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競馬回顧 2018年2回京都

第35回フェブラリーステークス(GⅠ)

ノンコノユメ

前後肢にバンテージ。-6kg。数字分だけスッキリ。歩様や気配も悪くない。例に依って後方からの競馬だが、この馬としてはゲートは出た方。ゲートが不安定だけに決め打ちではなかったとしても、ゴールドドリームマークは理想通りの形になった。ゴールドドリームは1番人気を背負って4角で動く少し早目の仕掛け。それに対しこちらは直線に全てを賭けた。1000m58.3秒と前が流れた上に、今開催は妙に時計が掛かっていたことも有って先行馬総崩れの形となり、纏めて差し切った。兎に角お見事。去勢して中々結果が出なかったが、前走でキッカケを掴んで一気に頂点迄駆け抜けた。とはいえ、馬券的には今後もアテにし辛い。今回のゴールドドリームが正に好例、この馬の場合は馬格がないだけに尚更。

ゴールドドリーム

2人曳き。-14kg。前後肢にバンテージ。筋肉の輪郭が浮いてデキ自体は悪くないが、相変わらずテンションが高い。ゲートをアオって出脚が鈍ったが、少し押して後方に近い位置。昨年は折り合いに苦労する馬という印象も有ったが、今日はこれでも折り合いが付いた。ただ、1番人気だった上に、あまり外を回されたくなかった様で、少し早目の仕掛け。一瞬は勝ったかの脚だったが、最後の100mで甘くなってしまった。追い込み馬が人気を背負って負ける典型。ただ、そういった中で2着を確保するのも大事。地力は十二分に示した内容。

インカンテーション

前後肢にバンテージ。馬だけならコレ。下見の見た目とデキが一致するタイプだが、抜群に良く見せた。歩様も伸びが有って力強い。出脚は速い馬だが、有る程度ハイペースを読んでいた様で、先行グループから少し離れた位置で折り合いを付ける形。4角でゴールドドリームを待って追い出し、一瞬は1馬身近く出られているところから盛り返して惜しいクビ差。とはいえ、後方有利の展開となった中、相手の土俵で闘っただけに今日はむしろ評価が上がる内容。来年は流石に厳しいだろうが、ケガさえなければ複数タイトルを取っていてもおかしくなかった。

サンライズノヴァ

2人曳き。前後肢にバンテージ。今年に入って馬が本当に良くなったが、歩様に力感が有るとベスト。好発も、自分のペースを守っている間に自然と番手が下がって中段やや後方。4角でゴールドドリームに被されており、勝負の上ではこの時点で万事休すだが、直線は渋太く盛り返してここ迄。被されてなければもう少し際どくなっていたということになるのだが、あの場面がこの競馬の勝負どころ。こういう力の要る馬場だと馬力が足りない印象。ひと言でいえば、加速が甘い。

レッツゴードンキ

元々はもっと大きい数字で走っていた馬だが、この位の方が馬としては格好が良い。ただ、テンションが高い。ゲートをソロッと出して折り合いに専念して中段から。3角過ぎから揉まれる様な形で結構苦しい形だったが、逆に馬の闘志に火が付いたか、内からスルスル伸びて来た。本職ではない分、掲示板止まりだが、この中間は良い話がなかった中で好内容。馬力を改めて証明した。尤も、芝馬は大抵惨敗が相場。ここ迄走られてしまうのは全体のレベルが低い気もしないでもない。

第52回小倉大賞典(GⅢ)

トリオンフ

2人曳き。前後肢にバンテージ。-8kg。前走京都戦が若干余裕残しで、これ位で丁度。ただ、トモが若干甘い。出脚は速そうだが、1角迄が短い小倉1800mで、行きたい馬が結構居たことから、それらを行かせて好位の外。1角過ぎ迄は行きたがっていたが、そこからは折り合いが付いた。今日はここがらが独擅場。3角過ぎから徐々に外をマクりに行って4角で先頭。直線も独走だった。ハンデが多少恵まれていた感は有るのだが、それでもこの勝ち振りなら文句なし。ただ、トモが甘いので坂の有るコースだとどうか。そこが一線級との壁にもなって来るだろう。

