Sakura Archives

競馬回顧 2002年1回阪神・1回中山

阪神大賞典(GⅡ)

ナリタトップロード

前走同様に煩い事は煩いが、前走とは毛ヅヤが一変した印象。昔であればここまでのスローになってしまうと、引っ掛かっていた筈なのだが、途中ちょっとそういう素振りを見せただけで、スッと折り合える様になった。年齢が年齢だけに、この馬の能力が上がったとは思えないのだが、良い具合に馬が枯れてきたというべきか、能力を無駄無く競馬に使える様になってきた印象。この距離も、特に直線の壮絶な2着争いを尻目にしながらの独走振りにそういう印象を強く受けたのだが、合っているというよりは、他馬が苦にする分有利に働いているだけといったイメージ。やはり当面の相手は、同じく距離を全く苦にしないマンハッタンカフェただ一頭なのだろう。

ジャングルポケット

馬体が緩んでいる印象、加えて、下見に関しては何時もよりは大人しい。菊花賞よりはマシだったにせよ、ハミを噛んでしまって、力んで走っているのは事実。とにかく勝ち馬は無駄が全く無いだけに、これだけロスが有ると最後は抵抗する余力すら残っていなかったのは仕方が無い。最後は寸前でエリモブライアンを捕らえる形になったが、年度代表馬の意地というよりは、連勝式の売れ方を意識した小牧太騎手の執念。馬はともかく、戦前から周囲がアクシデント続きだっただけに、今日のところは小牧太騎手が全てチャラにしてくれただけでも良しとすべきかと。

エリモブライアン

前走太かった印象で、そこから−12kg。絞れたとみて良いだろう。前走は後方で捌き損ねる形になってしまっただけに、今日は前々での競馬。この馬は勿論折り合いの心配は無く、問題無くスムーズな競馬が出来ていた。最後は決め手の差としか言い様が無いのだが、一応GⅠホース以外は全て押さえ込んだ形で、そこはやはりステイヤーズS勝ちの実績がモノをいった印象。

ミツアキサイレンス

普段よりは気合を表に出していた。これもナリタトップロード同様に道中無駄な力を使わなくなった分、最近距離を苦にしなくなったし、成績が安定してきた。これも最後は決め手の差だが、川原騎手、エリモブライアンには先着したかっただろうに...。

ボーンキング

イレ込みキツいが、それは何時も通り。本来はもうちょっと切れる脚が使える筈なのだが、1周目の3〜4角(下り坂)で、思い切り持って行かれたのが終いに響いてしまった印象。

フジテレビ賞 スプリングステークス(GⅡ)

タニノギムレット

歩様は前走から更に良くなったのだが、やはりまだ重い印象。体型なのか、それともそういう体質なのか...。行きたい馬が数頭いた所為も有ったが、むしろ今開催のトレンドと表現した方が正しいだろう、またしても中山1800mのハイペース。このハイペースで、道中は押しながらの追走。3角まではとにかく反応悪かったのだが、4角でエンジン掛かってからが凄く、その脚がゴールまで衰える事無く続いてしまっての勝利。4角大外を回ってきただけに、良い脚を相当長く使っていて、シンザン記念がウソの様に成長していたし、アーリントンCと比べても直線モタれる癖がマシになった印象で、今が本当に伸び盛りなのだろう。ただ、毎回こういう派手な競馬をする度に述べなくてはならない事が一つ。それは「競馬は楽に勝つに越した事は無い」という事。無理は必ず何処かに響いてくるのだが...。

テレグノシス

まだ全体的に非力なイメージだが、毛ヅヤは冴えていた。こちらはタニノギムレットとは違って、意図的に押さえた乗り方。向正面でペースが落ちた影響も有るのだろうが、3角過ぎ辺りから外目に出して、ペースが上がってしまう前に進出。今開催、比較的馬場状態良好で開催出来たとはいえ、そこは最終週、やはり内目は悪いだけに、外へ出して理想的な競馬が出来たまでは良かったが、坂上で凄いフットワークで飛んできた勝ち馬に来られは仕方が無い。一気に交わされなかっただけ、今日はむしろ良く抵抗しているとさえ言える。「直線に向いて伸びた時は勝ったと思いましたが、特徴のある顔が視界に入ってきて...。負けはしましたが、距離は大丈夫でしたし、次が楽しみになりましたね。(勝浦騎手・週刊競馬ブック)」

