Sakura Archives

競馬回顧 2020年2回京都

第37回フェブラリーステークス(GⅠ)

モズアスコット

他馬と比較すれば歩様は硬いのだが、これでも良く維持した方だろう。馬体に張りが有って、デキも悪くない。出遅れの常連だった馬が、奇跡の好発。勿論、ハナへ行く訳ではないが、バラけた中段。砂を被るのは全く平気な馬で、これが最大の強みだが、内でしっかり脚を矯めて、直線もインから。ラスト300mで先頭に立つと、あとは独走だった。クリソベリルやゴールドドリーム等、本当の一線級が沙国遠征へ行ったのもいい方に出たとはいえ、単純にこのメンバーなら力が抜けていた。今後も有望だが、歩様が硬いのでアテにし辛い面も有る。今後は芝ダートの二刀流で行く様だが、常に脚元との相談となる。何かの拍子にボロ負けする場面が有れば、そこから巻き返すことは考え辛い。

ケイティブレイブ

後肢にバンテージ。腹回りが弛んで、歩様も硬い。下見はお世辞にも褒められた状態ではなかったが...。ただ、活気だけは有った。これもゲート自体は良かった方だが、芝での出脚がなく、中段やや後方から。ゲートを出たことでバラけたインに潜ることが出来た。基本的にはモズアスコットを追う形で、直線もトビの大きさを生かして、他馬が止まる中で最後迄バテない強みを生かした。前走川崎戦がサッパリということでこちらに参戦して来た様だが、広いコースは向いている。ベストは東京2100mだろうが、如何せん番組がない。昔の様にGⅠは無理としても、GⅡ位の重賞は欲しいところ。この手の馬はチラホラ居る。

サンライズノヴァ

前後肢にバンテージ。+10kg。これも多少腹回りはボテッと映るが、数字は関係なく、元々がそういうタイプ。変に歩様が窮屈でなければ力は出せる馬。ゲートの一完歩目が遅い時の有る馬で、出遅れても先行する時も有るのだが、今日は行く気もなく後方から。これ自体は何時ものことだが、4角で他馬との兼ね合いで無駄に外を回わされ、コーナーで距離を稼いだモズアスコットとは大分水を開けられてしまったが、位置取りの差だけで同じ位の脚は使っている。ただ、この馬の場合は、行かせると味がない。あくまで交流重賞レベルの馬。

ワンダーリーゲル

シープスキンノーズバンド。前後肢にバンテージ。トモに厚みが有って、重厚感の有る造り。ただ、この馬としては気配が地味。どの様にも乗れる馬だが、今日は外枠ということで急かさず後方に近い位置。上手く内に潜ることが出来た。4角を回って直線はケイティブレイブとの併せ馬。ラスト200m位から脚勢が鈍り、最後はサンライズノヴァにも捕まって4着に。マイル適性という意味ではケイティブレイブやサンライズノヴァよりは上ということになるのだろうが、今日はモズアスコットがチギる展開で我慢比べになったのが痛かった。今日、求められた資質が違ったというだけで、GⅠでやれることが分かっただけでも収穫。

タイムフライヤー

2人曳き。前後肢にバンテージ。はち切れんばかりのトモの造り。馬体はこの厩舎らしい雰囲気になって来た。ただ、頭が高いのがマイナス。出たなりで好位から。出脚自体が抜群に速いという訳ではないが、道中の行き振りが良過ぎて、マイルでも掛かり気味。直線も馬の気に任せて早目に動いて一瞬は先頭。流石に最後は踏ん張り切れなかったが、見せ場充分の内容。下見で見せた頭の高さも実戦では気にならず、もう少し丁寧に乗れば馬券圏内有ったかも。今後も面白い存在だが、芝で頭打ちだった馬がこうも簡単に通用してしまうのは今のダートはレベルが低い。

第54回小倉大賞典(GⅢ)

カデナ

前走中山戦もソコソコ出来ていたが、今日も変わらず悪くなさそう。昨夏に述べた様に、歩様に硬さがないのが何より。ゲートが悪いのは何時ものことで後方のインからジックリと。外枠からランスオブプラーナが逃げたことで結構流れた上に、ローカル重賞らしいマクり合戦。4角迄我慢して、直線だけ外へ出して突き抜けた。過去にも小回りを追い込む競馬で良績を残しており、条件が向いたとことも有るが、何より今日は展開がドンピシャだった。展開には注文が付くが、今後もGⅢなら展開一つ。