クインズミラーグロ

オーストラリアンブリンカー。甘いは甘いが、この馬にしてはしっかり踏めていた。馬体も張りが有ってまずまず。行かせようとすればハナへも行ける馬だが、近走は先行して甘い競馬が続いていたことも有るのか、出たなりの中段で折り合いに専念。基本的にはずっと外を回される形だったが、3〜4角中間で馬群が切れて、内へ潜り込めたのが大きかった。折り合いさえ付けば一脚使える馬で、ベストの1800mで久々に噛み合った格好。和田正道調教師は今月一杯で勇退、花道は飾れなかったが、穴厩舎の面目躍如。

スズカデヴィアス

前走東京戦でも走ったが、やはりこれ位がベスト体重。馬体に張りが有って、馬に活気が有った。この距離だと出脚が苦しい部分も有り、後方に近い位置。とはいえ、今日のハイペースなら位置取りとしては悪くなかったのだが、4角でダノンメジャーが故障してマトモにアオリを食ってしまった。恐らく枠なりにインを突く作戦だったと思うのだが、結果的に直線は外へ持ち出さざるを得なかった。上手く運んでいれば2着有っただろう。パンパンの良馬場でないと走らない割に上がりの速い競馬だと届かないという二律背反な部分の有る馬だが、堅実は堅実。

ダッシングブレイズ

+10kg。半年以上の休み明けだが、数字分太い程度でほぼ出来ていた。気性は相変わらずだが。昨年辺りから出脚強化されており、労せず中段は確保。ただ、内ラチ沿いではなく、内外前後と馬が居て、精神的に楽な位置ではなかった。コーナーで手応えが怪しいのは毎度で、4角は良くクラリティスカイに食らい付いていたといえる位だが、休み明けの分なのか、手前が替わらなかったことも有り、ひと押しが利かなかった。ただ、休み明けで不得意の小回りと悪条件の中で良く走っている。まだまだ稼げる。

マサハヤドリーム

前後肢にバンテージ。-14kg。馬体重の変動が激しいタイプだが、これ位の方が見た目にはスッキリ。馬も落ち着いていた。毎度のことながら出遅れ1馬身不利。本当はインに潜りたかったところだろうが、内枠の馬が邪魔になったのは微妙に痛かったか。引っ掛かっていたのは毎度のこと。トリオンフのマクりに乗って動いて行ったが、更に外から来たスズカデヴィアスに差されていたのは頂けない。この距離自体はこなすが、気性的に難しいだけに、距離延長だと苦しそう。距離短縮、若しくは昨夏の様に同距離でも中京から小倉へと小回りになった時が狙い目。

第68回ダイヤモンドステークス(GⅢ)

フェイムゲーム

2人曳き。-6kg。前走中山戦が一枚太かっただけに、これで丁度。ただ、左後肢は相変わらず出が悪い。出たなりで中段やや後方から。その前走は少し行きたがっていたことも有り、この馬にしては折り合い重視で乗られた。2周目の2角で少し動いて中段に番手を上げたが、人気馬が動いたことでここから全体にペースが上がって、再び待機。直線もしばらく待って、坂下辺りから追い出してラスト200mで先頭。後は他を寄せ付けず押し切った。これで14年,15年と続いてこのレースは3回目となるが、58.5kgだけに文句なし。また、斤量を背負うと一瞬の脚がなくなる中で、馬にそういった競馬をさせない乗り役の騎乗も見事。

リッジマン

小ぢんまりと見せるタイプのステイヤー。それでいて、気配が良く、歩様も力強い。出脚は速そうではないが、少し出して中段のイン。折り合いは問題ない馬で、スムーズに走れていた。前述した様に2周目の向正面からペースが上がったが、ここで出来る限り外を回さない様に少し前と差を詰め、直線はソールインパクトを挟んでフェイムゲームとの攻防。一瞬の脚に見せ場は有ったが、ラスト150mからのワンパンチが出なかった。斤量差も有って完敗。とはいえ、長距離は経験も大事。この競馬がまた馬を強くしてくれるだろう。

ソールインパクト

前後肢にバンテージ。この距離だけにノンビリ歩いた点はプラス。シャープな馬体も距離を考えればこれで良いが、もう少ししっかり踏めるとベスト。好発も、大逃げのグランアルマダ以外にも押して行った馬が多く、好位直後から。スムーズに折り合えていた。2周目の3角過ぎから徐々に進出して、坂下で先頭。早仕掛けにも見えたが、ラスト2000mで止まりそうになりながら一踏ん張りが利いて3着は確保。ハンデの恩恵も有るだろうが、トビが大きいので中々渋太い。珍しく前走京都戦は引っ掛かったが、折り合いさえ付けば前々走の様に早仕掛けでも簡単に止まらない。