アグネスソニック

毎度同じ事を述べているが、好馬体もイレ込みキツい。中山1800mで内枠、前で流れに乗るしかないのだが、前3頭がブッ放してしまっただけに、壁が出来なかったのがこの馬には誤算。インから一瞬抜け出す脚までは残っていたが、道中気負い気味に走っている分、ここからの脚が続かない。インの馬場状態が多少悪い事も応えている点も考慮すれば、今日は運が無かったとしか言い様が無いだろう。

ホーマンウイナー

首を使って曳き手を自ら引っ張っていく何時もの気配。アーリントンCもそうだったが、大分常識に掛かって折り合える様になってきた。4角も大事に外を回ってきて、前は捕まえ切れそうな気配だったが、捕まえ切れない辺りはこの馬の力量自体がこの程度なのだろう。

セイコーアカデミー

順調に来れた今回の方が、何故か歩様が悪い。共同通信杯とは違って今日はスムーズに折り合えた。ちょっと4角で置かれ加減になっていたが、伸び切れなかったのはやはり力量差といえそう。

ローエングリン

スカッと見せているが、テンションの高さは相変わらず。やはり東京スポーツ杯2歳S同様に気負い気味に行ってしまう傾向が有るが、絡まれた割にはボロ負けだった東京スポーツ杯2歳Sよりは終いもかなり我慢出来ていて、大分この馬も成長してきている印象。ただ、本当はもっと飛ばして逃げた方が良い筈なのだが...。

メガスターダム

ちょっと重い印象も有るのだが、相変わらず毛ヅヤは目立つ。これも引っ掛かっていたクチで、むしろその割には良く踏ん張っていると言えそう。

時事通信杯 フラワーカップ(GⅢ)

スマイルトゥモロー

数字上は減らなかったが、多少細身に見せるのは事実。今開催、芝1800mで施行された重賞はハイペース続きだったが、今日は何時も通りのスロー。2角辺りで、外からコンプリートアゲンに来られ、これで馬がその気になってしまって、一気にハナへ行く形になってしまったが、岡部騎手もその辺心得たもので、無理には抑えなかったのが奏功。そのまま押し切ってしまった。

マイネヴィータ

遮眼革着用も、叩いて更に良化。押し出されてハナへ立つ形だが、遮眼革の効果か、折り合いスムーズ。3角手前でスマイルトゥモローが来た時に、ちょっと脚が上がり気味になっていたが、立て直してからは渋太かった。ちょうど札幌2歳Sと似た様なレース振りだったが、こんな感じの競馬が合っているのだろう。

レディーシップ

スローを嫌って早目に動いたまでは良かったが、そこで止まってしまう形。早目に動けばこうなってしまうのは当然とはいえ、動かなければ3着も無かった訳で、中々痛し痒しといったところ。まあ今日のところは、追い切りインにササるシーンが有った様で、真っ直ぐ走っていただけでも収穫とすべきかも。

シーディザーブス

やはりトモが甘い印象は否めない。このスローでも折り合っていたのは収穫だろうが、この馬の場合早目に動くと良くないの解り切っているだけに、前で決まる事が見え見えでも動けない。また、トモが甘いだけに坂に弱く、矯めて行っても伸び切れない。

マイネミモーゼ

後方で矯める形も、スローで前で決まってしまっただけに。「最初はゆったりとしたペースだったのに、途中から急にペースが上がってしまった。それで流れに乗れなかったんだ。でも、いい素質を持っているという感触は掴んだよ。(後藤騎手・週刊競馬ブック)」

ブリガドーン

歩様スムーズだし、デキ悪くない筈だだったが、1角でエメラルドアイルと接触して後方。直線も馬群に突っ込んだら前が壁で追えず終い。

報知杯 フィリーズレビュー(GⅡ)

サクセスビューティ

流石にサンデーサイレンス産駒、見栄えするが、もうちょっと馬体に厚みが出てくると理想的。出負けしたトゥインチアズはともかく、ランディスティニーが控えてくれて楽にハナへ。こうなると、仮柵明けで前有利の馬場だっただけに、アッサリ逃げ切られてしまう。今日はとにかく展開向いたとしか言い様が無いのだが、問題は怖がりな気性、人気になって絡まれた時に果たしてどうか?

