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競馬回顧 2023年3回小倉

サマー2000シリーズ第5戦 第59回農林水産省賞典新潟記念(GⅢ)

ノッキングポイント

+6kg。多少緩さも有ったが、トモが張って、良く言えばフックラといえる範囲。休養前の東京戦が太目に映ったが、今日の体重でこのシルエットなら成長は有る。ただ、例に依ってテンションが高い。ゲート五分。少し押しただけで行き脚が付き、楽に好位のイン。少し窮屈そうにも見えたが、ブレーキの利きも良かった。ずっと我慢させて、直線に向いて内外の合流地点で先頭。スローの決め手比べとなり、全馬が伸びている中、内で脚を矯めていた分、そこを抜け出す一瞬の脚が有った。気性的に注文が付く面は有るが、リズムに乗れればひと脚使える。取り敢えず東京戦が目標になるだろうが、内枠は欲しいところ。

ユーキャンスマイル

胴長の造りで、ゆったり。比較的良く見せる方だが、大きく変わった雰囲気はない。歩様は多少怪しいが、気配に乏しいのも何時ものこと。ゲートは出ているが、出脚が足りず後方から。競馬に注文が付く馬ではなく、コーナーは少しでも内へ寄せて距離を稼ぎ、直線は大外。最終週にしては内目も利く馬場状態で、今日の競馬は決して楽ではなかったが、渋太く脚を伸ばして2着確保。昨年のこのレース以来の好走だが、当時述べた様にGⅢだと力が一枚上。今春にカラテが59kgを背負って重賞を勝った様に、新潟はハンデを背負っていても走れるコースということも大きいが。

インプレス

524kgの馬体だが、横から見ると小ぢんまりと映る。裏を返せば、馬に幅が有るということになるが、歩様も含めてマイラー志向が強いタイプ。ゲートでアオって、後方から。向正面の早い段階で、内ラチ沿いへ寄せていた。直線もそのまま内ラチ沿いから。前述した様に、最終週ながらインが利く馬場状態で、このギャンブルがハマった。ただ、今日はこれ以上これ以下でもない気もしないでもない。追い込み一手のタイプでも有り、今後は色々噛み合わないと苦しい。

プラダリア

後肢にバンテージ。これも馬体はマイラータイプだが、特に変わった印象はなく、例に依って低い重心。何時も通り、しっかり踏めていた点も好印象。ゲート五分。頑張れば出脚も有る馬だが、急かさず中段から。道中はユーキャンスマイルの外に居て、枠に殺された印象。直線はラスト200mで一旦先頭に立たんかの場面迄有ったが、そこからの一押しが利かなかった。中々賞金が加算出来ないが、見せ場充分の内容。ただ、鞍上が早仕掛けしている面も有るとはいえ、使える脚は少し短いかも。

バラジ

シープスキンノーズバンド。-6kg。皮膚を薄く見せて、腹回りもスッキリ。丁寧に仕上げて来た印象。手先のバネも利いていた。半馬身程出負け。押して位置を取りに行った出脚は悪くなかったが、決してペースは速くなかった割に、道中はオッツケ気味。直線に向いてからも中々エンジンが掛からず、モタついている間に何度か前をカットされて立て直す場面。最後の最後に伸びて来た。鞍上の話ではまだデキが本当ではないとのことだが、見た目には良く出来ていただけに、距離を延ばして来た時が狙い目。

サリエラ

シープスキンノーズバンド。-2kg。馬体は数字通り、キッチリ出来ていた。ただ、少し歩様は硬目。出遅れ1馬身不利。押して中段やや後方。これも道中の行き振りがイマイチで、直線もジリジリだった。内目から馬群を捌く形だったので、ノビノビ走っていればまた違った可能性も有るが、それでも今日は厳しかっただろう。前走東京戦の内容から、もう少し走れてもいいが、デキがなかったか。

第43回小倉2歳ステークス(GⅢ)