ドゥオーモ

前後肢にバンテージ。-10kg。特に細い印象はなく、これはこれで問題ない筈だが、今日は歩様が硬い。アオり気味に出て、出脚が鈍り、後方から。ただ、軽ハンデということも有って、向正面で外を進出。3角では好位に付けていた。カデナとは決め手が違い、先頭に立つ前に交わされていたが、積極的に乗られた割には直線も良く踏ん張っていた。前々走、前走も行き振りが良くて途中で動く競馬だったが、この競馬が3回連続で出来るなら余程小倉が合っているのだろう。

ジナンボー

2人曳き。+20kg。太いのは確かだが、馬体に張りが有って、幅も出た。つまり、成長分が有って、デキ自体は悪くない。ただ、今日は何時も以上に煩い。ランスオブプラーナは外から一瞬でハナへ行ったが、この馬も楽々好位を確保。決め手がないだけに、、基本的には早目早目。外からアンノートルがマクりに来なければもっと楽が出来たが、小回り重賞で簡単に行く筈もなく、これで仕方がないところ。力そのものは充分通用。

レイホーロマンス

-4kg。見た目はそうでもないが、これ以上は減って欲しくないところ。ただ、使い込んでいる割に歩様は維持出来ている。例に依ってお世辞にも出脚は速いほうではなく、押して中段のイン。基本的にはカデナの一歩前から。直線も上手く外へ持ち出せたが、前走程の脚は使えず。前走は前走でディスタンス戦の直後ということで序盤の行き振りが悪かったが、今日は今日でもう少し距離が有った方がいい様な内容。学習能力が高いともいえるが、腰を据えてレースを使った方が良さそう。

アウトライアーズ

右側だけ遮眼革。シープスキンノーズバンド。+8kg。特に遮眼革は今回が初めてとのことだが、集中して歩けていた。数字は増えていたが、馬体の張りも有った。出遅れ1馬身不利。そのまま後方から。勝負どころでも外に馬が居て動けず、結果的に直線だけの競馬。一瞬だけ伸びているが、もうちょっと差を詰めていても良かった。これだとどれだけ恵まれても重賞連対迄はなさそう。

ヴェロックス

2人曳き。前後肢にバンテージ。馬はこのメンバーなら断然。馬体の張りも有って、デキ自体は良さそうだったが、今日はイレ込みがキツい。好発。人気を背負っているだけに、控えることはせず、そのまま行かせて好位から。道中も内に入れる場面はなく、基本的には自信を持って乗られたが、如何せん回り脚が甘くて勝負どころで包まれてしまい、直線も伸びることなく終わってしまった。小回りが向かないとはいえ、案外の内容。もっとメリハリを付けて乗らないとダメなのか...。

第70回ダイヤモンドステークス(GⅢ)

ミライヘノツバサ

馬体を悪く見せる様なことは元々なかった。ただ、何時になく小走りが入って、テンションは高かった。ゲートは五分以上に出ているが、大外枠故に無理せず中段から。出来る限り、コースロスを避けて乗られ、1周目のホームで内ラチから2頭分の位置。逃げたロサグラウカのペースにムラが有り、ところどころで好位グループが追い付いてしまい、走り辛そうにしていたが、結果的にそれらから少し間隔を開けた位置で乗れたのが良かった。その上で、内に居たことで馬群が密集した2周目4角で距離を稼ぎ、直線はフラフラだったが、一杯一杯メイショウテンゲンとの併せ馬を凌ぎ切った。スタミナを持っていることは間違いないが、あまりに上手く行き過ぎた。上がり3F38.1秒も掛かる展開だったことも有り、評価は何とも。

メイショウテンゲン

シープスキンノーズバンド。芦毛でこの時期だが、皮膚を薄く見せる。馬体に迫力はないが、歩様にも力強さが有って、距離適性は高そう。出遅れ1馬身不利。そのまま後方から。ただ、出遅れたことでこちらは最初から内に潜れていた。前述した様に、今日は後方でジックリ乗った方が良い展開で、これで良かったが、2周目4角でミライヘノツバサが内を突けたのに対し、外を回さざるを得なかったのが痛かった。負けたのは首の上げ下げで、最後迄良く頑張っている。ディープインパクト産駒だが、母メイショウベルーガが道悪巧者。スタミナも有って、良馬場発表ながら今の時計が掛かる馬場が向いた。

オセアグレイト

前肢にバンテージ。スラっとした造りで、メイショウテンゲンとは違うタイプだが、如何にも長距離向き。手先がムチの様に撓る感じで、柔軟性が特筆モノ。ゲートを五分に出て、枠の利も手伝って好位のイン。前述した様に、ペースが一定ではない為、ところどころで引っ張る場面が有った。直線入口で先頭に立つところ迄は見せ場を造ったが、1,2着馬とは5馬身差離され、最後は3着争いを凌ぐのがやっとだった。ただ、今日は競馬が上手く行かなかっただけで、器用さは示したといえそう。力もこのレベルが相手なら充分足りる。