キョウワノコイビト

トニービン産駒だけにそれ程見栄えしないのだが、踏み込み浅過ぎる嫌い。好位にいたが、これも仮柵明けのイン。渋太く伸びて来たというよりは、キタサンヒボタンの自滅で2番手浮上。これも展開向いたとしか言い様が無いだけに、正直なところ評価を上げ辛い。

キタサンヒボタン

毛ヅヤは良かったが、攻め過程に不満が有った通りに緩い上に細い。前走の阪神ジュベナイルフィリーズもそうだったが、須貝騎手、スタートから押し過ぎて、馬がその気になってしまっている。あれを引っ掛かったと表現しているのは、ちょっと馬が可哀相で、それさえ無ければスムーズに折り合える筈。ただ、今日は直線外へヨレるシーン、やはりこの馬も距離はこれ以上伸びると辛そうだが...。

ブルーリッジリバー

歩様にスムーズさも出てきたし、今日は叩き一変と言って良い。トモの甘さも他馬を思えば数段マシ。前走を意識した様で、ゲートをソロっと出して後方待機策。この策ならば折り合える。外からマクり気味に上がって来たが、前が止まらない馬場状態だけにそこまで。7F戦まではタメが利けば坂もこなせる事が解っただけでも収穫だろうが、やはり本質はフラットなコース、それだけにマイルで坂の有るコースは半信半疑。

ブライアンズイブ

シープスキンノーズバンド。チャカついていたのは毎度だと思うが、数字上はともかく馬体細化という程でも無い。道中中段のインで、直線はブルーリッジリバーのインから併せる形。かなりフラついていたが、併せ馬の形になっているだけに、一踏ん張りが利いた。

カネトシディザイア

元々胴長でスカッと見せる馬だが、馬体増は良い傾向。毛ヅヤも目立つ。道中良い感じで進めていたし、坂路動いただけに何とかなるかと思ったが、坂で見事なまでにバッタリ。フジキセキ産駒の典型的症状なのだが、ここまで酷いとは...。

ウィルビーゼア

前走も同じ事を述べたが、如何せん見た目に非力過ぎる。良く解らないのだが、坂がダメな事だけは確か。

トゥインチアズ

下見時だけ遮眼革をしていたが、物見激しかったし、装鞍所辺りで一暴れした様な気配。出負けして揉まれ込んだのも応えたが、控えた経験が無い分、周囲に気を遣ってしまっていた。

夕刊フジ賞 クリスタルカップ(GⅢ)

サーガノヴェル

白いシープスキンノーズバンド。例の皮膚病の影響はそれ程では無さそうだったが、相変わらず気負う。ゲートが凄まじく速かったのだが、行きたい馬は全部行かせて、これらを眺めながらの絶好位。4角手前で気合をつけてからは、あとは持ったままで進出。直線も抜け出す時の脚が凄まじく速く、完勝。圧倒的スピードもそうだが、とにかく好きなポジションが取れるゲートの速さと、この時期に手応え通りに伸びてくれる安定感がこの馬の素晴らしさ。前走時には遠慮がちに「スプリント、2歳牝馬のカテゴリーでは史上最強クラス」と述べたが、最近低調だったスプリント路線、久々にケイエスミラクルやサクラバクシンオークラスのスプリンターが現れた印象。少なくともゲイリーフラッシュに持っていかれる様な今の古馬陣では相手にならないだろう。

イーグルスウォード

寸詰まりで、短距離馬の体型。キーンランドスワン辺りと一緒に中段にいたが、外を回って前崩れの展開で浮上してきた形。この馬、攻め駆けする事で有名なのだが、漸くスプリントで生きた。攻め駆けするだけにダートでもやれると思うのだが、どうも砂を被ると嫌がる気性の様だけに、現状は芝のスプリントが合っていると言えそう。

カフェボストニアン

絞れてきたのは良い傾向なのだが、まだ緩い。ゲートアオり気味だったが、スッと中段。もっと揉まれ込むかと思われたが、意外な程スムーズに競馬出来た。今日に関しては直線の不利が応えた形なのだが、ただ今日は不利を除けば最高の競馬。戦前に一部で言われていたよりはスプリントの適性も有る様だが、問題は大型馬でフットワークが大きいだけにに多少の不利が致命的不利に繋がってしまう事。無論、それはどの距離でもいえる事なのだが、スプリントの場合には更に増長される傾向。何れにせよ、不利が無くてもサーガノヴェルに勝てるとは到底思えず、やはりこの馬としてはノビノビ走れるマイル辺りが無難だと思うのだが。

