけうまくいったかどうか。
ヌレイエフ産駒らしく暖かくなって本領発揮と行きたかったところだが、うまく外に出してスムーズに競馬が出来ても、いかんせんこの馬には道悪と坂が辛すぎる。
もともとこういう馬とはいえ、イマイチ伸び切れないのは、パンパンの状態に雨が降った道悪とボコボコの状態に雨が降った道悪では前者の方がこの馬向きということになるのだろう。
流石にここでも馬が一枚上。例の頭の高い走法も、攻め馬の段階から大分マシにはなってきた。今日は行きたがったので仕方がないとしても、ただ今日、道悪を使ったことで、またフォームが元のトゥザヴィクトリーに戻らなければいいが...。それがなければ、今後牡馬を蹴散らすことは充分に可能。
この馬が道悪で一番泣いた。
中京開催は冬季でもダート競走が少なく、どうしても開催後半は芝馬場が悪くなりがちなのだが、今開催は最終週の割にインの馬場状態も良好。だとすれば前有利の筈。ところが直一気に賭ける馬が多数で、中段はバラバラの展開。一番捌くのに手擦る筈の位置にいながら、何の不利も無く競馬が出来た。運が良かった。
これもほぼ同じ位置。勝ち馬と最後、併せ馬の形も追い負けた。地力の違いといえばそれまでだが、そうとしか表現できない。
こちらは逆に後方から。いつもの最終週ならば前崩れだが、今日はそういう馬場ではない。逆の意味で馬場に泣いた。
馬体減。道中は連対馬2頭の直後。ただ、追い出してインにササってしまったのが誤算。右回りの方がいい。
こういう展開でも、前は速い。前3F32.8なのだからむしろ良く頑張っている部類。
よく敗因が判らないが、時計勝負は合わないのか?
いかにも2頭とも馬力タイプには見える。逃げ馬は居たが、誰も鈴を付けに行かず京王杯SC同様のスローペース。となれば、京王杯同様に最後に仕掛けた者が勝つのは判り切ったこと。またインの馬場状態が悪く、かなり力の要る馬場。上位3頭は何れも馬格があるタイプでもある。今年は日本調教馬が手薄だったのも確かだが、海外の関係者が時計勝負一辺倒ではなくなった日本の馬場状態まで熟知しているというのは、日本の競馬シーンも世界の競馬地図に載ったということで隔世の感がある。
包まれるのが嫌ならば、馬の居ないところにいくしかない。しかし、後ろからでは脚が続かない。となれば、選択肢はただ一つ。しかも、スティンガーが早めに来た。だとすればもう行く一手。結果的は早仕掛けも、気性を考えると止むを得ないところ。
早仕掛けが仇になるのは、武豊騎手に限らず田中勝春騎手だってファンだって百も承知の話。しかし、人気馬の悲しい性。そこは自力で動かなくてはならない。また、引っ掛かったこともあるだろうし、牝馬にこの馬場が辛いというのもあるだろう。今日は条件が悪過ぎた。
こういう展開に強いのは、シルクロードステークスで証明済み。ただ、6F戦だと勝負処で置かれる癖があり、今は哩の方が向くのかも。
一言で言えば馬場に泣いた。4角で外に出そうとしたが、出せず終い。インコースの馬場が良ければ、定石通りインを突くのが筋なのだが。
これも馬場。
前走あたりから良化してはいた。道中は縦長の展開で中段ながらインを捌いて、4角では先行集団の直後。G前何とか捕らえたという内容だが、ノーザンウェーのマクリが先行集団を一掃。それの漁夫の利の感も。「すべてうまくいった(横山典弘騎手・週刊競馬ブック)」
流石にこの条件だと強い。例によって3角の飛び込みから一気に進出して、マクリ切った。軽ハンデもあって一応は成功の形だが、それを見越していた馬が一頭いたということ。指示通りなのだろうが、思い切った騎乗が出来た北村宏司騎手は高く評価したいところ。
オープンに入ってから何時も穴人気になりつつ、あと一歩の競馬が続いているが、今日もインを無難に捌きつつあと一歩の内容。瞬発力でも一気の出脚でも構わないが、何かしらの武器が欲しいところ。
結局東京だと思い切った騎乗が出来ない。ただそれだけのこと。距離云々は全てそれを実験してからの話。
これもトシザミカ同様に、インからそこそこに来てはいるが武器がない。余程の地力強化がない限り今後も辛い。クラス慣れした時、縺れてといったレベル。
中段から雪崩込んだだけ。勝負どころで反応の悪いのは何時もの話で、それでもそこから来るのがこの馬の筈。どうもよく敗因がわからないが、距離なのか?