レノヴァール

前後肢にバンテージ。530kgの馬だが、あまり重苦しさを感じさせない。ひと昔前に東京2500mで強かったタイプの馬。好発も、好位を取りに行った馬が多い中で、そこに抵抗せず好位馬群の直後から。折り合いも付いて、今日の展開なら絶好の形だったが、2周目4角で我慢せず外を進出したことで早仕掛けになり、矯めていた馬にやられてしまった。ただ、矯めていたミライヘノツバサが直線でフラフラしていた関係で、一瞬追えなくなる場面が有った。坂でモタついたこの馬も悪いのだが、スムーズなら3着有っただろう。ちょっと勿体ない競馬に。

タイセイトレイル

-8kg。一時期、デキ落ち感も有ったが、馬体を絞って大分持ち直して来た。歩様にもスムーズさが戻って来た。時々出遅れる馬だが、今日はゲート五分。ただ、そこからの進みが悪く、結果的にミライヘノツバサとメイショウテンゲンの間辺りから。今日の展開ならこれはこれで良かったが、いざ追ってからが案外。詰めの甘いタイプでは有るが、もうちょっと行き振りが戻らないことには。

第55回京都牝馬ステークス(GⅢ)

サウンドキアラ

今日は首を上下に振る場面が目立ち、もう少し落ち着いて欲しいところ。相変わらず馬体に張りが有って、デキ自体は良好。この時期にしては毛ヅヤも良かった。ゲートは五分。出脚も有る馬だが、大外枠ということで無理せず内の出方を窺いながら好位から。今日の馬場ならコースロスよりも、いいところを選んだ方が得策で、坂の下りの勢いが抜群に良かったが、深追いを避けて抑え気味に回り、直線入口でエンジンが掛かると一気に突き抜けた。今日は自信を持って小細工せずに強気に乗ったのが良い方に出た。この内容ならGⅠでもソコソコやれる筈なのだが、坂が全く上れていない。東京位なら何とかなるとは思うが...。

プールヴィル

+24kg。3ヶ月振りだが、見た目には成長分。背丈が低いだけで、幅が有って、元々いい馬だったが、更に良くなった。ゲートも決めたが、出脚も速かったが、一歩引いて好位から。3角ではサウンドキアラの直ぐ内に居た。ただ、こちらは外へ持ち出す様なことはせず、枠なりに内を回って来た。コーナーで距離を稼いだ分で、ラスト300mで先頭。そこから少しずつ馬場のいい外へ寄せて行ったが、サウンドキアラの決め手が一枚上だった。今日の馬場で外の馬にやられるのは仕方がないところ。内目を走ってもそれなりに伸びていたのがパワーアップの証。

メイショウグロッケ

前肢にバンテージ。+8kg。今日は馬に集中力が有って、気配が良かった。トモに張りも有って、寸の詰まった短距離馬といった風情。メイショウショウブに叩かれる形となったが、行ける限り前へ行ってサウンドキアラやプールヴィルの直後から。上手く脚が矯められた。決め手ではサウンドキアラに敵わなかったが、メイショウサムソン産駒らしくこの馬場で渋太く脚を伸ばして3着は確保。未勝利以来の1400mだったが、距離は問題なさそう。時計勝負だと明らかに天井が有るが、時計さえ掛かってくれれば堅実。

アマルフィコースト

前後肢にバンテージ。今日のメンバーなら迫力上位。毛ヅヤは一息だが、歩様に硬さはなく、それでいて力強い。好発も、メイショウショウブが主張し、更に外からモアナが掛かって来て、一旦控える形。これはこれで良かったが、坂の下りでサウンドキアラに被されそうになり、一瞬後手に回ったのが痛かった。3着メイショウグロッケとはハナ差だけに勿体ない内容。ただ、重馬場で走ったのは今回が初めてだが、特に苦にしている様子はなかった。道悪はこなせる。

ビーチサンバ

後肢にバンテージ。多少毛ヅヤが怪しい以外は問題なさそう。気配も悪くなく、馬体もしっかりしていたが、短距離馬らしい筋骨隆々という感じではない。出ッパも悪かったが、出脚も甘く後方から。道中も流れに乗れず、全く進んで行かなかったが、直線向いて漸くエンジンが掛かるとここ迄。クラシックを目標にして来ただけに、1400mは忙しかった印象。ただ、今日の経験でまた変わって来る筈。力は見せた5着。

第54回共同通信杯(トキノミノル記念)(GⅢ)