シャドウスケイプ

ダートで勝って来た馬だが、芝でもやれそうな体型。出負けしたのも有るが、道中ついて行けず流れに乗れなかった。内枠だっただけに、カフェボストニアン同様に縦長の展開が向いて、インをロス無く捌いて上がりが掛かった分の入着。通常、全体の上がりが35.2秒では「上がりが掛かった」とは言えないが、前後半で3秒弱違う様な展開だと、ワンペースで走ってくるダート馬が得てして浮上してくる傾向。逆に言えば、次走芝でも単純には飛びつけない。

スターエルドラード

数字的にはこの程度が理想の筈。外枠は有り難かったと思うが、要するに追っ掛けバテの形。中山マイルで来て、逆に1200mで話にならなかった事を思うと、小回りで息の入り易い競馬の方が合う印象。ヒシアケボノの様な馬だとイメージしていたが、どうもそうでは無い様で、アグネスワールドの方がイメージとしては近いのだろう。

タガノチャーリーズ

やはり馬は目立つ。32.4秒で行って絡まれたのだから、仕方が無い。

ローレル競馬場賞 中山牝馬ステークス(GⅢ)

ダイヤモンドビコー

普段よりはイレ込みマシ。中山1800mでハイペースになるのは稀な筈だが、中山記念同様にまたハイペース。これを今度はペリエ騎手が宥め切った。逃げたハッピーマキシマムが完全に脚が上がっていたのも有るが、それにしても凄い伸び。これまで引っ掛かりながらも好走していた訳で、能力の高さは解っていた訳だが、今日はそれを改めて証明した形。

ティコティコタック

チャカつくのは毎度。元々ゲート悪いのだが、ハギノスプレンダーのアクシデントで発走時間が微妙に延びただけに、余計に応えた様で、スタートで安目を売ってしまった。道中中段、ダイヤモンドビコーを見ながら折り合う形で、追い出しもダイヤモンドが追い出すのを待ってから追い出したが、相手があまりに反応良過ぎて、完全に突き放されてしまった。とてもハンデ差だけとは思えない負け振りなのだが、とはいえ前走指摘した通り、馬場が軽ければそれなりに堅実。

レディパステル

好仕上がり。ちょっと追走に梃子摺り気味で、3角辺りでも置かれ掛けていた。一応、最後は格好を付けて3着までは押し上げて来たが、元々がスローの差し馬だけに、休み明けでなくともこういうハイペースは合わないのだろう。

ピンクプルメリア

中山1800m教科書通りに内ラチピッタリを回ってきたが、4角一団の展開にならないとこの作戦は上手く行かない。それでもインから一瞬伸び掛かっていたし、レディパステルとはクビ差。この展開にしては上々といえる部類。

カリスマサンオペラ

デキ目立っていた。前走インから伸び掛かる好内容で、今充実しているからこれだけやれるのだろうが、この馬もハイペースは合わないタイプ。

報知杯 弥生賞(GⅡ)

バランスオブゲーム

2人曳き、発汗の跡。イレ込んではいたが、朝日杯フューチュリティSよりはマシ。逃げ馬不在で、戦前からスローが見えていただけに、下手に押さえて引っ掛かるよりは、ハナ切った方がといった判断。これが意外に折り合いついて、前半5F通過が63.2秒。トニーディアマンテが4角から絡んできたが、むしろそのトニーディアマンテが来た事で4角で後続と差が生じ、脚を使わす事が出来た感も。上手く行く時は得てしてこんなモノだが、流石にこのペースで折り合っていて負ける程この馬弱くなかったという事だろう。

ローマンエンパイア

落ち着いているのは、毎度の話。マイナス体重も決して細くないし、前走が太かったのだろう。大外枠、例に依って折り合いをつけて後方からの競馬で、今日は余程反応悪かったのだと思うが、何度かハミを掛け直すシーン。それでもこのスローを外から一マクリで来たが、スローだけにここまで。従って、今日に関しては同情の余地が有るのだが、どうもこの馬、あの競馬をし続けているのは、気性なのか、それともストライドが大き過ぎるからか、はたまたその両方かは解らないにせよ、恐らく何か馬群に突っ込めない理由が有る筈。いくら強い競馬をしようが、この馬群に突っ込めない癖が、フルゲートの皐月賞でどうなるかは疑問が残る。