アスクワンタイム

後肢にバンテージ。438kgしかない割には、良くまとまっている。決して大物感はないが、現状の完成度では抜けていた。歩様も問題ない。ゲート自体は五分に出ているが、元々出脚がなく、今日は鞍上にも行く気がなく、後方から。600m通過33.2秒と結構流れたが、眼前を行くミルテンベルクの行き振りが抜群に良く、いい目標になった。4角迄はミルテンベルクに付いて行き、直線に向いてから大外。ラスト200mで手前が替わり、更に先頭に立ってから少しフワッとした様にも見えたが、何とか凌ぎ切った。中々味な勝ち方。何度も述べている様に、夏の2歳重賞では一番の出世レースだが、様々なタイプが居て、距離の融通性が有る馬も多い。この馬も2000m位迄は保ちそう。

ミルテンベルク

前肢にバンテージ。+14kg。この馬体増は好印象。寸詰まりの体型だが、明らかに筋肉量が増した。ただ、少しテンションは高い。好発。出脚にも余裕は有ったが、直ぐ内のメイプルギャングが更に速く、中段待機。少し掛かる位の行き振りは、このハイペースの中で1頭だけ目立っていた。1番人気のビッグドリームが近くに居て、競馬も組み立て易かったが、敢えてマトモに追い掛ける様なことはせず、ジワッと進出しながらも、4角でワンテンポ待ったのが正解。直線は叩き付ける様な力強いフォームで良く伸びていた。アスクワンタイムに展開がハマり、それを生かせる競馬センスが有ったことも確かだが、この馬もスプリンターとして上等。

キャンシーエンゼル

前肢にバンテージ。+4kg。446kgの割に数字は有るが、まだ全体に筋肉が付き切っていない。歩様は悪くないが。ゲートは微妙に分が悪かったが、出脚を利かせて好位。結果的にハイペースに巻き込まれてしまった。更にビッグドリームが少し早目の進出で、付き合わざるを得なくなったのも痛かった。それでも直線は渋太く伸びていたが、外2頭の勢いに屈する形。直線は右手前のままで少し右へモタれていたが、ビッグドリームを凌いだ点は高く評価したい。500万は楽勝級。

ビッグドリーム

+2kg。血統からボテッと見せるのは仕方がない部分も有るが、前走福島戦の方がまだスッキリとしていた。縦の比較でマイナス。出脚で差が有って、直ぐ外のメイプルギャングに叩かれる格好にはなったが、上手くやり過ごして好位の外。このペースだけにオッツケ気味では有ったが、それは他馬も似た様なモノで、特に道中は問題なく追走出来ていた。3〜4角中間から上がって行く脚も悪くなく、直線に向いた段階では勝ったかに見えたが、そこからが伸びなかった。明らかに重目が祟った止まり方。ただ、全兄ビッグシーザーより出脚がないのは気になるところ。スプリントだと特にリズムを欠く原因になり易い。

フォルテローザ

-6kg。今日のデキだけをいえば、この方がいい。ただ、全体に馬が薄い印象。所作に非力な印象もないのだが...。半馬身程出負け。出脚も足りず、後方から直線に賭ける競馬。追い出してからも反応は鈍かったが、ラスト150mでエンジンが掛かってここ迄。もう少しエンジンが早く掛かっていたら、面白かった。未勝利は直ぐに脱出出来るだろうが、距離はもう少し有った方が楽。

第58回農林水産省賞典札幌2歳ステークス(GⅢ)

セットアップ

シープスキンノーズバンド。全体に筋肉の付き方が甘い印象だが、馬体に柔軟性が有りそう。歩様も実に伸びやか。好発。出脚も速く、決勝線の時点で既にハナ。楽に先手を取れたことも有って、最初は鞍上も抑えようとしていたが、その割に序盤は行きたがっていて、馬の気分を損ねない様に、途中からそのまま行かせた。結果的に徐々に2番手以下との差が開き、4角で2番手と3馬身程度の差。直線もそのリードをそのまま守り切った。最終週の馬場で、最初から内ラチを通っていたことから、馬場適性も高いのだろうが、単純に強かった。今日の完成度でこれなら相当の素質を秘めているとみていいだろう。ただ、気性面から距離はあまり延びない方がいい。