ダーリントンホール

2人曳き。前走も少し緩く映ったが、今日も絞れず、腹回りに締まりがない。歩様も多少非力。背丈が高く、馬のスケール自体は大きいのだが。ゲートは五分程度。直後にフィリオアレグロと接触したことも有って、エキサイトしそうになっていたが、何とか宥めて好位から。今日はこの位置で折り合いを付けたことが大きかった。前を壁にして折り合いを付けていた関係で自然と内を回り、直線も内からビターエンダーに併せる形。一瞬は突き抜けそうで、相手のビターエンダーも相当渋太かったが、最後にハナ差競り落とした。下見はまだ成長途上を感じさせるのだが、相対的にパワー上位だったか。ただ、このままでは上で通用しない。

ビターエンダー

前肢にバンテージ。-10kg。数字は絞れたと見ていい。見た目も馬体が締まって来た。歩様もキビキビ。水平首で気配も上々。今日はゲート五分。出脚は相当速そうで、最初から抑え気味になっているのに、押し出される形でハナへ。内目の悪い馬場を嫌って、コーナーも含めて少し内を開けて走っていた。1000m通過63.2秒とスローに落とせたが、当然ながら至近距離で後続も付いて来るのは致し方ないところ。直線入口で一瞬突き放してはいるものの、内から併せて来たダーリントンホールとほぼラスト2Fから一騎打ちとなり、僅かに競り負けた。ただ、後続に4馬身差付けていることも有り、馬も鞍上も責められないところ。この展開は案外キツい形で、間違いなく道悪適性は高い。

フィリオアレグロ

+18kg。ちょっと太いだろうが、緩んだ印象もなく、成長分も有りそう。手先のバネも有って、馬自体は悪くない。こちらもダーリントンホールと接触した影響が有った様で序盤は掛かり気味だった。3角辺りからは馬も納得して走っていた様に見えたが、今度は逆に勝負どころでの手応えが悪く、直線も伸びあぐねた。馬は良いが、まだ競馬が分かっていない。一旦放牧に出してダービー目標に切り替える様だが、気性面が解決しないことには。

マイラプソディ

2人曳き。前後肢にバンテージ。今日は落ち着いていた。馬も大分締まって来て、このメンバーなら上位の造り。歩様も前走京都戦より良くなっている。行こうと思えば行ける出脚は有ったが、行く気なく後方に近い位置。ただ、やはり勝負どころの反応が悪く、スローになると余計にキツい。前の馬とは水を開けられたが、最後の最後に伸びており、能力の一端は見せている。馬は間違いなく世代上位で、反応の悪ささえ直ればGⅠ級といえるのだが...。

ココロノトウダイ

シープスキンノーズバンド。後肢にバンテージ。+12kg。一息入っての馬体増だが、緩んだところはなく、単純に成長分。毛ヅヤも悪くなさそうだが、歩様は見た目の割に力がない。好発も、ハナへだけは行く気がなかった様で好位に控える形。道中は少し行きたがっていたが、フィリオアレグロ同様、勝負どころからの反応が悪く、雪崩込むのがやっと。エイシンフラッシュ産駒で良馬場の方が良いということも有るだろうが、まだ重賞では壁が有る。

第113回農林水産省賞典京都記念(GⅡ)

クロノジェネシス

+12kg。また馬体増。昨春東京戦時と比較して、28kg増だが、全部実になっている。歩様も力強くなった。出脚に余裕は有ったが、急かすことなく、アメリカズカップが逃げ、ステイフーリッシュが続いて、その3番手から。馬場は相当悪い筈だが、むしろ掛かる位の行き振りだった。鞍上も余程手応えに自信が有ったのか、坂は大事に下って直線入口でステイフーリッシュを交わしてからは独走だった。馬が成長したことでパワーが付いて、馬場を苦にしなくなっている。バゴ産駒は距離適性の割に成長力のない馬が多かったが、異例といえる存在。脚の外向も関係なパフォーマンスで、極端な時計勝負にならない限りは牡馬相手でも競馬になるだろうが、今日はゲート内で潜ろうとする場面も有った。出遅れの危険は有りそう。

カレンブーケドール

シープスキンノーズバンド。多少毛ヅヤに怪しさは有るが、増減なしの数字通り、キッチリ出来ていた。相変わらず柔軟性の塊の様な馬。出ッパの際にヨレて出脚が鈍ったことも有るが、最初からの決め打ちで外へ出したかった様で、一旦後方に下げてから馬場の良い外へ。こちらはところどころで馬場を気にする素振りが有った。坂の下りで外を回って進出、直線入口でクロノジェネシスの直後だったが、最後も下を気にして思い切り走れず、差を広げられた。今日は地力で掴んだ2着。ディープインパクト産駒だけに道悪は不向きで、良く頑張った方。これも本当に強くなった。悪条件だからこそ底力が表れる。