リッチーリッチー

2人曳き。下見だけパシュファイヤー。レースで遮眼革。前後肢にバンテージ。多少テンション高いのは何時ものことだが、もう少し腹回りがスッキリしてくれても。スタート直後から少し行きたがる素振りを見せており、抑えて後方に近い位置。只管インで我慢していたが、リッジマンが動いてくれて、2周目3角で1馬身分得したが、セコい競馬をした割に伸びてくれなかった。これ迄の最長が2400mで、いきなりの3400mは流石に厳しかったが、何度も述べている通り、経験値の問題も大きい。もう少し落ち着いてくれればこの距離でも。

プレストウィック

前肢にバンテージ。胴長の馬体。芦毛でも毛ヅヤが冴えており、手先のスナップが利いていた。元々ゲートは速くない方だが、この馬にしてはゲートを決めて出たなりで中段のイン。道中は少し宥め気味の追走だったが、勝負どころから真っ先に近い仕掛けで直線入口で先頭。ただ、坂下ではすでに脚が上がり掛かっており、何とか掲示板を確保するのがやっとだった。競馬としては悪い内容ではないが、結果的にもう少し矯めて乗られても良かったかも。経験の浅い馬にやられたのは頂けない。

第53回京都牝馬ステークス(GⅢ)

ミスパンテール

+6kg。2歳時から馬振りは良かったが、このメンバーだと馬が一枚上。ただ、今日はチャカつきが目立った。好発。出脚はそこ迄速くない馬だが、、それ以前に急かすことなく中段から。この辺りは下見でテンションが高かった影響も有るだろう。前外に馬を置いて折り合いを付け、直線はエスティタートを行かせてから外へ。一旦、そのエスティタートに対して2馬身近く出られているのだが、ジワジワ伸びて捕まえた。平坦の1400mがどうかと思っていたが、この馬場で中山の坂を苦にしないパワーが生きた印象。今年は路線を問わず世代交代がテーマになっており、この馬もその旗手と成り得る存在だが、今日に関しては相手が弱かったのと馬場状態が向いた。東京で決め手勝負となった時が未知数。

ディアレガーロ

2人曳き。+8kg。数字分だけ太い気もするが、元々が寸詰まりのマイラー体型。気配も良かった。半馬身程出負けして後方から。何とか馬を前に置いて折り合いを付けようとしていたが、向正面では頭を上げて引っ掛かっていた。馬が納得したのは3角辺り。これも少し追い出しを我慢していたクチで、上手くミスパンテールに併せる形に持ち込めたが、脚力負け。とはいえ、賞金を加算出来たのは大きいところ。折り合いさえ付けば重賞でも足りる。

エスティタート

前後肢にバンテージ。馬体に力強さはないが、ユッタリ歩けている点に好感。ゲートは速かったが、これも引っ掛かりそうになっており、控えて中段あやや後方から。この乗り役だけにペースが遅いのは分かっていた筈で、丁度目の前にミスパンテールが居たことから、早仕掛けは承知でも4角で被せて進路を潰す形。一瞬は先頭に立っているのだが、立て直したミスパンテールに差し切られ、更にディアレガーロにも来られて3着に。狙い通りの騎乗は出来たが、最後はパワー差。理想をいえば賞金を加算したかったところだが...。

エンジェルフェイス

下手するとイレ込む馬だが、1回使って堪えてくれていた。叩いた分、馬体も良化。出脚は速かったが、外枠だけに押して迄行く気はなかった様で、好位の外。完璧に折り合っていた訳ではないが、意外な程スムーズに走れていた。直線も本職の差し馬には伸び負けしたものの、馬場の悪いところを通らされながらも良く食らい付いていた。競馬の幅が広がる内容。インで脚を矯める競馬が出来るのかが未知数だが、それが出来る様になれば重賞でも勝ち負け。

