Sakura Archives

競馬回顧 2022年3回阪神

第63回宝塚記念(GⅠ)

タイトルホルダー

前肢にバンテージ。良くも悪くも気配に乏しいのは前走同様。馬体も大きく変わった雰囲気はない。好発。ただ、パンサラッサと喧嘩するつもりは最初からなかった様で、押して内の馬だけ叩いて、あとは2番手で押さえる形。1角でパンサラッサに行かせたた際に、待っていた程。ただ、行きたがるのを抑えて馬と喧嘩するよりはと、パンサラッサの逃げにはある程度付いて行って、この馬の位置で1000m通過58秒前後。普段ならここから更に突き放す筈のパンサラッサに対し、むしろ4角で並び掛けており、坂下で抜け切るとあとは独走だった。スタミナを生かせる展開になったことが最大の勝因だが、出脚がそこ迄速くないだけにゲートを決めたのも大きかった。その点で出脚の心配がない仏国遠征は向くということはいえる。

ヒシイグアス

-4kg。数字上はもうひと絞り有ってもいいのだが、緩んだところが一切なく、はち切れんばかりの馬体。単純にデキが良かった。気配も上々。これも好発。出脚に余裕は有ったが、パンサラッサに付いて来た外枠の馬が多く、それらには抵抗せず、中段のイン。内目はそれなりに悪いのだが、今日のペースだとコースロスなく回って来ないと苦しいところ。セコい競馬が出来たのが大きかった。ただ、半数以上の馬が追走すらマトモに出来ておらず、この馬自身もまだ重目残りだった中で、このペースでしっかり流れに乗れたのは鞍上の技術面も大きい。

デアリングタクト

前後肢にバンテージ。-6kg。1回使って馬体に張りが出た。歩様も悪くなく、この馬としては落ち着いていた。満点ではないが、明らかに前走東京戦以上。ゲートはアオり気味だったが、マイル戦の後だった影響で出脚が有った方。中段やや後方から。似た様な位置に居たエフフォーリアと違い、3角から上がって行ける脚が有った。行くところがなかったとはいえ、今日の展開で外を回したことは決して得策ではなかったが、それでも最後迄伸びて3着浮上。昨年の主力が挙って引退と、レベル低下は明らかな状況で完全復活とは一概にいい切れないのだが、以前より首を使える様になっており、馬は変わって来た。現時点で秋の目標は未定だが、何処でもソコソコの競馬にはなる筈。

ディープボンド

前後肢にバンテージ。相変わらず馬体は充実。デキに関してケチを付けるところはない。バネを感じさせる歩様も変わらず。ゲートは少し分がいい程度だったが、スタート直後から只管押して好位の外。意外と流れには乗れていた。鞍上の手は真っ先に動いていたが、勝負どころでの手応えが悪いのは他馬も同様で、何とかタイトルホルダーに食らい付いて行ったが、流石に直線は苦しくなった。2,3着を取りに行くなら違った形が有っただろうが、何よりタイトルが欲しい馬で、今日は何が何でも勝ちに行く競馬。これは仕方がない。

マイネルファンロン

-4kg。体重のベストはこんなモノ。腹回りはスッキリしているが、トモに厚みが有って、見栄えはする。踏み込みもしっかりしていた。ゲートは若干分が悪かったが、上手く立て直して中段から。馬群の外に居て、内の馬を閉じ込めるイメージで乗られていた。勝負どころからはティープボンドに付いて行って、坂下迄は食らい付いていたが、そこからが苦しくなった。一線級相手だと力量差は有るが、GⅡ級は充分。

エフフォーリア

遮眼革。シープスキンノーズバンド。前後肢にバンテージ。少し歩様が硬い気もしないでもないが、馬体の張りは戻って来た。前走程ではないにせよ、今日もゲートが甘く、他馬に進路を潰されてしまい、中段やや後方から。その前走と比較すればまだマシだが、今日も終始行き振りが一息。坂を上った辺りでやっとエンジンが掛かり、最後はマイネルファンロンに迫る脚が有った。一応は復調のキッカケを掴んだ形。地元戦となる秋は巻き返しの期待が掛かるが、古馬になってゲートが出なくなっている点は気掛かり。

