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競馬回顧 2017年4回京都

第156回天皇賞・秋(GⅠ)

キタサンブラック

2人曳き。前肢にバンテージ。常に良く見せる馬だが、前走阪神戦が太かっただけに、マイナス体重でも良かった。スタート直前にゲートを突進して出遅れ。直ぐに内へ寄せて中段から。不良馬場で各馬が内を開ける展開、特に逃げたロードヴァンドールのノメり方が酷かったのも内が開く一因となっており、自然と前。4角では好位に取り付いていた。インから抜け出して、直線入口で先頭。最後は流石に苦しくなった様にも見えたが、一杯一杯振り切った。1984年に2000mに短縮となったこのレースだが、2分08秒3はプレクラスニーの1991年より3秒以上遅い史上最遅。底力が生きた。前走阪神戦は社台グループの包囲網も有っただけに、鞍上のリカバリーが有ってこそでも、出遅れたのも結果的に良い方に出た。ただ、戦前触れた様に喉鳴りの症状が出ている様で、そろそろ限界が近付いている。今回は雨も良い方に出た。年内で引退は良い引き際だが、あと2走はボロが出る危険も。

サトノクラウン

+10kg。前走阪神戦で丁度。更に増えて今日は太く映った。気配はこれで良いが。出脚は決して速い方ではないが、枠の利有って中段から。これもキタサンブラック同様、内に居る間にいつの間にか好位に取り付いていた。徐々に外へ持ち出して行ったキタサンブラックに対し、この馬は比較的真っ直ぐ走って、あと一歩迄追い詰めたが、最後はフォームがバラバラ。各馬マトモに走れない中で、馬力と底力で及ばなかった。2分3秒の馬場だったらチャンスは有っただろうが、相手はバックボーンも含めて何年かに1頭のスター。中々2回連続では勝たせて貰えない。

レインボーライン

+8kg。前がキタサンブラックだけに見劣るのは仕方がないのだが、馬体充実してデキ自体は良い。微妙に出負けした分も有るが、最初から掛かりそうになっており、宥めて中段。これもインに居て追い上げたクチで直線だけ外へ。この馬が一番マトモに走っていた分の3着。こんな馬場になることはまずないとしても、今日の馬場に適性が有ったのは間違いない。父ステイゴールド、母父フレンチデピュティの配合だけでも頭に叩き込んでおいて損はないだろう。

リアルスティール

2人曳き。イレ込んでいないのが何より。馬体も勝った前走から平行線。珍しく好発。これを生かして最初から外。好位で流れに乗れていた。上位3頭とは違い、切れるタイプだけに今日はこれで正解だっただろう。直線向いてレインボーラインと同じ位置に居たが、伸びあぐねて5馬身差付けられてしまった。とはいえ、道悪は下手。4着でも大健闘といえる。雨を嫌がらなかった点も含めて今季は余程デキが良いのだろう。

マカヒキ

2人曳き。前後肢にバンテージ。前走から悪くなかった。落ち着きも有った。行き振り自体は悪くなさそうだったが、位置取りが後方だった故に、前の馬がボコボコにした道を通る形となり、更にキックバックも有って序盤はリズムに乗れていなかった。位置取りという意味でも、今日は絶望的な位置だったが、結構最後は良い脚を使っている。似た様な位置に居た馬が軒並み二桁着順だった中でこの5着は立派。今年何度か述べている様にエイシンフラッシュを想起させる馬で、良馬場だったら本命にしても良かった位だったが、道悪でもこれだけ走れたのは勝てるだけの力が有ったということだろう。次走2400mは少し長い気もするのだが、良馬場なら巻き返しも。

ソウルスターリング

2人曳き。馬体はこれで良いが、もう少し落ち着いて欲しいところ。出脚は速い馬だが、スタート直後に内のレインボーラインと接触して出脚が鈍り、中段から。折り合っていた様には見えたが、4角で外を回らされてしまい、その間に上位3頭とは一気に差が開いてしまったのが痛かった。マカヒキとの比較から、スムーズでも馬券圏内迄はどうかといったところだが、リアルスティールとは互角といえる内容。一応、前走から巻き返しなったという評価で良いのでは?