パワーボール

2人曳き。トモにがブ厚い上に、背丈もソコソコ。馬はいい方だが、如何せん歩様が甘い。手先だけで歩いている印象。セットアップが速過ぎて、他馬が深追いを嫌った中で、ならばと2番手。鞍上が自分の息子だったことも有るだろうが、セットアップには付き合わず、自分のペースに徹する形。4角で人気どころが外から被せに来たが、道中でロスがなかった分、抵抗する脚が有った。直線入口では人気どころも脚色が怪しくなり、前とは離されたものの、悠々2着は確保。今日の競馬で能力面は評価し辛いが、競馬が上手いのは確か。大成はしなくとも、馬券的には面白い存在。

ギャンブルルーム

前後肢にバンテージ。このメンバーだと馬体の迫力では、この馬とウールデュボヌール、ガイアメンテの3頭が抜けていた。歩様も含めて、現時点で下見にケチを付けるところはない。今日はゲート五分。外からジワッと好位。折り合いも付いて、流れにも乗れていた。ただ、ペースが上がった3角から急に手応えが渋くなり、自分から仕掛けるどころか、付いて行くのがやっと。直線も手前が替わらず、雪崩込んだだけだった。最終週の稍重、小回りコースと、根本的に馬場適性がなかった印象。とはいえ、トビの高さから素質は一級品。広いコースで改めて。

マーゴットソラーレ

寸詰まりの体型だが、その分、438kgの割にトモが張っている。馬のスケールでは、この中に入ると、上の方ではない。ゲートは五分に出たが、出脚で差が有り、少し押して中段から。3角迄は問題なくはスムーズに走れていたが、3角から置かれっていた。しかし、直線に向いてからは盛り返しており、4着。前走函館戦は逃げる形だったので、分からなかった部分だが、コーナーの脚がサッパリ。これも東京で見てみたい馬。

トレミニョン

この時期の2歳馬としても、全体に馬が薄い印象。明らかにトモも甘い。見た目だけをいえば未勝利レベル。一完歩目で躓き、出脚が鈍って後方から。道中はまだしも、勝負どころから内目を回って距離を稼ごうとしていたが、ノメッて付いて行けず。その割に直線は頑張っていたということもいえるのだが、今日は馬場が味方しなかった印象。尤も、馬の完成度が低過ぎて、現状で良馬場なら500万を勝てるかどうかは微妙だが...。

ガイアメンテ

前肢にバンテージ。前述した様に馬のスケールは大きい。完成度という点でも良く出来ていたが、下見でかなり気負っていた。ゲート内も落ち着きがなかったが、アオって後方から。3角手前から動いて行ったが、4角で好位グループに取り付いたところで脚がなくなった。今日は競馬にならず。参考外では有るが、滞在でイレ込んでいた点は気になるところ。今後は調教に工夫が要る。

第43回新潟2歳ステークス(GⅢ)

アスコリピチェーノ

+8kg。垢抜けた馬体。迫力満点というタイプではないが、このメンバーでは馬体の完成度で抜けている。ただ、歩様はもう少し。体幹はまだ甘いかも。ゲートで後手に回って、後方に近い位置。マイルが初めてということも有るだろうが、行き振りが良過ぎて、道中は少しずつ番手が上がり、4角で中段。直線に向いた段階で楽勝の手応えだったが、左手前のままで少しフラフラ。トビが大きく、このメンバーなら性能は一枚上だが、下見通り、鍛える余地は残している。これで一息入れて暮れの阪神戦へ向かうことになるだろうが、このままでは通用しない。