ワンスインナムーン

前後肢にバンテージ。+13kg。馬体回復は願ったり叶ったり。ただ、馬体の張りという点で多少甘い印象も。その分なのか、歩様にも微妙に力強さを欠く。一瞬のゲートはソルヴェイグの方が速かったが、出脚と枠の利で制してハナ。1000m60.1秒と、スローに落とせた。4角で引き付けて、直線入口で一旦は突き放しているのだが、今日は馬場に泣いた印象で外から4頭。馬場がマトモなら少なくとも馬券圏内は有った。京都1400mがベストなのは確かだが、スピードは有るだけにこの馬体さえ維持出来ればチャンスは続く。

第53回デイリー杯クイーンカップ(GⅢ)

テトラドラクマ

-6kg。気配は少し小走りが入る程度。トモの発達した造りだが、腹回りは今日でギリギリ。好発。1馬身抜けていた。道中はずっとアルーシャと並走。多少力んでいた様にも見えたが、アルーシャよりはマシ。1000m通過57.8秒とソコソコ流れたが、直線入口で突き放すと、そのまま他を寄せ付けずに押し切った。好悪材料それぞれ有るが、今日のところは息の入り辛い展開でも頑張り通した心肺能力を一番評価したいところ。この手のタイプはオークスで強く、馬体維持を前提に買ってみたい。

フィニフティ

前後肢にバンテージ。数字の割に造りがしっかりしており、踏み込みも力強い。この馬の出脚で中段から。最内もナラトゥリスも似た様な出脚で、こちらはこちらで並走の形になったのが地味に痛かったが、4角で腹を括って少し早目の進出。内ラチから5頭分位外で進路を確保。追い出して一瞬だけフラつく場面も有りながら、しっかりしたフォームで最後迄伸びて来た。新馬の内容も中々良かったが、1戦だけの馬が重賞でこれだけ走れれば充分。これで賞金的に楽になったのも先々明るい。仮にクラシックで負けたとしても、無理使いしなかった点は古馬になっても財産となる。

アルーシャ

-8kg。数字程細くは見せないが、テンションが上がってしまっていた。良いスピードは持っているのだろうが、乗り役が抑え気味だったにも関わらず、力んでしまいハナでテトラドラクマと並走。先々を考えてだろうが、単騎逃げは避けたかった様で、並走でも我慢させようとしていた。結果的にオーバーペースになっており、結構苦しい形だったと思うのだが、何とか3着。賞金を加算出来なかった点は痛いとはいえ、この馬の潜在能力は示した。藤沢和雄厩舎だけに、大事に使ってくれる筈で、気性面の問題さえ解決出来れば面白い存在。

オハナ

小さいなりに纏まった造りだが、イレ込みがキツい。外枠だったが、ジワッと行かせて好位の外。この馬の位置でも平均ペースよりやや速目。流れたことも有って、見た目上は折り合いが付いていた。ただ、直線はフィニフティに内をスクわれて伸びずバテず。この馬体で良く頑張っているということもいえるのだが、オープンで何とかしようと思うなら、まずイレ込みを何とかするのが先決。

マウレア

馬体はこのメンバーだと上位だが、もっと増えて欲しいところ。少し歩様にも甘さが残る。アルーシャの方が出脚は速かったが、この馬も出脚はまずまずで逃げたテトラドラクマの番手から。ハイペースが有るにせよ、インで引っ掛かっていた訳ではないだけに、アルーシャを交わせなかったのは頂けない。馬体が増えないので鍛錬が出来ていない。これだとクラシックはほぼ馬券圏外。

第52回共同通信杯(トキノミノル記念)(GⅢ)

オウケンムーン

シープスキンノーズバンド。父オウケンブルースリは武骨な印象も有った馬だが、この馬は垢抜けた造り。ただ、馬装通り、少し頭の高い面は有ったが。4番エイムアンドエイドと5番コスモイグナーツが行ってくれて、その番手から。1000m通過60秒2のスローだった割に、3角過ぎから前がバラける形になったが、直線は手応え通りに伸びて快勝。単純に他馬とは決め手が違った。下見はともかく、レースは父の面影も見え隠れ。抜け出す際に左手前で内にモタれていた。今年はメンバー低調だった感も有り、過大評価は避けたいところ。