第6回アルテミスステークス(GⅢ)

ラッキーライラック

前後肢にバンテージ。+6kg。このメンバーだと馬が一枚上。歩様もしっかりしていた。好発。内の馬に行かせて好位。乗り役が暴走しない様に宥めつつも、道中は明らかに行きたがっていたが、それでも4角は手応え充分。直線もその通りに伸びて完勝といえる内容。折り合い面も、新馬の新潟戦は折り合いが付いており、この馬場を気にした様。むしろオルフェーヴル産駒らしいともいえるだろう。あとは決め手の問題。要は良馬場でディープインパクト産駒を敵にした時にどうか。パワーだけならこれ迄出て来た2歳牝馬の中ではNo.1。タイプは全く違えど、昨年のリスグラシュー級の働きは期待出来る。

サヤカチャン

馬体は数字よりも迫力が有る。もうチョイ落ち着いてほしいところだが。好発。出脚も速くハナ。隊列が決まりそうになったところで、シンデレラメイクに来られたのは少し痛かったが、こちらがペースを上げて相手を引かせて単騎の逃げ。それでも1000m通過59.8秒と、多少速い程度で行けた。道中は内ラチ沿いを走って、直線だけ馬場の良い3分どころへ持ち出す形。ラッキーライラックには並ぶ間もなくやられたが、2着は悠々キープした。多少、我の強い面が有り、単騎で行けたのは大きかった様。今後も自分の競馬が出来るかどうかがカギ。

ラテュロス

前後肢にバンテージ。+8kg。420kg台の馬で馬体増は素直に好感。ただ、キョロキョロして集中力がなかった。出脚はサヤカチャンの方が速そうだが、少し出して好位のイン。道中は折り合っていた。直線向いて、サヤカチャンが内を開けてくれたお陰でこの馬にも進路が出来たが、追い出して少しモタついた感は有り、通常なら外の馬が3着となるケースを最後に盛り返した形。可動範囲が広くてトビが大きいタイプ。エンジンの掛かりの悪さはここから来ているのだろうが、上手く行けば大化けも。距離はもっと延びた方が良い。

トロワゼトワル

+8kg。物見が激しい。多少フックラしたが、まだもっと増えても良い。ゲートは五分以上に出ているが、出脚が速そうでなく中段。他馬との兼ね合いも有り、手綱を引っ張って頭を上げる場面も有った。直線向いても、少し狭いところで、しかも下を気にしたのか、フォームもバラバラ。苦しい中で諦めずに走っての4着は評価出来る。色々課題は有るにせよ、根性だけは抜群。

スカーレットカラー

前肢にバンテージ。集中力が有った。纏まった造りで、歩様も力強い。微妙に出負けしたが、掛かり気味に取り返して中段やや前。直線向いてから、ラスト200m程迄はしっかりした脚取りで、3着は確保出来そうなところだったが、そこからフォームがバラついて甘くなってしまい、ハナ差5着。4着トロワゼトワルも最後フラついていたが、そんな馬に最後捕まってしまったのは頂けない。根本的パワー不足も有りそう。まずは成長待ち。

第60回毎日放送賞スワンステークス(GⅡ)

サングレーザー

集中して歩けていた。多少華奢なのは毎度。返し馬でテンションが高かったことも有り、多少出負け気味でも、急かさず後方に近い位置。課題の折り合い面は問題なく、ノメッている様な場面もなかった。更に、前の馬が内を開けてくれたことでインが開き、ヒルノデイバローとの併せ馬になったのもこの馬には良い方に向いた印象。道悪をこなせたことは収穫といえるが、外が全滅の展開で能力面は何ともいえない。少なくとも現状ではGⅠを勝てるだけの迫力はないということになるが、尤も成長の余地はまだまだ残している。

ヒルノデイバロー

遮眼革。走ったり走らなかったりだが、デキ自体は高値安定。毛ヅヤも良い。今日は1400mということも有るが、最近は出脚が強化されており、スッと好位。内が開いたことも有り、直線入口で自然と先頭。最初は逃げたトウショウピストに併せに行ったが、相手が内のサングレーザーと気付いて再び内へ。あと一歩だったが、金星を逃した。何度かハミを掛け直す場面も有って、こういった馬場は得意とはいえないのだろうが、その割に渋太い。実質的には昨年から芝を使う様になったが、漸く馬が慣れて来て、出脚が来たのが大きい。

レッツゴードンキ

+14kg。多少太く映る。最近のこの馬にしてはテンション高いのもマイナス。折り合い面を意識しつつ、出たなりで中段から。1200mからの参戦だった割には折り合いは付いていた様にも見えたが、明らかにノメる場面が何度か有った。この馬も上位2頭と近い位置に居て、充分勝負圏内だった筈だが、ノメッた分、一伸び欠いた感が有る。パワーは有る馬だが、滑る馬場だとマズい様。とはいえ、本当に堅実に走るようになった。同馬主ストレイトガールもそうだったが、実に馬主孝行。