ショウナンマヌエラ

少し緩さも有ったが、462sの馬としてはドッシリと大きく見せていた。歩様も悪くない。好発。出脚も速く、スッとハナ。新潟マイルだったことも有るが、この馬自身に人気がなかったことも有り、誰も競り掛けに来ず、1000m通過59.8秒とスロー。4角を回り切ってから、直線は馬場の3分どころへ持ち出し、最後迄止まらずに良く粘っていた。今日は相手が悪かった格好。2歳重賞の2着は賞金が中途半端で、重賞を使うしかないのだが、この先行力を生かしてもう一発有っても驚けない。

クリーンエア

コンパクトに纏まっていて、現時点での完成度は高い方。歩様にも非力な印象はなかった。ゲートを躓き気味に出て、出脚が鈍ったが、馬がソノ気になって先行。壁がない状態だと引っ掛かりそうな気配も有り、前にヒヒーンを置いて何とか宥める形。アスコリピチェーノが先に動いてくれて、これもいい目標になったが、いざ追い出して何度も手前を替えて、外へ大きくヨレる場面も有った。その割には、そこ迄離されていないだけに、勿体ない競馬。これもソコソコ力は有りそう。500万なら何とかなる筈。

ルクスノア

良くいえばスッキリと出来ているということになるが、まだ全体に力が付き切っていない。歩様も頼りない。ゲート五分。出脚は速かったが、好発を決めたショウナンマヌエラに叩かれて、好位に控える形。最初は頭を上げていたが、何とか宥めた。直線に向いて、一瞬の反応は有ったが、ラスト200m辺りから大きく外へヨレてしまい、伸びを欠いた。ほぼ全馬が真っ直ぐ走れていないとはいえ、その中でもヨレ方が酷かった。鍛錬不足。

シリウスコルト

前肢にバンテージ。+10kg。この時期の馬体増は無条件で歓迎したいところだが、見た目には腹回りがボテッと映った。歩様にもブレが有った。ゲートも速い方ではなかったが、出脚もなく後方から。このスローだが、オッツケる場面も有り、むしろ少しズブい位の行き振り。直線もジリジリだった。1200mで新馬を勝ち上がったが、今日の内容だけで判断すれば距離が延びた方が良さそう。

サマースプリントシリーズ第5戦 第18回キーンランドカップ(GⅢ)

ナムラクレア

このメンバーだと馬が抜けている。筋肉の輪郭も浮いて、いきなりからデキも良かった。首でリズムを取って、下見所の外をキビキビと周回しており、気配も文句なし。出負けと迄は行かないが、内外の馬が好発を決め、急かすことなく中段から。この馬本来の出脚を考えればジックリ乗られた。3〜4角中間から外をジワッと動き、前の馬が外へ張り出して来た関係で直線は馬場の6分どころ。逃げたシナモンスティックが2着に残る位だから、結果的に外を回され過ぎたということになるのだが、最後は底力でネジ伏せた。GⅠでも勝てるだけの力は有る。あとはちょっとした運だけ。

シナモンスティック

+12kg。デビュー以来、最高体重となるが、輸送が有った前走で減っていたのが戻った分も。フックラ見せて、悪くはなさそう。歩様も落ちていない。出脚が一番速かったという訳でもなさそうだが、今日は決め打ちしていた様で、押して押してハナ。本来は逃げたいタイプのレイハリアが一完歩目に躓いたことはこの馬にとっていい方に出たが、600m通過が34.1秒と、馬場状態を考えれば少し速い流れ。好位勢が少しずつ脚が鈍って来た中で、4角迄単騎で回って、馬場のいいところを選ぶ余裕も有った。マトモなら完全に押し切り体制だったが、ナムラクレアは流石に強かった。ただ、逃げた馬がラチを頼らずに残せるのはそれなりに力がないと出来ないこと。今回が初重賞挑戦だったが、直ぐにチャンスは回って来る筈。