サトノソルタス

+8kg。この時期のサトノの馬らしく、まだ余裕残し。まだまだ鍛える余地を残した馬体。出脚は決して速い方ではないが、枠の利が大きく中段のイン。スローで上がりが速くなっており、追い出して瞬時に反応した印象ではなかったが、ラスト200mでエンジンが掛かってここ迄。フォームという点では全身が使えており、好感が持てるのだが、前述した様に今年はレベルが低い印象の方が強い。ムーア騎手が見えないところで上手く乗った面も有るだろう。ダービー迄にどれだけ成長出来るかといったところ。

エイムアンドエイド

-8kg。馬体減そのものは気にならないが、頭が高く、歩様に力がない。少しチャカついていた点もマイナス。ゲートはコスモイグナーツの方が速かったが、出脚で突っ張る形。それでもコスモイグナーツが主張して来て、ならばと引いて2番手。スローだっただけにこれで正解だっただろう。下見からとても勝ち負けに持ち込める様なデキではなかった筈だが、積極策が奏功した。とはいえ、出脚が有るのは強み。成長すれば手堅く稼げる存在となりそう。

ゴーフォザサミット

+8kg。胴長の造りだが、今日のところは腹回りが数字分だけ緩い。出遅れ1馬身不利。更に外の馬に内に入られ、もう1馬身ロスが有って最後方から。腹を括って4角迄はひたすらインを通り、直線向いて暫くは進路を探しながらだったが、サトノソルタスの内に併せて僅差の4着。メンバー中、上がり3F33秒2はメンバー中最速。出遅れさえなければということになるが、今日は頭数が少なかった点はこの馬に味方した面も有った。やはりゲートは五分に出るに越したことはない。未勝利でも出遅れており、不安定なのが気掛かり。

カフジバンガード

筋肉の輪郭が浮いて、しっかり踏めていた。気配も上々。1馬身程出遅れたが、押して中段やや後方。急かしている分、向正面では少し噛む場面も有った。直線向いてからはサトノソルタスの外へ。前肢の掻き込みは力強いものの、首が使えておらず、上がりの競馬になって決め手負けした形。もう少し流れればまた違うのかも知れないが、本当のベストはダートかも。

第111回農林水産省賞典京都記念(GⅡ)

クリンチャー

今日も歩様に硬さがないのが何より。馬に活気が有って、休み前の前走の状態を維持。3000mの後ということも有るのか、出脚が案外で押して中段。ただ、行き脚が付いてからの手応えはずっと良かった。荒れ馬場には絶対の自信を持っており、道中は内ラチ沿い。少しずつ手応えに任せて番手を上げ、直線だけ軽く外に持ち出されると、ジワジワ伸びて突き抜けた。繰り返しになるが、こういった精神力がモノをいう状況になると強い。決して馬の素質で恵まれているとは思わないのだが、メンタルを休み明けでもしっかり仕上げて来るのが厩舎技量。一般論とすれば落ち込んだ時の谷も大きいということにはなるのだが、デキの良い今は乱戦になればなる程有望。

アルアイン

こちらは少し歩様が硬かった。馬体も多少ユッタリとした造り。休み明けだけに悪くないということにはなるが、満点はやれない。出脚は速い馬だが、スタート直後から引っ掛かりそうになっており、ミッキーロケットを壁にして我慢させる形。外に馬は置けなかったが、何とか堪えてくれていた。向正面でレイデオロが動いた際にも待って壁をレイデオロに替えて、直線だけ外へ。矯めるだけ矯めた甲斐が有って、直線は外にヨレる場面が有りながらもここ迄伸びて来た。クリンチャーとの差は馬場適性と距離だろう。今年初戦としては充分な内容。

レイデオロ

下見は最後方を周回。皮膚を薄く見せて、垢抜けた馬体。静止画なら文句なしだが、今日は何時になくテンションが高かった。出遅れ1馬身不利。これも最初から引っ掛かっており、アルアインはミッキーロケットを壁にしていたが、こちらはアルアインを壁に折り合いを付ける形。折り合いは早目に付いたのだが、ダービーの成功体験が有るからか、落ち着いた向正面で動いたのが今日は失敗だったかも。直線は内からクリンチャー、この馬、アルアインで叩き合いになったが、最後に甘くなった。東京でのパフォーマンスの良さを考えると明らかに走っておらず、仕上げの問題は有るにせよ、こういう特殊な条件は向かない気も。