ビップライブリー

+6kg。馬体に張りが有った。気負う馬だけに、この気配も許容範囲。好発。一瞬はレッツゴードンキよりも1/4馬身程前に居たが、出脚で置かれて中段やや後方。流れに乗せようと押したところ、坂の下りで行きたがっていた。4角迄はチグハグだったが、内枠有利の展開になり、ここ迄。マトモに流れに乗れていたら際どくなっていた。最近乗れていない感も有る松若騎手だが、最近この馬に乗っている大野騎手や和田竜二騎手ならと悔やまれるところ。

ダノンメジャー

前肢にバンテージ。+12kg。数字分だけ重たい気もするが、元々ドッシリ見せるタイプの馬。好発も、トウショウピストの出脚が速く、行かせて2番手。この馬の方が外枠だっただけに、これはこれで悪くない展開。ただ、トウショウピストが内を開けて走っていたことで、この馬は更に外。決め手の差は有るだろうが、結果的に内枠の馬が上位独占する展開だっただけに勿体なさが残る。とはいえ、この展開なら1400mでもやれることが分かったのは収穫。

第78回菊花賞(GⅠ)

キセキ

前後肢にバンテージ。トモのボリューム感は前走阪神戦同様。この土砂降りの中でも外を周回して、気配が良かった。1馬身出遅れて後方から。少し行きたがる位の行き振りだったが、抑えが利いていた。この点がミッキースワローと対照的。道中は馬場を考えればむしろハイペースに近い流れで、各馬の仕掛けも全体に早かった中で、しっかり脚を矯めて大外から突き抜けた。能力云々というよりは、雨を苦にしない馬造り、特に精神面の強化が功を奏したといえるだろう。角居厩舎のGⅠ勝ちはリオンディーズの朝日杯フューチュリティステークス以来とのことで意外に久々となるが、手腕健在。

クリンチャー

-8kg。まだコロンとした体型だが、馬体絞れる。歩様の硬さがないのも何より。微妙に出遅れたのと、ダッシュも付かず、隊列の固まった1周目4角では後方に近い位置。そこから外へ持ち出して、自力でマクって行く形。2周目4角ではほぼマクり切っていた。大外からのキセキには並ぶ間もなくやられたが、それでも一杯一杯粘り込んで2着確保。持ち前の渋太さを生かした。それも能力といえばそれ迄だが、根性で走るタイプ。今春中山戦の我慢比べや、今回の様な特殊な展開になると出番が回って来る。尤も、この手の馬は条件が整った時に、体調面、もっといえば精神面を整えておくのが難しい。厩舎技量を問われる馬。

ポポカテペトル

馬自体は重量感が有って決して悪くないが、トモに力が入っていない様な歩様。これもゲートが微妙に悪く、当初は後方に居たが、馬が行きたがって前に馬を置き、この枠でも内目を通ったことでコーナーワークで自然と前へ。2周目3角では好位グループに取り付いていたが、位置取りはともかく乗り役が諦めずに抑えていたのが幸い。クリンチャーの内から併せ馬に持ち込んで3着確保した。理想をいえば2着が欲しかったところだろうが、道中のロスが大きく仕方がないところ。立ち回りの上手さでもぎ取った3着。

マイネルヴンシュ

前肢にバンテージ。+6kg。前述した様に、下見から土砂降りだったが、馬に集中力が有った。ただ、多少トモが甘い。ゲートは出たが、全く進んで行かず後方から。乗り役の話では周囲を気にしていたとのことだが、道中の行き振りも悪く、外へ持ち出してからやっと動き出した様な印象。直線もキセキの内に居た時は伸びている感じではなかったが、外に馬が居なくなって最後の最後に伸びて来た。最初から外に馬が居なかったら2,3着有ったかも。前走中山戦は馬の間から伸びており、この天候故だと思うが、何れにしてもスタミナを見せたのは確か。

ダンビュライト

2人曳き。締まった馬体で、歩様にも柔らか味が有って良く見せた。出脚を生かして好位の外。壁のない外で行きたがっていたが、かといって被されると走らない馬でも有り、これで正解。坂の下りでマクって行くのも多少早いのは承知だっただろうが、コースロスの問題も有り、兎に角自分の競馬に徹した。結果5着はロスが積み重なったということにはなるが、前述した通り、馬の個性の問題で仕方がない。