トウシンマカオ

前後肢にバンテージ。+6kg。これもデビュー以来、最高体重。ビッグアーサー産駒にしては馬格のないタイプだが、大分成長して来た。雨が降っていた割には発汗していたが、首を下げて歩いていた点も好印象。好発。出脚も一番速い位だったが、シナモンスティックが内から主張して、好位の外。3角過ぎからの手応えが渋かったが、ナムラクレアが外からマクりに来たタイミングで進出。内目へ潜りながら、一瞬は勝ったかの脚だったが、シナモンスティックが交わせそうで交わせず3着止まり。今日の馬場も向かなかったのだろうが、それは他馬も似た様なモノ。重賞だとワンパンチ足りない。

シュバルツカイザー

+6kg。毛色の関係も有るが、500kgは切っていた方が馬をスッキリ見せる。500kgジャストの今日は少し緩い。トモが少し甘い歩様は元々だが。好発。枠も遠かったが、出脚もそこ迄速い訳ではなさそうで、押して好位。行き脚が付いてからの行き振りは悪くなかった。ナムラクレアより一歩前からの進出、自力で勝ちに行く競馬。ただ、ずっと外を回されてしまった分も有り、ここ迄。とはいえ、北海道は走る。一息入れることになるだろうが、中山もこなせるので、年末にも出番有りそう。

ヴァトレニ

446kgとスプリントを走る馬にしては小柄だが、馬体は纏まっていて良く出来ている。歩様も伸びやかで、デキにケチを付けるところはない。これも出脚は決して速くなかったが、押して押して2番手。しかし、3角過ぎから苦しくなって少しずつ置かれそうになっていたところへ、トウシンマカオが来て、徐々に内へ押し込められてしまった。とはいえ、脚が有ればもう一歩前で競馬出来ていた筈で、それなら馬場にいいところを選べていた。道悪も良くないだろうが、重賞のメンバーだと少し壁も感じるところ。

サマー2000シリーズ第4戦 第59回札幌記念(GⅡ)

プログノーシス

前後肢にバンテージ。トモが張って、今日も馬は良かった。一歩一歩にブレがなく、体幹の強さを感じさせた。落ち着いていたのも好印象。今日はゲートを決めたが、行く気はなく後方。スタート直後は枠なりに外を走っていたが、1角で内へ。雨上がりの馬場で内目を避けた馬が多く、持ったままながら向正面で上がって行き、3角でジャックドールと同じ位置。コーナーは少し脚を矯め、4角手前から少し外へ持ち出しつつ一気に進出。直線は独走だった。ただ、鞍上がイチかバチかで思い切って乗ったのがハマった感も強い。この後、使うとすれば、東京戦ということになるが、上がり32秒台の決め手勝負に向いているとは思えず、中山の方が向いている印象。ディープインパクト産駒だが、ステイゴールドに近い。

トップナイフ

古馬相手だと迫力負けする面は否めないが、馬が若いだけ有って、柔軟性が有る。首でリズムを取って、活気も有った。例に依って一完歩目が遅かったが、一旦最後方迄下げてから、プログノーシスより先に内目へ潜って1角で好位直後。1頭だけ内ラチ沿いへ寄せていた。こういった馬場でも、内から1頭分だけ悪くないというケースは良く有るパターンだが、道中はノメっている雰囲気はなかった。3角過ぎから一気に動いて、4角手前で先頭。プログノーシスには屈したが、大健闘の2着。これも思い切った騎乗が功を奏したが、先行馬だけにゲートは決めたいところ。ゲートが決まらないとアテにし辛い。

ソーヴァリアント

2人曳き。結果に関係なく、馬はそれなりに何時も良く見せている。手先のスナップも利いていて、一流馬の雰囲気が有る。気配も良かった。ゲートは少し分が悪い程度。最内枠だったが、こちらは外を意識して乗られ、数頭分開けた位置。ただ、正確なところは、馬場のいいところを選んだというよりは、馬の集中力を続かせる為に、敢えて窮屈な位置へ突っ込んで行った様にも見えた。頭を上げて行きたがる場面も有ったが、兎に角ジッと我慢。3角辺りから馬群がバラけて来て、3〜4角中間からプログノーシスを目標に進出。前に追い付く気配はなかったが、3着は確保。悪い時は馬が自分で止めていただけに、鞍上の工夫が生きた一戦。まだアテには出来ないが、キッカケは掴めたといえそう。