モズカッチャン

2人曳き。+4kg。牝馬だけに休み明けの馬体増は好感。踏み込みもしっかりしており、休み明けとしては充分合格点。この馬自身もゲートが悪かったが、クリンチャーにも寄られており、更に出脚が鈍り後方から。折り合いはどの位置でも付く馬で、道中は馬場の良い外目を選んで追走。ただ、乗り役がアルアインの外だと勝負圏外と考えたか、一旦は引いて4角で全部行かせて内へ。狙いはズバリハマって、最内をスルスル伸びて一旦抜け出しているのだが、外から牡馬が3頭。荒れ馬場自体はこなせそうだが、牡馬相手でパワー負けした印象で悲観する内容ではない。毎回述べている様に、どんな競馬でも出来るのが強み。昨年何度アッといわせた乗り役だが、こういう馬なら想像力をかき立てられるだろう。

ケントオー

+6kg。この馬とすれば悪くないが、このメンバーに入ると如何にも非力。出遅れ1馬身不利。そのまま後方から。3角手前から徐々に前との差を詰めて、4角でアルアインを被せに行く形。流石にマクり切る迄はなく、直線半ばでむしろ水を開けられてしまったが、GⅠ馬を相手に見せ場はタップリ。オープン昇格後は一番といえる内容。2200m初体験だったが、今ならむしろこの位の方が良いかも。

第68回東京新聞杯(GⅢ)

リスグラシュー

2人曳き。中間の攻め馬が抜群の動きだったが、それでも馬体増。多少気負っていたが、デキは間違いなく良い。ゲートは不安定な馬だが、今日も半馬身程出負け。出脚でカバーして中段から。引っ掛かる程ではなかったが、終始手応え抜群で直線向いても少し待つ余裕が有った。ラスト400m手前辺りから追い出されて狭いところをコジ開けて抜け出すと後続を完封。重賞では牡馬相手に一度も闘っていなかった馬だが、いきなり東京マイルで勝ったのも先々明るいところ。今にして思えばベストはマイルだったか。細かいところをいえば、馬群を割れた点も評価出来る。

サトノアレス

-6kg。左だけオーストラリアンブリンカー。寸詰まりのマイラー体型だが、数字分だけスッキリ。気合が乗って、デキ自体は問題なさそう。1馬身出遅れ。腹を括ってそのまま後方から。終始インに拘って、スムーズに抜けて2着浮上。ただ、少し力む場面が有ったのと、直線は右にモタれ気味だった。スローで流れて馬群が固まったことで、インでもそれなりにスペースが有って救われた形。57kgも影響しているのかも知れないが、前走は左にモタれており、まだ馬が若い。

ダイワキャグニー

パシュファイヤー。前後肢にバンテージ。スカッとした造りで、気配的にも目一杯仕上げて来た様に見えた。外のグレーターロンドンの方がゲート速く、少し控え気味に好位直後。これはこれだったが、スローになったことで馬群が横に分厚くなってしまい、外を回されてしまったのが痛かった。1,2着馬とはその分の差。前走中山戦は2000mが長かっただけで、改めてベストが東京マイルというところを示した形だが、東京マイルは毎回強敵が揃う番組しかないだけに、今日落としたのは痛いところでも有る。

デンコウアンジュ

厳寒期の牝馬にしては毛ヅヤが良い。馬体にメリハリが有って、歩様もしっかり。この馬の出脚で中段やや後方辺りから。ただ、直ぐ内のアドマイヤリードに欲しい位置を取られてしまい、3〜4角中間では少し行き場がなくなって待たされる場面。直線も進路を探しながらで、スローということも有ってジワジワとした脚だった。手前が替わらないのはこの馬にとって良く有ること。アドマイヤリードさえ居なければ2着有った内容。これも東京マイルは走る。

ディバインコード

前肢にバンテージ。胴長の体型ということも有るが、まだ力が付き切っていない印象も。好発も、トウショウピストが主張して2番手から。ただ、道中は口を割って行きたがっていた。直線も粘ってはいたが、頭が上がって何かぎこちない様にも見えた。時計的にはこれ位走れば現状の力は出し切ったということになるのだが、まだ良化途上。

第58回きさらぎ賞(NHK賞)(GⅢ)