ミッキースワロー

2人曳き。雨を嫌がっている様な雰囲気ではなかったが、少しイレ込み。馬体はスッキリと仕上がっていたが。微妙に出負けして後方に近い位置。ただ、1周目の坂の下りで持って行かれそうになっており、更にホームでは頭を上げている程。1角でやっと折り合ったが、息を入れる間もなく、2周目3角過ぎから進出。それでも直線向く迄は脚が残っており、ラスト300m程の地点でクリンチャーに並び掛けそうになったところで息切れ。道中のロスを考えたら良く頑張っている。馬場に泣いただけで馬は強い。

第20回富士ステークス(GⅢ)

エアスピネル

2人曳き。前後肢にバンテージ。高いレベルで平行線。尤も、毎回下見は落ち着いているので、参考にならず。道悪ということも有って、今日は出脚を生かした先行策。4角で多少馬が待ちきれない素振りも有ったが、それ以外は折り合えていた。乗り役にも自信が有った様で、直線は馬場の良い外へ。目標物のない1頭だけになって、多少フラついていたが、それでも完勝といえる内容。東京の不良馬場はジャスタウェイの勝った14年安田記念だそうだが、この時の2着が引っ掛かり癖の有ったグランプリボスだった様に、この手の馬の方が有利となる。能力に疑う余地はないのだが、抱えている課題が解決出来たかどうかは何とも。

イスラボニータ

雨を嫌がる素振りも有ったが、デキ自体は悪くない。休み明けとしてはほぼ満点。好発も、外枠だったことも有り、控えて中段。4角の手応えでエアスピネルが勝ち馬と気付いた様だが、58kgを背負っていたことも有って、直線はワンテンポ遅らせての仕掛け。手前の替え方にもう一つ本当ではない印象も有ったが、それでも2着は確保。ずっと外を回さられた分も考慮すれば、力は見せた競馬といえる。休み明けとしては必要充分の競馬が出来た。次走京都戦は一昨年3着、昨年2着。今年こその期待は当然。

クルーガー

前後肢にバンテージ。馬が緩く映った。チャカついていたのもマイナス。半馬身程出遅れ。枠が外だったことも有り、腹を括って後方から。その割に3〜4角は少しゴチャついた位置にいたが、エアスピネルがチギる展開で、脚を矯めて乗られたのが正解。イスラボニータが抜けた後を追う様に伸びて来た。強いのか弱いのか良く分からない馬だが、持続力勝負に強いのは間違いないのだろう。そういう点では洋芝主体となる冬場の方が良いのかも。

レッドアンシェル

1人で曳いて、外にもう1人寄り添う形。パシュファイヤー。イレ込みネックの馬だが、落ち着いていた。馬体もフックラ。出脚はマイネルアウラートやエアスピネルの方が速かったが、枠の利で先行。4角迄はマイネルアウラートと並走。1000m通過59.8秒とスローでは行けた。逃げ馬の定跡通り、直線も内ラチ沿いに張り付いていたが、ラスト100m辺りで息切れ。しかし、行き振りからこういう馬場は上手そう。最近は中々道悪にならないが、忘れた頃の一発には警戒したい馬。

ペルシアンナイト

休み明けとすればまあまあ。多少張りが怪しい程度。歩様はしっかりしていた。微妙に出負けしていたが、何とか好位確保。直線は特に外へ持ち出さず、出たなりの位置で伸びずバテず。道悪で瞬発力を殺がれた様な競馬。3歳馬だけにこの手の馬場で力を出せないのは仕方がないところ。むしろ最後迄諦めず走っていたことを評価したい。次走狙い目。

グランシルク

2人曳き。前肢にバンテージ。+6kg。デキが良過ぎてた多少立派だったかも。気配は抜群に良く見せた。元々出脚は速い方ではなく、中段やや後方の位置取りは何時も通り。直線向いてイスラボニータと近い位置に居り、充分勝負圏内だったが、追ってサッパリだった。道悪実績はソコソコ有ったが、ここ迄悪くなるとダメな様。

第22回秋華賞(GⅠ)

ディアドラ

2人曳き。+12kg。多少腹回りがボテッと映った。気配に問題はないが。半馬身程出遅れて後方から。道中は決してインに拘っていた訳ではなかったが、3角からインへ潜って進出。このレースは昔のローカルハンデ重賞の様な展開になることが多く、道悪の割には流れていても全体の仕掛けは早目早目。そこをコーナーワークで稼いで馬群を捌いて突き抜けた。乗り役も上手かったが、馬も強かった。ただ、上がりが掛かって時計は平凡。幾ら道悪でも2分掛かる程の馬場ではなかった。この路線はハイレベルだったが、全体に成長が薄い印象も。