ステイフーリッシュ

2人曳き。+8kg。見た目にはそれ程太くない。チャカつくのは毎度。歩様もこの馬としてはしっかりしている。ゲートは微妙に悪かったが、包まれて内を通らされるのを嫌った様で、出して行って2番手。1角手前で一瞬だけ前を追い掛けそうになっていたが、あとは折り合いが付いた。コーナーでは可能な限り内を回り、それ以外は馬場のいいところを選んでと、鞍上も出来る限りのことをしているのだが、牝馬の上位2頭には全く歯が立たなかった。昨春もそうだが、相手強化されると借りて来た猫の様に弱い。現状ではGⅢ限定。

ノーブルマーズ

シープスキンノーズバンド。気配に乏しいのは何時ものこと。トモの甘いのも今更だが、今日は腹回りがボテッと映る。年齢分の衰えは有りそう。出たなりで急かすことなく中段から。丁度クロノジェネシスとカレンブーケドールの間から。折り合いは全く問題なく、馬場も元々得意としている馬で、気にしている様子もなかったが、坂の下りでの脚がカレンブーケドールとは違っており、直線入口で交わされていた。あとは雪崩込んだ様な形だが、あそこ迄行けばステイフーリッシュは交わしたかったところ。下見通り、ちょっと衰えが来ている。

アルメリアブルーム

頭が高く物見をしていた。その分、歩様にも力強さを欠く。440kgの割に、腹回りも少し緩く映る。とどのつまり、今日はいいところがない。あまり行く気はなく中段やや後方の内目。基本的にはノーブルマーズやカレンブーケドールに近い位置から。前走小倉戦もそうだったが、あまり道悪は苦にしない馬で、最後迄ジワジワ伸びていた。デキ落ち感も有ったが、牡馬相手だとこんなモノか。ただ、これで繁殖とのこと。重賞は勝てなかったが、賞金を咥えて無事に上がれたのは何より。

第55回デイリー杯クイーンカップ(GⅢ)

ミヤマザクラ

単純に馬の完成度が高い。馬体は寸が詰まってマイラー気味だが、歩様がキビキビしていて、手先のスナップも利いている。気配も上々。ゲート五分。少し出し気味に好位のイン。コントロールは利いているが、マイルでも行き振りは良過ぎる位。3角で2番手に上がって、更に逃げていたインザムービーが暴走して、自力で捕まえに行くキツい展開になってしまったが、ラスト200mで先頭に立って内外からの猛追を凌ぎ切った。本当はもっとメリハリを付けて乗るべきで、今日は馬に負荷を掛けてしまったが、3歳牝馬でこれが出来れば相当強い。距離適性を別にして、単純能力だけなら、現世代でレシステンシアに次ぐ評価は出来る。あとは今日のダメージと、GⅠの雰囲気なった際の折り合い面。これ以上、テンションは上がらないに越したことはない。

マジックキャッスル

シープスキンノーズバンド。ミヤマザクラ以上に寸が詰まった造りで、完全なスプリンター。トモも迫力満点。ただ、今日はちょっと歩様が硬い。ルナシオン程ではないが、半馬身程出負けして、後方から。ただ、少しズブい位の行き振り。直線大外へ持ち出し、エンジンの掛かり自体は早かったが、ラスト250mで左手前になって内にモタれ気味。そこから鞍上がステッキを持ち替え、上手く立て直してここ迄。今日の内容だけだともう1F有っても良い。本質があくまでスプリンターという評価は変わらないが、陣営が距離を保たせる様に上手く調整しているのだろう。今後も脚の使いどころひとつ。

セイウンヴィーナス

シープスキンノーズバンド。前肢にバンテージ。毛ヅヤはこの時期で仕方がないとはいえ、馬はスカッと見せて、止め絵は悪くない。もう少ししっかり踏めると理想的だが、今日のメンバーは他馬も似た様なモノ。ゲートを決めてジワッと好位。前走中山戦は初の右回りということも有ってか、全く付いて行けなかったが、今日も他馬と比較すれば手応えは渋かったが、それでもこの馬としては流れに乗れた方。直線向いて追い出すと、馬装通り頭が上がってしまうのだが、その割には渋太く最後迄脚を使っていた。如何に道中流れに乗れるかがポイント。東京なら手堅いということはいえそうだが。