サトノフェイバー

前肢にバンテージ。まだ全体に馬が緩く、歩様も頼りない。好発。誰も行く気がなかったことも有って、押し出される様にハナ。戦前は控える競馬も想定していた様だが、トビが大きい馬で結果的に行き切ったことに依ってノビノビ走れた。直線もグローリヴェイズの猛追は有ったが、最後迄止まることなく一杯一杯振り切った。現状だと切れる脚がなく、この形の方が安心感は有るだろう。尤も、下見はまだ明らかに子供。クラシックに間に合うかどうかは微妙でも、これだけ走れるなら能力は相当で、成長すれば大化けする可能性も。

グローリーヴェイズ

2人曳き。前肢にバンテージ。+8kg。数字は成長分。トモに厚みが出た。ゲートで安目を売って後方から。ただ、スローと見るや否や、コースロスのない向正面部分で動いて3角で2番手へ。そこで一息入れて、後続の進出に合わせて再び前を捕まえに行く形。この展開ならアッサリ捕まえられても良かったが、着差が着差だけに直線で外にフクれたのが惜しい。ゲートさえマトモなら勝っていただろう。これもまだまだ課題は残っているが、馬が成長している点にも好感が持て、先々明るい。

ラセット

-6kg。イレ込んでいた上に馬も細い。ゲートは速かったが、引っ掛かりそうになったことも有り、控えて中段辺りから。隊列が決まってからはスムーズに折り合えた。コーナーで動いた馬が多く、結果的に少し4角の位置が少し後ろに下がったが、直線は難なく捌いてここ迄。未勝利上がりだが、終いはしっかりしており、500万ならメドは立つ内容。尤も、このレースにしては今年は珍しくメンバーが低調だった感も有り、この馬が500万で通用するかどうかは上位2頭にとっても注視しておく必要が有る。

レッドリオン

前後肢にバンテージ。数字の割にバランスの取れた馬体だが、まだ華奢。出脚が抜群に速いという訳でもなさそうだが、少し出して好位から。道中は基本的には折り合って走れている様に見えたが、グローリーヴェイズが動いた影響でこの馬の位置の出入りが激しくなってしまった。直線は伸びずバテずで食らい付いて行くのがやっとだった。とはいえ、1戦1勝の馬だけにこれだけ走れれば上等。あとは成長待ち。

カツジ

+14kg。増えた点には好感が持てるが、全部が全部実になっている訳でもなさそう。外枠だけに無理せずこの馬の出脚で中段から。ただ、隊列が落ち着いたところでグローリーヴェイズ、更にダノンマジェスティにも来られる展開となり、マトモに連られてしまった。こうなるとどうしようもなく、直線もジワジワ前と離される有様。前走内容からこのメンバーなら何とかなって不思議はないのだが、今日は競馬にならなかった。距離適性云々はまだ何ともいえず、馬体を絞って改めて。

ダノンマジェスティ

下見は丁度良い気合乗り。伸びやかな歩様にも好感が持てた。スタート直後から口を割って頭を上げてと、馬がパニック。更にコーナー、最後の直線共、外へモタれる悪癖が出てしまった。下見は問題なかったのだが...。参考外。

第32回根岸ステークス(GⅢ)

ノンコノユメ

+10kg。前後肢にバンテージ。まだスカッと見せる体型だが、数字が増えた分だけトモにボリューム感が増した。最近はゲートを出る確率が上がっているが、今日も五分。後方からの競馬は何時も通りでも、スンナリ流れに乗れた。4角迄はコースロスを少なくして、直線だけ大外。久々にこの馬らしい決め手を発揮した。馬体が増えた点にも好感が持て、これで完全復調ということになるが、近年のこのレースの中ではメンバー低調だった感も。レコードは馬場とペースの影響が大きいだろう。唯でさえ追い込みが2回連続で決まることは少なく、次走人気になる様なら嫌ってみる手も。

サンライズノヴァ

2人曳き。下見所の外を周回して、気合充分。馬体にも迫力が有って、4歳馬でもむしろ最上位クラス。最近のこの馬としては珍しく半馬身程出遅れて中段から。乗り役が手応えに自信を持っていたのか、4角手前から外を動いて行った。直線入口でブルドックボスが邪魔になったマッチレスヒーローがフラついて逡巡する場面が有ったのが結果的に少し痛かったが、立て直してしっかり脚を伸ばした。自力で動いたことと、直線入口での事象を考えれば実質的な勝ち馬。時折ポカが有る馬だが、次走は若手有利ということを考えるとこの馬から入る手も。