タイガーカフェ

物見激しく、トモに肉が付き切っていない印象。道中は中段で、ちょうどヤマニンセラフィムの外。スローを嫌ったというべきか、デムーロ騎手の癖なのか、ワンテンポ早目のスパート。決して、切れるといった印象では無いのだが、前で闘っていた利と早目スパートが利いて、3着争いを制した形。休み明けだっただけに、これで変わって来れば。

セヴンスバード

ここでも馬は互角。向正面までは後方に近い位置にいたが、3角辺りから内目を捌いて進出。狭いシーンも有ったのだが、そこも全く伍さずに突っ込んできたし、トニービン産駒でしかもキャリア2戦の馬の割に器用な競馬が出来ている印象。クラシックには間に合わないかも知れないが、中々面白い馬になりそう。

ヤマノブリザード

2人曳きだが、完成度の高さは言わずもがな。下見では落ち着いていて、クセ馬には見えないのだが...。ゲートゴネていたのは札幌でも見せていた癖。被されたり接触したりしてもヒルまず、それでも突っ込んで来るのがこの馬の良い所だが、スローだけに、ちょっとの物理的ロスが挽回出来なくなってしまった。「馬が若いというか、周りを気にしていたし、外からこられたら嫌がっていたもの。能力は高いけれど、今日は悪い面が出てしまった。初めて乗ったのでなんともいえないが、本番では変わってくれると思う。(ペリエ騎手・週刊競馬ブック)

ヤマニンセラフィム

姿勢が高いのは前走同様、数字が示す通り太くも無い。ただ、急仕上げだったのは否定出来ない様で、若干気負い気味でトモも薄い。道中掛かり気味だったシーンも有ったが、追って案外。レース後骨折が判明した様だが、やはりこれに原因を求める外無いだろう。

モンテブライアン

好馬体だが、引っ掛かっていた。

トヨタ賞 中京記念(GⅢ)

ツルマルボーイ

昔の事を思えば馬はかなりしっかりしてきたし、トモに力強さも感じられる。ゲートで後手を踏まされたが、そのまま後方で折り合い専念。3〜4角で外からマクり、直線もそのまま圧勝してしまった。正直若い頃はもっと非力な印象を受け、パンパンの良馬場でも芝の葉長が長い(12cm)馬場はどうかと思っていたのだが、その点も大分解消。加えて、以前は良い脚が長く続かなかったのだが、この点もクリアになってきた。それにしてもこの馬がここまで辿ってきた道のりは同厩舎ロサードの正にそれ。ロサード同様に、この馬もここまで変わるのだから、今更ながら栗東の坂路調教馬恐るべしといったところ。阪神実績が無い様に、実はまだ坂が課題として残っているのだが、この調子だと恐らくクリア出来るのだろう。

アンクルスーパー

まだ重く映る。中段のインだが、最初から外に出したかった様な乗り方。向正面中程で漸く外に出し、結果的にツルマルボーイを追い掛ける形。4角並んでいたシーンまで有ったのに、勝ち馬のここからの瞬発力が凄まじく、一気に突き放されてしまった。今日は小回りだけに仕方が無いのだが、外に出して自分から脚を使う流れだとこの相手では厳しい印象。インを突いても大丈夫な、直線バラけるケースの多い東京や京都外回りで無いと持ち味が生きないか?

ミヤギロドリゴ

毛ヅヤ良いのだが、これも重目。出遅れたが、相変わらず掛かり気味。直線良くインが残っていたと思う、いやインピッタリを回ってこれる騎手が少なかっただけなのだろうが、それなりに伸びてきた。掛かる癖は毎度らしいので、これを度外視して考えると、一枚重いのが終いの伸びに響いているのだろう。

キングフィデリア

もうちょっとトモに力強さが欲しい。今日はマイネルタンゴがコスりに来ていたが、小回りコースで逃げ馬が人気になると、中々楽には逃がしてくれない。ペース云々は関係無しにこうなると厳しい。

シンボリビンテージ

馬体減は絞れただけ。これもゲート悪かったクチだが、最後方からイチかバチかの競馬。直線も大外で来てはいるが、掲示板止まり。この競馬でハンデを思うとちょっと頂けない。