パンサラッサ

2人曳き。少し硬い面が有るのは何時ものこと。寸が詰まって、体型的に長いところが向く印象ではないが、これも何時ものこと。ゲートをヨレながら出て、危うく両サイドから挟まれそうになっていたが、無理矢理押して1角でハナ。前述した様にタイトルホルダーに結構付いて来られ、何時もの大きく突き放す形に持ち込めなかった。ただ、4角で既に並ばれていた状況で、バタッとは止まっていない。一桁着順なら良く踏ん張った方だろう。ゲートさえもう少しマシになればGⅠでも勝てる筈。

アリーヴォ

前走と比較して落ち着いていたのが何より。迫力の有るタイプではなく、馬はこれでいいが、歩様はもう少し柔らか味が欲しいところ。ゲートも微妙に悪かったが、鞍上に行く気がなく最後方から。今日のペースならこれはこれでいいが、行き振りが悪く、鞍上が工夫して馬場の内外を選んでも反応せず、最後迄後方ままだった。ペースが合わなかったのか、馬場が合わなかったのかは良く分からないところだが、何れにしても競馬にならず。

第27回ユニコーンステークス(GⅢ)

ペイシャエス

前後肢にバンテージ。チャカつくのは毎度だが、今日はこれでも発汗がマシ。馬体をドッシリ見せていた点も好印象。ゲートは五分。元々が出脚は速い方だが、大して急かさずとも楽々好位グループの一角は確保。揉まれてはいないとはいえ、砂はそれなりに被りながらも、道中はスムーズに運べていた。4角の手応えも抜群で、あとは何処を割るかだけといった雰囲気だったが、かなり待たされながらも脚で狭いところをコジ開け、両サイドの猛追を凌ぎ切った。今日は着差以上に強い内容。前走がダラしなかったが、例年の水準級は有る。このレースの勝ち馬は出世した馬も多い一方、レース内容は良くてもその後が案外というケースも居て、過信も避けたいところ。

セキフウ

シープスキンノーズバンド。前後肢にバンテージ。馬装通り、下見は頭の高さが目に付いた。寸が詰まったマイラー体型。ただ、その割に歩様は力強い。ゲートでアオって1馬身出遅れ。芝での出脚もサッパリで後方から。ただ、後ろはバラバラの展開で、追い上げに壁はなく、手応えこそ悪いものの、押し通しで只管インを通る形。直線も完全な一直線ではないものの、ブレーキを掛ける場面は一切なく、ここ迄。エンジンが掛かってからの伸びは悪くなく、惜しい2着だった。ただ、ペイシャエスに対しては一旦は前に出ていたのに差し返されている。海外でも頑張って来た馬だが、今日の内容だけをいえば1400mの方がいい。

バトルクライ

前後肢にバンテージ。このメンバーだと微妙に馬が負けている。歩様ももう少し左後肢がしっかり出てほしいところ。スタート直後に躓いて出脚が鈍ったが、外枠の分、立て直しが利いて中段やや後方から。ただ、道中は頭が高く、手応えが一息。置かれ掛かって苦し紛れに内を回って来たが、伸び出してからは全身を使った走法で、最後迄脚が使えていた。こちらは惜しい3着。ダート1200mで2勝したとはいえ、まだ砂に慣れていない印象も。馬体も未完成感が有り、成長して来れば大化けする可能性も。

ヴァルツァーシャル

前後肢にバンテージ。もう少し落ち着いてくれるに越したことはないところ。馬振りで目立つことはないが、アバラが浮いて、仕上がってはいた。ゲートでアオッて、そのまま急かすことなく後方から。上位馬の中では楽に追走出来た方で、外へ回す余裕も有った。追ってからの脚もしっかりしており、一瞬は突き抜けそうな勢いだったが、最後の最後に甘くなった。今日の展開だと勝たないと値打ちはないところ。1000万なら何とかなる筈だが、その先はもう一段の成長が欲しい。