アカノニジュウイチ

前肢にバンテージ。+10kg。元々が細身の馬で、馬体増は単純に好感。ただ、踏み込みが浅く、手先だけで歩いている。ゲートも若干悪かったが、折り合い重視で最後方から。只管内ラチ沿いを通って、直線もインから。勢いの付いたところでバテたインザムービーを交わす羽目になり、ここで一瞬逡巡したが、あとはスムーズに捌いて伸びて来た。脚は見せたが、評価のし辛い内容。行かせてこの脚が使えるとは思えず、500万で人気になった時が危険。

シャンドフルール

シャープな造りだが、トモもしっかり張っていて、馬自体は悪くない。ただ、結構発汗しており、イレ込みがキツい。ゲートは決めたが、今日は最初から行く気がなく好位待機。道中の折り合いは全く問題はなかったが、いざ追ってからが全く伸びなかった。どうも33秒台の脚がなさそう。トビは大きいが、回転数が足らないタイプ。今は色々試している状況だろうが、結果的にはこれなら自分でペースを造った方が良かった。

第70回東京新聞杯(GⅢ)

プリモシーン

2人曳き。+8kg。走らない時でも見た目はずっと悪くない。馬自体は単純に上位。むしろ今日は何時も以上にテンションが高かった。ゲートは若干分が悪かったが、少し出して好位のイン。下見のテンションが高かった割には、折り合いも付いていた。直線は追い出しを待つ余裕も有り、外へ持ち出されると計った様に差し切った。今日の馬場で外へ持ち出せるのも余程自信がないと出来ない芸当で、56kgだったことも有り、単純に強い。昨秋の不振からは脱出したといえそうだが、走らない時は走らない馬で、アテにはし辛い。

シャドウディーヴァ

前肢にバンテージ。この時期の牝馬としては毛ヅヤが維持出来ている。馬体もスカッと見せて、歩様も大分力強くなった。ゲートは五分に出たが、中段の外で折り合いに専念。3角からインへ潜って距離を稼ぎ、直線も内から。良く伸びているが、追っている最中に頭が上がりそうになっており、そこを鞍上が上手く御していた点も大きい。コース取りも含めて最高に乗れた。これもアテにはし辛い面が有りそうで、次走人気になる様なら嫌ってこそ。特に手替わりになればもっと危険度は増す。

クリノガウディー

+8kg。今日は他にもテンション高い馬が多いのだが、この馬も同様。馬体も500kg近くなってくると少し厚ぼったく見える。基本的に出る馬で今日も好発。1馬身近く抜けていたが、折り合いに専念して好位。1F程で上手く馬群が切れてインへ潜り込み、プリモシーンの一歩前で運べた。折り合いも問題なく最高の形で、内から一旦は抜け切っているのだが、最後に2頭。結果的に上手く行き過ぎたというべきか、仕掛けが早かったかも。とはいえ、多少太い分も有り、馬も鞍上も責められないところ。このメンバーならチャンスは充分。

サトノアーサー

+10kg。落ち着いていて気配は良かったが、数字分だけ太く映る。全体に緩慢。脚の運び自体はスムーズだが。出脚を生かして最初はハナ争いに首を突っ込んでいたが、1Fで引いて好位から。 折り合い問題なく付く馬で、スムーズだったが、33秒前半の脚がなく、最後は決め手負けした様な格好。トビが大きく回転数が足らないタイプで、上がりの勝負になるとキツい。逆にトビが大きくても道悪を苦にしないのはせめてもの救いで、狙うなら雨。

クルーガー

前後肢にバンテージ。海外遠征帰りだが、ちゃんと出来ていた。多少腹袋が立派に見えるのは体型。皮膚を薄く見せて毛ヅヤも冴えていた。出脚は一番速かった位だが、内からモルフェオルフェが主張して2番手から。悪くない形だったが、4角でモルフェオルフェが外へモタれて暴走気味になり、前と距離が離れたことで自力で捕まえに行く形となり、最後はこれも決め手負け。また海外遠征に出る様だが、8歳馬でも有り、これも時計が掛かってくれた方が良さそう。

第60回きさらぎ賞(NHK賞)(GⅢ)

コルテジア

前肢にバンテージ。前走とほぼ変わらず。コンパクトに纏まった造りだが、トモの送りに力強さがない。手先だけで歩いている。ゲートは五分程度。出脚も抜群に速いという訳ではないが、少し出して好位から。1F程で既に外へ持ち出しており、基本的には馬場の良いところを選んでの追走。先に動いたストーンリッジを目標に、4角はそのストーンリッジが外へ持ち出して、更に外を回される形となったが、ジワジワ伸びて捕まえた。前走内容から重賞で通用するとはとても思えなかったが、この馬場でベストの位置を選択して流れに乗れたのが好走の要因。かつてのサムソンビッグではないが、このレースは年に依ってレベル差がまちまち。今年は明らかにハズレの年。