タマモヒビキ

前走時と変わらず、良く見えた。敗因不明だが、揉まれ弱いのは昔からの傾向。スローで馬群が密集した中での競馬になっただけに、それが応えたのか...。

バンブーマリアッチ

流石に稽古ビシビシやっているだけの事は有って前走時同様に気合乗っていた。見た目もそれ程太くは無い筈なのだが...。これも敗因不明だが、単純に重かったとしか思えない。

チューリップ賞(GⅢ)

ヘルスウォール

立て直した効果は有る様だが、毎度のイレ込み。阪神ジュベナイルフィリーズで、決め手の無さを痛感したデムーロ騎手、思い切ってハナへ。3角過ぎ辺りからヤマシロに絡んできたが、これはこれでスタミナ勝負に持ち込めた分、良かった筈。どうも決め手に欠けるのは確かな様だが、今年は全体的に非力でスピードタイプの馬が多い印象、オークスでもこの戦法が取れれば面白そう。

オースミコスモ

多少テンション高い。ゲート先入れ。乗り替わりの後藤騎手、前走の轍を踏まない様にジワッと行かせているのだが、それでも今日はテンション高い分、行きたがってしまった。引っ張り切りで4角上がってきているのだが、最後は前半のロスが応えて、微妙に伸びを欠いてしまう。ただ、今日は前半遅かった訳で、これに叩いての上積みを考えれば、折り合いは付きそう。従って、今日のメンバーでは、桜花賞で一番期待出来るだろう。

チャペルコンサート

馬体重が減らなかったのは好材料。スタート直後にパッチンを食い、2角過ぎで前が狭くなって引っ張るシーンも。今日はこの不利で流れに乗り損ねたのが全てだが、自分から捕まえに行って、一旦は2番手まで上がったシーンも。馬体細化無くば、という条件付きになってしまうが、これも桜花賞で期待出来そうな一頭。

トーセンフェアー

ゲートアオるも、最初から抑えるつもりだった模様。後方のバラけた位置で追走、4角置かれ加減だったが、ここから安藤勝己騎手が本領発揮して、追い捲くっての4着。ただ、置かれ加減になった事で、位置取りの選択肢が無くなってしまい、坂下で狭いシーン。確かにこれが無ければ、もうちょっと際どかった印象。「直線で前が壁になっていたのが痛い。スムーズに出せていたら、着差はもっと少なかったと思う。馬を怖がったりしないし、いいところがあるね。(安藤勝騎手・週刊競馬ブック)」

トーセンエール

例に依って、追い込みに賭ける競馬。4角良い感じで上がって来れたが、前が止まらないだけに、今日のところは仕方が無いだろう。

シェーンクライト

チャカつく。前走とは違って外枠で前に壁が無い分、折り合いを欠いてしまった。加えて、内外均等な馬場だけに、阪神マイルの外枠も応える。

タムロチェリー

これもチャカついていたし、細い。それにしても、全く見所が無かった。「内枠が全てだね。ジョッキーの話でも、外からドンドンこられて出すに出せず、馬を気にしていた様だ。(西園調教師・週刊競馬ブック)」

阪急杯(GⅢ)

アドマイヤコジーン

体調が良いのは見た目から判るのだが、今日は普段よりもテンション高め。そして今日はこのテンションの高さがスプリントで生きた形になり、マイルの後で追走に苦しむ筈が、持ったままで先行策。インを捌いて抜け出してからは直線独走なのだが、ただこれも中山記念同様に馬場状態の割には時計が平凡。他馬が走らなさ過ぎた印象も有るだけに、次走GⅠでも正直微妙。

ダンツキャスト

何時も良く見せるタイプ。メンコ着用の効果らしいが、昔の事を思えばイレ込みも大分マシ。昨年暮れ辺りにハミを替えたのだが、それ以来モタれる癖も無くなって、折り合いも付く様になっている。ここ数走そういった微妙な変化が有りながら結果が出なかったのだが、漸くにして結果が出た形。とはいえ何故これまでが結果が出ず、今日に限って上手く行ったのかが、誰にも解らないのもまた事実。従って、たまたまハマった印象は未だ拭えず終い。

ブラウンシャトレー

中央の方が輸送が有って絞れるからか、良く見せる。加えて、馬体重動く割に気負わないのも良い傾向。久々の芝だけに、スピードに乗り切るまでは多少時間掛かった様だが、その後はスムーズ。ここからは手応え良く追走出来たし、何より持ったままで4角回ってきて、一旦は完全に2着確保のシーン。追ってからイメージ程伸びない馬で、最後捕まったのは止むを得ないが、この時計に対応出来たのは収穫。