タイセイディバイン

ダートもこなせそうな造りで、馬振りは文句なくトップクラス。気配に集中力が有って、しっかり踏めていた。好発。その割に芝での出脚は速くなかったが、押して好位。1000m通過58.3秒と、ソコソコ流れた割には4角の手応えも充分。前の馬を可愛がる余裕も有った。ラスト250mで先頭に立ち、もう少しで金星だったが、最後に甘くなった。見た目通り、ダートも苦にならない。もう少し序盤を大事に乗れば結果は違った筈。

第27回マーメイドステークス(GⅢ)

ウインマイティー

遮眼革。前肢にバンテージ。+4kg。前走東京戦からそれなりに出来ていた。今日もしっかり踏めていたのが何より。不振は明らかに脱した。前走は出遅れたが、今日は好発。内の馬は決勝線迄に全部叩いたが、外からハギノリュクスが主張して、その番手から。1000m通過59.4秒と、前後半がほぼ平均的な流れだったが、手応え良く運べた。あとは4角の捌きだけで、ここで外へ持ち出し、坂下で前を行くリアアメリアを捕まえ、あとは独走だった。人気は落としていたが、このレースとしてはメンバーの揃った中で、力の違いを証明出来た。揉まれ弱いという話も有った中で、インから競馬が出来た点も好印象。

マリアエレーナ

デキは高値安定。426kgと馬格はないが、それなりに大きく見せて、キビキビ歩けていた点が好印象。芦毛にしては毛ヅヤも悪くない。外から来たハギノリュクスやリアアメリアを牽制しつつ、好位。ウインマイティーの直後から。枠の関係で1頭分、外を回っていたことも有るのだが、4角の反応がウインマイティーと違っており、一瞬で2馬身離されたのが痛かった。ただ、内から併せて来たソフトフルートには競り勝って2着は確保。ウインマイティーより1kg重い55kgだったことも、追っての反応に影響した面は有り、着差程の能力差はない。真っ直ぐ走れていた点も収穫で、距離に不安のない牝馬という点でも楽しみは多い。

ソフトフルート

皮膚を薄く見せて、デキは抜群に良く見せた。馬自体もこのメンバーなら上位。歩様も問題なかった。ゲートは出た方だが、今日は鞍上に行く気がなく、後方からジックリと。3角辺りから、そのままインを通って追い上げ、4角でウインマイティーの直後。マリアエレーナの内へ併せて、一旦は前に出ているのだが、坂を上って甘くなった。マリアエレーナとは1kg差も有っただけに、尚のこと課題が残る負け方。相手に関係なく、何時もソコソコは走ってくれるのだが、もうワンパンチが足りない。

リアアメリア

前後肢にバンテージ。+6s。勿論、馬自体は断然といえるが、トモの甘さが直って来ない。落ち着きが有った点はいいのだが...。ハギノリュクスの先行策に乗る形で2番手。外から出して行っただけに仕方がない面も有るとはいえ、1角過ぎから頭を上げて折り合いを欠く場面。向正面からはスムーズに折り合って、直線入口では先頭と見せ場は造ったが、坂を上り切る迄には至らず踏ん張り切れなかった。ハンデ55.5kgを含め、全てひっくるめて、一応は復活のキッカケが掴めたことになるが、過信は出来ず。

ステイブルアスク

-6kg。トモに丸みを残しており、細い印象はない。歩様も悪くないが、数字分だけ迫力では見劣る。出遅れ1馬身不利。オッツケても出脚がなく、道中はソフトフルートの1馬身後方。内ラチピッタリではなく、少し内を明けながらの追走だった。直線に向いて、スムーズに前が開いたが、追ってからもそれなりには伸びているものの、右手前のままだったことも有り、突き抜けるには至らず。戦前は穴人気になっていたが、重賞だとまだ力不足。