ストーンリッジ

+6kg。熊の様な、全体に馬体がボテッとした印象。歩様にも力強さを欠く。要は鍛錬不足の印象。今日はゲート五分。スタート直後から引っ掛かったというより、内にモタれてコントロール不能に近い状態だったが、2F程で落ち着いてそこからはスムーズ。ただ、坂の下りで少し行きたがって、結果的にコルテジアの良い目標になってしまった。逆にいえば色々子供だった割には最後食い下がっているともいえる。馬体も鍛錬の余地を相当残しており、恐らくクラシックには間に合わないだろうが、まだこれからの馬。

アルジャンナ

2人曳き。馬体は脚長で如何にもディープインパクト産駒という印象。緩んだ印象はなかったが、もうチョイしっかり踏めると理想的。眼が血走っており、イレ込みもマイナス。ゲートをソロッと出して折り合いに専念しようとしていたが、馬を前に置いても結構力んでいた。3角手前で漸く宥めたが、今度は追ってからの反応が鈍く、エンジンが掛かる迄に付いてしまった差が詰め切れなかった。最後はそれなり詰めており、トビも中々ダイナミックで化ける要素は持っているが、気性面の課題を解決しないことには。

ギベルティ

2人曳き。前肢にバンテージ。後肢は蹄を覆う様なプロテクター。数字からして抜けているが、馬振りはこのメンバーなら断然。歩様や気配も悪くなかった。内の出方だけ確認して、出脚を生かしてスッとハナへ。この馬場を考慮して1000m通過62.0秒とスローに落とせたが、ストーンリッジに早目に来られて、最後は決め手負けした様な格好。馬場適性自体は有る筈だが、スローに落とし過ぎて他馬が接近していたのがマズかった。このペースでも内ラチへ寄せられていればまた違っていたが、この馬場ではそれも叶わず。

トゥルーヴィル

全体に見た目が子供。馬体はまだまだ成長の余地を残すが、その割に歩様はキビキビ。馬に集中力が有って、気配も良かった。アオり気味に出て、出脚が鈍り、中段やや後方から。道中は序盤だけ少し行きたがっていたが、そこからはスムーズ。ただ、坂の下りで馬場に脚を取られたか、バランスを崩す場面が有り、最後迄諦めずに走っているものの、前を交わせるだけの脚はなかった。コルテジアの様に、外へ持ち出すタイミングが有れば話は違っただろうが...。

第34回根岸ステークス(GⅢ)

モズアスコット

ちょっと間隔を開けたことで歩様の硬さは何時もよりマシ。勿論、馬体は元々見栄えする馬で、このメンバーでも上位。出遅れ1馬身不利。ただ、芝だとそこ迄行き振りの良い馬ではない筈だが、妙にスイスイ進んで行って、3角では中段に取り付いていた。あまりに手応えが有るので、4角も自信タップリに外へ持ち出し、コパノキッキングを難なく捕まえた。圧勝。歩様からダートが向いているのは明らかだったが、かつてのトゥザヴィクトリーの様な先行タイプは別にして、大抵のケースで差し馬の初戦は失敗するのが常。余程、適性が有るのだろう。マイルも問題はなく、次走も有望。

コパノキッキング

2人曳き。後肢にバンテージ。馬体はこれで良いが、ちょっと歩様が落ちて来たのと、テンションが何時も以上に高い。好発。出脚も以前と比べれば強化されているが、今日は競られてしまった。特に外からハナへ行ったドリームキラリを追い掛けてしまい、直線坂下で先頭と形は造ったが、坂を上って踏ん張る脚がなかった。先行する様になって、正確には藤田騎手が鞍上になってから競られる場面はなかったが、乗り替わりになるとマークが厳しくなるのは仕方がないところ。再度、鞍上を藤田騎手に戻して、1200mの大井戦が目標とのことだが、自分のペースで行けさえすれば何とかなる筈。

スマートアヴァロン

前肢にバンテージ。-4kg。8最馬としては良く出来ているともいえるのだが、多少腹回りがボテッと映る。その割に歩様はスムーズだが。ゲートは五分だったが、他に速い馬が居て、何時も通り一旦砂を被らない位置迄下げる形。これも直線は外へ持ち出し、流石にモズアスコットの後ろからでは届かないのは仕方がないところだが、左手前のままだった割には良く伸びていた。1200mだと突っ込み切れないが、1400mだとコースを問わず堅実。