リスグラシュー

2人曳き。今季は馬を大きく見せる。気配も良かった。これも1馬身出遅れて後方に近い位置。尤も、今年は揉まれる展開が多く、バラけてスムーズな競馬は出来た。道悪自体はこなしても、ガサがないので馬場の良い外へ回してモズカッチャンが良い目標にもなったが、インで脚を矯めていたディアドラには抵抗出来ず、最後は何とか2着確保するのがやっとだった。この馬の場合には多少エンジンの掛かりが遅い面も有り、その点でも早目の競馬で正解だったが、相手に120%の競馬をされてしまっては仕方がない。馬も乗り役も責められない2着。

モズカッチャン

2人曳き。前走阪神戦ではイレ込んでいたが、今日は落ち着いていた。更に毛ヅヤが冴え、馬体も締まって文句なし。ゲートを決めてこの馬の出脚で好位のイン。前に人気馬が居たことも有り、4角手前から進出。直線入口で先頭に立って早目押し切りを狙ったが、後方から2頭。良馬場ならこれで正解だっただろうが、今日は思いの外流れたのが誤算だったか。尤も、乗り役の話では落鉄が有ったとのこと。インを立ち回れるのが強みで、何処かでタイトルに手が届いても。

ラビットラン

前後肢にバンテージ。+4kg。数字がないだけに増えるのは良い傾向。前走阪神戦より落ち着いていたのも何より。出脚は相変わらずだが、この馬としてはゲートを出たのと、枠の利が有って中段位置を確保。ずっと内目を立ち回って、4角では勝負圏内に付けていたが、最後は明らかに伸び負けていた。向正面辺りから微妙に手応えが悪くなっており、下を気にしていた様に見えた。血統からはこの馬場で期待されたが、むしろ良馬場向きだった様。裏を返せばその割には頑張っているともいえる。

カワキタエンカ

前後肢にバンテージ。馬は前走阪神戦と変わらず。集中力も有った。戦前の想定通りハナ。ゲートも速かったが、何が何でもの構えで仕掛けていた。馬もその気になって1000m通過59.1秒と速くなり過ぎてしまった感は有るが、単騎で行けた利は大きかっただろう。3〜4角中間から突き放しに出て、徹頭徹尾小細工せずに乗られ、最後は甘くなったにせよ、それでも掲示板は確保出来た。中々強い内容。上手く行けばクィーンスプマンテになれる。

アエロリット

2人曳き。-10kg。これはこれでスカッと見せるが、少しテンション高い。マイルだったら気配絶好ということになるのだが、2000mではマイナス。東京戦から馬が変わったのか、ゲートを出る様になり、スッと2番手。しかし、結構行きたがっていた。距離に不安が有るだけにこうなるとダメ。今更ながらマイルの方が良いが、これもラビットラン同様、厳しい展開の中で良く頑張っている7着という見方も出来る。

ファンディーナ

前後肢にバンテージ。-8kg。前走阪神戦より落ち着いていた。馬体も絞れて見た目の減点材料はない。好発切ってスッと3番手。前がバラけたことも有って、前走よりは折り合いも付いていたが、4角でモズカッチャンに交わされるとほぼ無抵抗。直線は殆ど追っておらず、そこ迄の負けではないと思うのだが、今日は言い訳がない。馬場もパワーでこなせる筈で、気性面ではない別の部分に敗因が有りそう。爪が悪い馬に多いパターンだが...。

日・アイルランド外交関係樹立60周年記念 第65回アイルランドトロフィー府中牝馬ステークス(GⅡ)

クロコスミア

+8kg。推進力の有る歩様で何より気配が良い。実績上位馬も決して悪くなかった中で、馬も抜群に良かった。戦前の想定はゲッカコウかこの馬がハナだったが、ゲッカコウが出遅れてくれてスンナリハナへ。2角の前に既に引っ張っていた程で、1000m通過61.9秒のスロー。オートレースのハンデと同じく、脚を使わずにゴール迄最短距離でスタートした様な形になった。少し渋った馬場も昨秋の阪神戦で渋太さは証明済。相手がヴィブロスとはいえ、それでもクビ差しかないという見方も出来る。タイトルを取れたことは繁殖へ上がる時に大事な金看板となるが、馬券という意味では次走以降嫌ってみたい気も。