カフジテイク

+10kg。前後肢にバンテージ。気配はこれで良いが、数字分だけ太い。例に依って出遅れ1馬身不利。そのまま最後方から。直線向いた段階で、ノンコノユメに対し1馬身後方に居たが、ラスト200m辺りから内にモタれて突き放されてしまった。案外感の残る3着。駆け上がって来た時の様な破壊力がなくなっている。尤も、今日は太目が祟ったと見ることも出来る。次走絞れてダメならこの馬の見限り時。

マッチレスヒーロー

シープスキンノーズバンド。スカッと見せて馬体は芝向きだが、動きはキビキビ。出脚は結構速そうだが、行きたい馬に行かせて好位直後から。外から行った馬が居たことも有って、前は必要以上に速かったが、いい位置で流れに乗れた。前述した様にブルドックボスと接触して、少し立て直す場面は有ったが、この馬なりに伸びてここ迄。もう少しペースが遅ければ馬券圏内有っただろう。既に7歳だが、重賞へのメドが立つ内容。

ブルドッグボス

2人曳き。前後肢にバンテージ。寸詰まりのスプリンター体型だが、中身の詰まった造りで、デキは上々。好発も、流石に中央の1400mだと行き切れず好位の外。ハイペースは承知だっただろうが、積極的に前を追い掛けて一旦は先頭。ズボズボの展開だった中で良く粘っている。ただ、コーナー直線共、外にモタれ気味。左回りの良績がない訳ではないが、ベストは経験値の高い右回り。

第23回シルクロードステークス(GⅢ)

ファインニードル

+18kg。太いというより、全体に緩い印象。毛ヅヤや気配は悪くないが。恐らく戦前はハナも想定していただろうが、セイウンコウセイが行ってくれたことで、その番手から。少し行きたがっていた様にも見えたが、この形なら大きな影響はなかった。4角でセイウンコウセイが早目に動いたところを勝負と見て、追い掛けて行き、直線半ばで捕まえると後は独走だった。直線だけ見れば圧勝といえる内容。ただ、最内枠であまりに上手く行き過ぎた面も有って能力判定不能。馬体が絞れればもうワンランク上の走りが期待出来るが、次走は枠順次第。

セイウンコウセイ

+6kg。デビュー以来最高体重だが、太い印象はない。ただ、気配は地味。ナックビーナスの方がゲートは速かったが、出脚で決着を付けてハナ。600m34.0秒と引き付け気味の逃げで、4角迄は単騎。直線入口で突き放しに掛かったが、突き放したことでファインニードルの進路が出来てしまい、ラスト200mで交わされると、最後は2着死守するのがやっとだった。完敗の形だが、58kgでも楽にハナへ行けた出脚は評価したいところ。少し時計が掛かる馬場状態になったのも向いていたのだろうが、これで完全復活。

フミノムーン

前肢にバンテージ。一歩一歩がしっかりとした脚取り。馬体もスッキリ。例に依って出脚がなく、後方から。道中は結構行きたがっており、ところどころで引っ張る場面。4角も外へ行くしかなかった上に、カラクレナイにワンテンポ待たされているのだが、際どい3着。通ったコースの差を考えれば強い内容。尤も、京都1200mで有ればこの手の不利は仕方がないところ。出脚のなさも含めての実力ということでは有るが。

カラクレナイ

前後肢にバンテージ。毛ヅヤが悪いのは仕方がないとして、歩様が力強く、デキは悪くない。多少出負けしていたが、促して中段やや後方から。近況は競馬を投げている印象も有ったが、今日は引っ掛かることもなく、集中力が続いた。直線もフミノムーンにはキレ負けしたが、最後迄諦めずに走っている。もう少し内枠で流れに乗れていれば馬券圏内迄有っただろう。キッカケは掴めたか。

ナックビーナス

緩んだところがなく、馬体の雰囲気は悪くないが、少し動きが硬い。好発も、内の行きたい馬に行かせて好位から。外では有ったものの、スムーズに流れに乗れていたが、いざ追ってジリジリ。前が捕まらず、後ろの馬に交わされて5着止まり。京都でも勝った実績は有るが、最近のベストは中山1200m。現状だとこんなモノだろう。次走改めて。