ダノンフェイス

シープスキンノーズバンド。前後肢にバンテージ。馬体は迫力満点。腹袋は目立つが、緩んだところはない。ただ、歩様に力強さが有る反面、少し硬い。ゲートは五分か若干分が悪い程度。外枠でも有る程度付いて行って中段から。行き振りも意外と良かったが、結果的にメリハリのない競馬になってしまった感も有り、直線は決め手の有る馬にやられてしまった。ただ、それで4着なら良く頑張っているともいえる。この辺りのメンバーならチャンスは充分。

ワイドファラオ

前後肢にバンテージ。+6kg。小走りは入っていたが、何とか堪えている様にも見えた。脚長の馬で、見た目も中々。コパノキッキングを少しアオっておいた後に引いて4番手から。流れには乗れていた様に見えたが、いざ追ってコパノキッキングが捕まえる脚がなかった。58kgが背負い切れていない印象。斤量が苦しいならもっと極端な競馬を考えるべき。

第25回シルクロードステークス(GⅢ)

アウィルアウェイ

前後肢にバンテージ。3歳時は華奢な印象も有った馬だが、大分ドッシリ見せる様になって来た。テンションは高いが、スプリント戦だけにその点も許容範囲。出遅れ1馬身不利。押して直ぐ馬群には取り付いていた。道中は取れた位置で只管我慢。仕掛けも他馬と比較して少し遅らせ気味にも見えたが、ダイメイプリンセスとジョイフルの間を脚でコジ開け、一気に突き抜けた。下見通り、馬も成長していることは確かだが、馬が頑張ったというより、今日の馬場で更に好騎乗がハマったという印象。ジョイフル等、色気を持って早仕掛けが裏目に出た馬が多かったが、我慢が生きた。今の低レベルスプリント戦なら次走も圏内だが、脚の使いどころは常に難しいタイプ。

エイティーンガール

寸が詰まった体型で、明らかに短距離向き。数字はないが、その分、トモも張っている様に見えた。歩様もしっかり踏めていた。ゲートは五分に出て、出脚も付いて行ける程度には有りそうだったが、行く気なく後方から。4角でズラッと前が壁になり、アウィルアウェイとは違った進路が有れば結果も変わっただろうが、単なる後追いになってしまった。最後はクビ差迄追い詰めていただけに惜しい。ハンデ戦とはいえ、このクラスでもやれるだけの脚を見せたことは収穫だが、過去の戦績から1分08秒前半の決着になると厳しい面も。今後は時計にどれだけ対応出来るかが鍵となる。

ナランフレグ

活気充分。横から見る分には、480kgも有る様に見えない馬だが、つまりはそれだけ幅が有る。毛ヅヤも良かった。出遅れ半馬身不利。道中の手応えは決して良い方ではなく、3角から追走に汲々だったが、直線で大外に持ち出されるとエンジンが掛かってここ迄。直線で手前が替わる迄に少し時間が掛かったが、左手前になってからは滞空時間が長く、飛距離の有りそうなトビだった。左回りに良績集中している馬だが、左右の問題というよりは、直線の長いコースをノビノビ走らせると能力を発揮してくれるタイプ。1200mだと少し忙しい印象も有り、中京1400m辺りに出て来た時が狙い目に。

モズスーパーフレア

-6kg。この時期の牝馬にしては毛ヅヤは維持出来ている。歩様に硬さもなく、馬体も数字分だけスッキリした程度で、迫力充分。ゲート自体は他にも速い馬が居たが、例に依って出脚がケタ違いに速く、一瞬でハナへ。ペース云々よりは絡まれない方を優先して有る程度飛ばし、600m通過は33.9秒。ただ、今日の馬場でセイウンコウセイを突き放す脚がなく、ラスト1Fで脚が上がって4着止まり。今日はこれで仕方がないところ。次走の中京も中々先行馬には楽をさせてくれないプラットフォームだが、下手に抑えていくと、今後出脚が鈍って来る危険も有り、これはこれで次走に繋がる競馬。

セイウンコウセイ

+12kg。元々これ位の数字で走っている馬で、決して太い印象はないが、緩いのは確か。歩様も何時もより硬い。好発。徹底先行タイプがモズスーパーフレア程度だったことも有るが、58kgの割には出脚も有って楽々2番手。道中の手応えはしっかりしており、直線で手前を替えた際に反応が有って一瞬はモズスーパーフレアを捕まえる様な気配だったが、これもラスト150mでフォームがバラバラになって脚が上がった。ただ、脚が上がってからもモズスーパーフレアには迫っており、中々渋太い。58kgを背負っていたことも考慮すれば、少なくとも衰えがないということはいえる。