ヴィブロス

意外に出来ていた。馬体に張りが有って、歩様も力強い。確実に昨年より馬が良くなっている。ゲートは五分程度だったが、急かさず中段。ペースが遅いことも有って、少し掛かるのは致し方ないところだが、それでも3列目なら充分勝負圏内だっただろう。直線向いて、クロコスミアとトーセンビクトリーとの間を狙ったが、スペースが中途半端で結局トーセンビクトリーの外へ。実質ラスト200mの勝負になって届かなかった。良く追い込んでいるが、コース取りの逡巡がなければ勝っていただろう。何れにしても馬は頑張っており、前走のUAE戦がフロックでなかったことを証明。現役牝馬最強は疑う余地がない。

アドマイヤリード

2人曳き。独特の歩様だが、これでも春よりはマシ。馬体もギスギス感がなくなり、春より良くなっている。ゲート自体も速くないが、出脚も速いとはいえず後方に近い位置。決して距離面に余裕が有る訳ではなく、動くに動けない形になった。直線も馬群を割れる様な雰囲気はなく、立て直して外へ。1頭違う脚で追い込んで来た。稍重で上がり32.9秒は中々お目に掛かれない数字。春は明らかにフロックだったが、今季は下見から本格化している。次走はマイル戦に戻す様だが、牡馬相手でも圏内の1頭。位置取りの問題は有っても決め手は通用。

クイーンズリング

悪くないが、良い時はもっと良く見せるタイプ。馬体が硬く映ったのがマイナス。出遅れ1馬身不利。何時でも動ける外へ持ち出して、動けない展開の中では積極的に乗られた方だったが、GⅠ馬3頭の中では先に動いてしまったことも有り、終いが甘くなった。尤も、デキ自体が今日は一息に見えた。今年3戦が何れも雨が残る馬場で、パンパンの良馬場が理想のこの馬にとってツキがないのも確かだが、今後何処まで良化出来るかがカギに。このままでは厳しい。

トーセンビクトリー

+10kg。細身の馬で馬体増は無条件で好感。張りも悪くない。好発。出脚も有る馬だが、ハナへ行く気はなく、クロコスミアに譲って2番手。器用さ身上のこの馬にとっては理想的なパターンになった。ただ、直線は前が掴まらず、実績上位の3頭に差されてここ迄。真っ向勝負だとこんなモノか。小回りでセコい競馬に徹した方が。

第52回農林水産省賞典京都大賞典(GⅡ)

スマートレイアー

-6kg。馬体スッキリ。例に依って歩様の柔らかみが素晴らしい。この点では最もディープインパクトらしいといえる。ミッキーロケットにゲートでやられたことも有り、ならばと折り合いに専念して後方のイン。といっても、最近はどんな競馬でも出来る様になっており、位置取りよりも揉まれたり急かさない方を大事にした方が良いタイプ。4角もこの馬より後方に居たシュヴァルグランが先にマクって行く中で、そのまま後方で待機。直線に賭けると脚でコジ開けて突き抜けた。香港で一度使っただけで結果を出した形だが、とはいえ最近マイルで明らかに距離不足を思わせる競馬が多く、使っていなかっただけという見方が正しいだろう。距離が保つのも、いきなりで勝てるのも馬体の柔軟性が有ってこそ。これが厩舎技量。

トーセンバジル

テンション高いが、毛ヅヤが冴えてデキ自体は良い。逃げ馬不在だったが、内の馬を叩いて好位のイン。ハナへ行っても良かったのだろうが、ラストインパクトとマキシマムドパリが行ってくれて控える形。道中も、下見の気配を考えると折り合っていた方だろう。岩田騎手らしくインを確保して、直線も内から。ラスト150mで先頭に立って何とか押し切ったかに見えたが、スマートレイアーに上手く脚を使われた。やはり2400mは有った方が競馬がし易い。内外、更に斤量の差も有ってシュヴァルグランとは能力差有りそうだが、以前より機動力が増したのは成長だろう。

シュヴァルグラン

2人曳き。数字上は出来ていたが、腹回りが緩い。満点はやれない。ゲート自体も少し悪かったが、内外から寄られて後方から。3角過ぎから徐々に外を進出、これはこれで良いのだが、京都外回りでマクりに行くと他場よりロスが多いのも確か。良い脚を長く使っており、馬は頑張っており、強い競馬。結果は内の展開になっただけ。ただ、2400m辺りだとこういうやられ方は仕方がないところ。3000m以上有った方が他馬が苦しむ分だけ有利になる。