クルーピアスター

昔からパッとしない馬なのだが、今日は毛ヅヤも冴えず。ダッシュ付かなかったのか、珍しく押さえる競馬。馬群の外で折り合っていて、4角もそのまま大外。それ程切れる脚が有る訳でも無い上、この馬場を思えば、寸前まで良く詰めている。まあ、オープンで先行しても、この馬としては家賃が高そうな嫌いが有るだけに、暫くは差す競馬をし続けた方が良い気も。

ゲイリーフラッシュ

お馴染みの遮眼革。前走時に馬体の張りを褒めたが、今日もそのまま。今日は馬場が良過ぎるだけに、大外枠に泣いた印象。唯でさえ前走よりペースが1秒以上違い、加えてこの外枠で位置取りも悪くなってしまった。これもクルーピアスター同様に、ソコソコには来ているのだが、この馬場で外を回っていては勝ち負けに絡んで来るのは厳しいところ。

テンシノキセキ

体裁は取り繕っている。とはいえ冬毛も目立ち、歩様にスムーズさを欠く。加えて、初コースで集中力を欠いていた。勿論デキも有るのだが、コレも枠順に泣いた印象。前々で立ち回る必要が有るだけに、尚の事外枠が応えてしまった。

アイティースワロー

見た目のデキ変わらず。とはいえ昔はもっと煩かった馬、今日は落ち着いていたのか、気合不足だったのか...。ちょっとこのペースでは追走で手一杯になってしまう。とはいえ、この馬結構自在性が有るだけに、速ければ速いなりに、淀短距離ステークスの様な差す脚も有るのだが。「3角過ぎで落鉄していたのも影響していたみたいだね。(太宰騎手・週刊競馬ブック)」

中山記念(GⅡ)

トウカイポイント

新潟でカブトヤマ記念を2着に来た時も張りが有って良く見せたが、あの時と同じデキ。揉まれ弱い馬だが、同馬主トウカイパルサーが持って行かれてハイペースで縦長の展開。これを岡部騎手が後方で宥め切った。4角外からトラストファイヤーと併せ馬、折り合った時の決め手は前述のカブトヤマ記念で証明済みとはいえ、差し返す根性を見せたのは初めて。レコード決着だが、元々のビッグバイアモンの時計も遅く、加えて中山1800mはコース形態から速くなりようが無いだけに、たまたま珍しく条件が揃っただけといった印象。従って時計自体は評価の対象にすべきで無いと思うのだが、この馬のレース振り自体は中々味の有るモノ。

トラストファイヤー

多少重いのだろうが、毛ヅヤは良くなってきた。福島でラジオたんぱ賞を勝った時のイメージで乗られ(丁度その時ハナ差で負けたのが今回の江田照騎手!)、待機策。その時同様に、「後方から矯めるだけ矯め込んで、仕掛けもワンテンポ遅らせた。」までは良かったが、トウカイポイントの項で述べた通り、並んでから向こうに差し返される有様。オープン馬の中では良い脚が一番続かないネイティヴハートよりはマシとはいえ、この馬も相当酷い印象。依って、人気の際の信頼性は限り無くゼロに近い。

ラスカルスズカ

大分絞れてきた。1400m→2400mと使った後なのだが、ちょっと前半は追走に梃子摺り気味。ただ、4角は前が壁になり、今度は逆に引っ張り切り。2着馬の外に出してからは良く伸びてきたのだが、勝負どころでロスが有った分届かず。まあ、復調気配は示したとはいえ、前走は2400mでも特にスローな流れだったのは、今にして思えば誤算だったか...。

ミレニアムバイオ

昨年スプリングステークスで中山に来た時よりはマシだが、それでも多少は気負う。道中はコーナーの度に持って行かれる有様。4角も同じ様に動いてしまい、結果的には競輪でいうところの先頭誘導員(トウカイパルサー、ゴーステディ)を4角手前で切り捨てる、いわゆる横綱相撲的競馬の形。まあ、準オープンならばそれでも勝てるだろうし、今日も現にエイシンプレストンを押さえ込んでいるのだが、流石に重賞だけに決め手の有る馬の台頭を許してしまう。やはり一部で戦前懸念されていた通り、外枠で馬が喜んで行き過ぎたのが最大の敗因。