東上は坂が駄目だと公言するキャンペーンに行くようなもの。
この日のNHKサンデースポーツで二宮清純氏がダービーを評し、マークする者とされる者では、圧倒的にマークする者が有利であると述べていたが、正にその一言に尽きると思う。私個人としては武豊騎手ダービー3連覇と河内騎手ダービー制覇+3世代クラシック制覇の物語性対決でアグネスのパッケージが勝っていたという見方もある。
勝ち馬がああいう回顧なので、こちらは競馬としての方法論を述べておく。武騎手はアグネスの末脚の凄まじさを判り過ぎていた。従って、エアシャカールは相当に早めの仕掛け。それが直線のヨレに繋がったし、最後の追い負けにも繋がった。要は騎乗馬を信じてやれなかった分の負け。
相変わらずの好馬体。すみれステークスまで、この馬の出走したレースは全てスロー。皐月賞で初めてハイペースに巻き込まれたのだから、惨敗も仕方がなかった。今日もスローとは言えないまでも平均ペース。すみれステークスで見せた早めの競馬。皐月賞でGⅠの激流を体験したこと。この2つが東京で生きた。
420kgの馬が道中揉まれ通し。インもあまり良くない馬場の筈。それでこの頑張りは光る。
後方のインからの競馬。ずっとインにいて、最短コースを伸びてはきたがここまで。インの馬場の悪いのを差し引いても力負け。
これも単純に力負けの形だが、好走時が馬場が軽い時に集中。意外に非力なのでは?
矯めても全く伸びずというのだから、距離としかいいようがない。
ゲートをわざと後らせた。直線大外へ持ち出した時、好運にも隣にノボトゥルーがいた。そこから2頭仲良く併せ馬も、最後は差し切る。軽ハンデが利いているのだろう。
内枠で中途半端に競馬をしたくなかったのか、これも思い切って後方。展開もハマったし、実績が左回りに集中していて、明らかなサウスポーなのだが、戦前指摘したようにハンデを多少見込まれた分、追い負けた。
スタート直後の芝がダメなのか、ついて行き損ねた。それは切れるタイプではないだけにかなり痛かったところ。併せ馬といえばこの馬もそうなのだが、前述の通り瞬発力がマイルでは足らないだけに、ここまで。マイルそのものより、東京マイルのスタート直後の芝の問題の方が大きい。
道中はインで先行集団を見ながら、直線だけ外に出すという理想的な競馬が出来ている。それで追い負けとは、瞬発力不足以外表現のしようがない。
一応、前々で流れに乗って直線抜け出しと教科書通りには競馬が出来た。ただ、今日はハンデ戦。決め手勝負になってしまったので、辛いところ。
多少太い。名古屋城ステークスのグレイトエンペラーの項で、他馬を気にするので少頭数が向くと述べたが、この馬にも全く同じことが言える。昨年同様、この後北海道だと思うが、自信を持って次走推奨馬に推す。
スローでも対応出来る馬とそうでない馬の差がモロに出た。勿論、折り合いということもあるが、馬群の中で競馬が出来ることと、自在に脚が使えること。終わってみれば、この2点を一番高い次元で融合出来ていたのが、この馬ということになるだろう。
東京競馬を語る際に、末脚の持続性の議論が必ず出てくる。それは通常有意義な議論である筈なのだが、今日はそれが空論になる程、スローになってしまった。しかも、各馬出来る限り仕掛けを後らせてくるものだから、一層この馬に有利に働いた。ただ、勝ち馬とは乗り役の自信度の差。
下見でイレ込み気味。前半2番手で、口は割っていたが、何とか宥めた。スローにも関わらず、各馬追い出すのが遅い展開ということで、絶対的に前が有利な展開。フラワーカップの再現。
この馬もオリーブクラウンと同じことが言える訳だが、オリーブに追い負けた辺り、この馬の能力の無さを証明している。
今年は低レベルと囁かれた忘れな草賞も、この不利な展開の中、ここまで押し上げてくる辺り、データは生きていると言える。しかもジョッキーのコメント通り、細手で非力なタイプ。下が渋って辛い馬場だから、一層頑張りは光る。
馬場もあるが、器用でないだけに馬群を割る競馬は辛いところ。本来は大外から追い込みたかった筈。
イレ込み。スローにも泣いたし、これも非力なだけに馬場が応えている。
距離に不安があるので、矯めて乗られた。ただ、下が締まった馬場で上がりが速くなりそうだと判断して、イン狙い。行く処全て前が開いていて、終わってみれば3馬身差の圧勝劇。
端的に云えば、強気に乗りすぎた。外を回ったこともそうだし、仕掛けも早い。ただ、勝ち馬は恵まれすぎで、それでも2着にこれる実力は高く評価しておきたい。
道中はフサイチゴールドをマーク。ただ、2着馬は4角大外、こちらはインを回ってとコーナーワークの利がありながらの追い負け。力負けと言わざるを得ないだろう。
これもセイカカロブと同じ位置。4角インから伸びてこようかという場面で、馬が逡巡してしまった。最後立て直して伸びているが、その分の負け。この馬、小回りに実績を残しているが、実際はコースの大きさの問題ではなくて、こういう気性だから多頭数の競馬には向かず、実績が少頭数の競馬に集中しているだけのこと。
中京ダート1700mの外枠で出負けすると、1角で大外に回されてその時点でアウトというケースが殆どなのだが、ハイペースのお蔭で縦長の展開になって、どうにか競馬はさせてもらえた。しかし、前が止まらない馬場というより、外を回ると届かない馬場。今日は仕方がない。
これも外を回ってアウト。