ミッキーロケット

+6kg。このメンバーだとまだ馬が劣る。迫力が足らない。珍しく好発。内の馬を叩こうとしたところで、逆にトーセンバジルに叩かれ、中段から。これでも悪い位置取りではなかったが、道中窮屈だったところに押し込まれた感は有った。直線も一瞬だけ追い出しが遅れている。上位3頭はコース取りの差こそ有れ、スムーズな競馬が出来ており、スローで余計に細かい部分が明暗を分けた感が有る。正直、前述の箇所が上手く行っていなくても、下見の雰囲気から厳しいという評価だが、これ迄と違ってゲートを出たのは収穫。中身は良くなっているのかも。

レコンダイト

少しイレ込んでいたが、何時もより歩様に勢いが有る。デキ自体は近年の中で一番。ゲートを斜めに出て、乗り役がバランスを崩してしまい後方から。後方で脚を矯めて、直線も外へ回す気はなく、そのまま馬群を割って行く形。多少右往左往した部分は有ったが、最後迄しっかり脚が使えていた。最近の中では一番の好内容。次走東京2500mとなる様だが、枠次第では狙ってみる手も。

サウンズオブアース

-12kg。絞れて見た目には悪くなかったが、発汗は気になった。ゲートも悪かったが、内のプロレタリアトに寄られ、一度立て直して好位の外。これはこれでそれなりのロスだが、道中は折り合っていた。シュヴァルグランに坂の下りで交わされた際にもまだ手は動いておらず余力は有った様に見えたのだが、直線で勝ちがないと分かると殆ど追っていなかった。13着程悪い内容ではない。

第68回毎日王冠(GⅡ)

リアルスティール

2人曳き。気合乗り上々。皮膚を薄く見せて馬体スッキリ。中段で折り合いに専念。スローでも前が比較的固まる展開で、そのグループを少し離れた位置で眺めながらの追走。ノビノビ走れる位置でスムーズに走れていた。直線も内から5頭分程の位置に出て来て、そのままほぼ真一文字に伸びて来た。上がり32.8秒は出色。実力馬が復活した格好だが、今日は気分を損なわない様に走れたのが大きい。次走フルゲートでこの手が出来るのかどうか、マークされる立場になると案外脆い気もしないでもないが。

サトノアラジン

気配が地味なのは何時ものことだが、馬体の張りが8分程度で、如何にも休み明け。ゲートも少し悪かったが、後方待機は普段通りの競馬。中段のバラけた位置に居たリアルスティールと比較すれば少し力む場面は有ったが、恐らく早い段階で乗り役はリアルスティールが相手と分かった筈で、目標にして乗られたが、中々その差が最後迄詰まらず、何処迄行っても変わりそうにないクビ差だった。とはいえ、1800mよりは1400mの馬で1kg余分に背負っていたことを考えれば好内容。尤も、2000mでどうかという部分は残る。序にいえば何故か良績は外枠に集中。内枠を引いた時はサッパリのケースも。

グレーターロンドン

2人曳き。前走東京戦とそう変わらず。馬体に張りが有って、気配も良かった。前走より出遅れ度合はマシだったが、出脚がなくて進んで行かず後方から。それでも今日はスローだっただけに序盤に少しでも脚を使わずに済んだのは大きかった筈。ただ、直線向いてからの一瞬の反応が悪く、その間にリアルスティールやサトノアラジンに1馬身程水を開けられてしまったのが痛かった。最後はその1馬身を挽回しているのだが...。前走はそんな雰囲気はなかっただけに休み明けが影響したのだろうが。

ダイワギャグニー

2人曳き。何時ものこととはいえテンション高い。それでも馬体は研ぎ澄まされていた。ソウルスターリングが出負け気味だったことも有り、この馬の出脚が一番速かったが、ハナへ行く気は全くなかった様で無理矢理でも抑えて2番手。この時点で相手をソウルスターリングと決めての競馬。坂下で並び掛けて、ラスト200mで先頭。良く頑張っているといえば良く頑張っているのだが、もう少しソウルスターリングに頑張って欲しかったところだろう。こういうスローの展開で早目先頭に立たされるとどうしても後続にやられてしまう。とはいえ、馬は頑張っている。今年の3歳世代は牡馬が弱いということになっているが、対ソウルスターリングで先着出来たのは一矢報いたともいえる。