エイシンプレストン

前走は4日前に空輸した直後の馬体重で、前々走のマイルチャンピオンシップと同じ数字、従って戻っただけ。もうゲートの不安は消え、ミレニアムバイオとは違って折り合いこそ問題無いのだが、斤量が斤量だけに早目の競馬は仕方無い。ただ今日はあまりに流れが速くなってしまっただだけに、この斤量が余計に応えてしまった印象。「日本のGⅠを狙っている馬は別ですが、GⅢならともかく、GⅡでも60kgになってしまうんでは、香港など、海外を目標にしている一流馬に適当なステップレースがないということですからね。そのあたりをもう少し考えて欲しいと思います。馬はよく頑張っているだけに残念です。(福永騎手・週刊競馬ブック)」

ジョウテンブレーヴ

出来ているが、この馬はもっと煩い位で良いし、良い時は毛ヅヤピカピカに見せるだけに、その意味からはデキ一息なのだろう。昨年のこのレースが良い例だったが、こちらは少々ハイペースでも、前で闘わないと持ち味が出ないタイプ。その意味からは、スタートで安目を売っていて仕方が無かったとはいえ、4角マクったところで意味が無い。まあ、昨秋は本当に酷いデキだっただけに、あれを思えば、パドックの気配も掛かり癖の出てきたレース振りも大分良化したのは事実。従って、ソロソロ怖さも出てきたといったところ。

アーリントンカップ(GⅢ)

タニノギムレット

前走のパドックは、妙に歩くスピードが遅く、その原因がトモの甘さに有った訳だが、少なくともマトモに歩ける程度にはマシになった。加えて前走は非力な印象を受けたのだが、今日は逆に太い印象。恐らく前走は不必要な箇所に肉が付き、必要な箇所には肉が付いていなかったのだと思うのだが、今日は必要な箇所にも一応肉が付いたのだろう。縦長の展開で、中段で馬任せの追走。抜け出す時の脚が速かったのだが、前走同様にインにササるのを必死で矯正していただけに、まだまだその辺は課題。時計は馬場を考えても、確かに優秀なのだが...。

ホーマンウイナー

一息入って、テンション高め。ただ、京王杯2歳Sで指摘した踏み込みは大分マシになった。未だ行きたがる面は残っているが、それでも大分マシになったし、デイリー杯2歳Sの時に気になった、馬が勝手に前を捕まえに行く癖も無くなった。勝ち馬に一気に来られた割には、最後まで諦めずに走った点も収穫だろう。大分、常識に掛かってきた。

ダンツジャッジ

赤いシープスキンノーズバンド。ちょっとコレもトモが甘くて、気負い気味。スタート直後はかなり持って行かれたが、直ぐに折り合いついたし、前が止まらない馬場だけにこの位置取りがむしろハマったという見方も。4角も手応え充分で回ってきたが、前半のロスが最後に応えた印象。とはいえ、ホーマンウイナーに最後まで良く抵抗していて、本質が短い距離に有るのは確かな様だ。

サダムブルースカイ

太いのは確かだが、昨年は細手に見せる傾向が有っただけに、むしろ歓迎すべき。加えて、落ち着いていたのも強調材料。コレも前にいたが、函館2歳S同様に気合を付けながらの追走。インから伸び掛かってはいるのだが、ちょっとジリっぽい。休み明けの分も有るだろうが、やはりこの相手では些か厳しいか?

マルブツアンセム

ちょっとトモが淋しい印象だが、体質弱くて稽古手一杯やれない現状を思うと、止むを得ないところ。後方で折り合いを付ける策だが、前が止まらない馬場だけに、良く差してきた部類。

ストレイラルホーク

2人曳きだが、ちょっと気負い過ぎ。如何にも見栄えだけは一流の関東のマル外といったイメージそのまま。ゲートデアオって、4角外からマクったがそこまで。ダートならばあの体重でも良いのだろうが、芝で走る以上はもうちょっと素軽さが出てこない事には。

サンヴァレー

相変わらず毛ヅヤ目立つのだが、今日は一段と深い遮眼革。イレ込み具合も悪化していて、戦前当日輸送を懸念していたのが的中してしまった。今日は最初からハナへ行くつもりだったのだろうが、ダンツジャッジが外から一気に来ただけに、ここでの無理が最後に祟られた形。まあ、今日は相当気負っていただけに、あの展開になってしまった以上は、もっとブッ飛ばしても良かった様な気もするが...。