ヤングマンパワー

シープスキンノーズバンド。-8kg。元々迫力が有るという馬ではないが、馬体が絞れたのは何より。外枠だったことも有り、ハナへ行く気はなかった様でジワッと好位。基本的には折り合い面に問題のない馬だが、3角手前でウインブライトに外から並び掛けられた際に、連られて動いてしまった。乗り役も妙に積極的で、4角手前から進出。とはいえ、馬装通り、頭が高い馬で東京で上がりの勝負になれば分の悪さが出るのは致し方ないところ。色々条件を考えれば良く頑張っているという見方も出来るだろう。取り敢えず前走新潟戦よりは好内容。

マカヒキ

2人曳き。腹回りに多少緩さが残る。休み明けとしては許容範囲だが、満点ではない。ゲートはこんなモノだと思うのだが、急かして好位。この手は少しでも力むとダメで、更には前に乗っかかりそうになって手綱を引っ張る場面も有った。直線も進路を探している間に外の馬にやられてしまった印象。不完全燃焼という外ない。何度も述べている様にエイシンフラッシュタイプで、今日の敗戦で人気が落ちる様なら更に狙い目ということにはなるが。

ソウルスターリング

2人曳き。オーストラリアンブリンカー。+6kg。数字は増えているが、意外な程細く映った。発汗の跡も有って、戦前から多少怪しい面は有った。ゲートが微妙に悪かったのをカバーするべく急かしたところ、押し出される形でハナへ。1000m通過60秒ジャストのスローに落とし、引っ掛かっている様な雰囲気ではなかったが、少し馬が力んでいるのかチグハグだった。直線も止まっている訳ではないのだろうが、300m辺りから甘くなってしまった。2歳時に同じフランケル産駒のバケモノとして話題となったミスエルテは気性面の問題が解決せず、今春サッパリだったが、この馬も気性面の問題が出て来たか。能力に疑う余地はないのだが...。

第3回サウジアラビアロイヤルカップ(GⅢ)

ダノンプレミアム

前後肢にバンテージ。+6kg。メリハリが利いて垢ぬけた造りだが、少し寸が詰まった体型。マイラーは間違いないところ。一瞬の出脚はハクサンフエロより速かった位だが、戦前の想定通りにハクサンフエロにハナを譲って2番手のイン。隊列が落ち着く迄は少し力んでいたが、1000m58.3秒と流れたことも有り、その後はスムーズ。直線も手応え充分で、ラスト300m程で前のハクサンフエロを捕らえると、あとは独走だった。最後は殆ど遊んでいたが、抜け出す時のトビの高さが本物の相。追い比べになっていれば32秒台だっただろう。距離は2000mで限界だろうが、今日の内容だけなら全てに文句なし。

ステルヴィオ

まだ馬体に若さを残しているが、踏み込みが力強い。集中力も有った。ゲートは五分だったが、7枠の3頭が更に速く壁になり、無理せず後方待機。直線だけの競馬に徹し、ラスト200m辺りから手先の軽い走りでここ迄。このペースで急かしていれば終いが保たなかった可能性も高く、今日はこれで仕方がない。ダノンプレミアムとは枠を逆にしてもう一度戦いたいところ。強いていえばもう少し機動力が欲しい印象は有る。恐らくは距離が延びた方が良さそう。

カーボナード

2人曳き。後肢にバンテージ。-10kg。数字は減ったが、トモに迫力が有る。ただ、出来ればもう少し落ち着いて欲しい。好発も、内の馬が速く、好位直後から。この馬より一段前のグループがゴチャついていただけに、丁度良い位置だったといえるだろう。折り合って、直線も追い出して一瞬だけオッと思わせる脚を見せているのだが、そこで手前が替わってしまい甘くなった。競馬に行けば折り合いが付くとはいえ、出来る限りレース前の消耗をなくしたいところ。馬体減も良い傾向ではない。

テンクウ

2人曳き。シャープな造りで、現時点での完成度が高い。気配も文句なし。直ぐ内のカーボナードが控えたことで、この馬も連れる形となり、好位直後。尤も、道中は少し行きたがっており、これで仕方がなかっただろう。直線向いてもフォーム自体はカーボナードよりしっかりしていたが、最後は似た様な脚勢になった。もうちょっと道中でリラックスして走れる様にならないと。現状だとマイルでも長い。

シュバルツボンバー

2人曳き。+12kg。数字分だけ立派なのだろうが、馬は見栄えがする。ただ、多少気負っていた。出遅れ1馬身不利。しかし、抜群の出脚でカバーして中段よりやや前位の位置。折り合いも付いていた。直線は進路を迷った分も有るが、前がバラけてからもジリジリ伸びていた。末脚の持続性という意味では2〜4着馬より上。ゲートの問題は別にして、今日の内容だけなら2000m以上の方が良いかも。