ダノンベルーガ

計測していない前走香港戦を別にして、508kgはデビュー以来、最高体重。それでも馬体はスッキリと見せて、これでいいが、少し歩様にブレが有る。ゲート五分。出脚も怪しかったが、1F程走ったところで、両サイドから挟まれて一旦引く場面。その結果、上位馬同様に内目を回って追い上げて行く形。向正面半ばから動いて、眼前のトップナイフを追い掛けて行った。直線は流石に苦しくなったが、ソーヴァリアントとは僅差の4着。これも集中力に難が有るタイプだが、ソーヴァリアントとは手法は違えど、上手く乗ったといえるだろう。

ヒシイグアス

+16kg。2走前の中山戦もそうだったが、これ位の数字でも太くは見せない。馬体が確実に良くなっている。馬に集中力も有った。外枠ということも有ったか、行く気もなく後方に近い位置。外を回っていたとはいえ、道中は折り合いも付いて、問題なく追走。3〜4角から追い上げて行く脚も悪くなかったが、直線に向いてからが伸びなかった。夏場は怪しいタイプでは有るが、今日は外を回った組が全滅で、良く分からないというのが正直なところ。早仕掛けも得意とはしていない。

ジャックドール

+8kg。少し立派過ぎるといえばそうだろうが、その分、馬に迫力が有った。一応は許容範囲だろう。歩様もスムーズで、気配も良かった。好発。無論、出脚も速い方だが、一瞬内外の出方を窺った際に、外からユニコーンライオンが一気に来て、好位に控える形。2番手ならまだ結果が違った可能性も有ったが、更にアフリカンゴールド、内からもウインマリリンが来て、離れた4番手から。道中は楽に行けている様に見えたが、3〜4角中間でトップナイフが内から上がって行った際に、追い掛けられるだけの機動力がなかった。直線もまったく伸びず。切れるタイプではないだけに、やはりもっとテンから積極的に乗った方が良かった。とはいえ、今日の馬場で人気を背負うと、中々それも難しいのだが...。

サマースプリントシリーズ第4戦 第58回テレビ西日本賞北九州記念(GⅢ)

ジャスパークローネ

前後肢にバンテージ。馬体は前走中京戦とほぼ変わらない。酷暑故か、重賞にしてはデキの怪しい馬が多かったが、馬が張っているのが何より。今日の方が気配に集中力も有った。今日も好発。一完歩目は躓き気味だったが、出脚でカバーして、1馬身抜けてハナへ。600m通過32.9秒も、小倉のコース形態を考慮すれば、少し速い程度。道中はずっと単騎。自分で呼び込んだことでは有るが、4角手前で好位勢が次々脱落していく展開もいい方に出た。直線入口で後続を突き放し、最後は詰められながらも、このリードを守り切った。中山戦直行だそうだが、最後に詰められたのは下見からは分からない強行軍の影響も有るだろう。このスタートが再度、決まればいいが、常識的には厳しい。

ママコチャ

+8kg。スプリントならこれでもいいのかも知れないが、少し太いかも。歩様はスムーズで、ブレもなかった。この馬の出脚で好位直後。所謂徹底先行タイプが数頭居た中で、それらからは一歩引いての競馬。1200mが初めてとは思えない位、上手く流れに乗れていた。4角の手応えも充分で、最後迄ジワジワ差を詰めていたが、惜しい2着。結果的に4角で外を回った分の差が出ただけで、勝ちに等しい内容。スピードで負けなかったのが何より。賞金面で加算出来たのも大きく、今のスプリント路線なら、中山戦直行でも通用していい。

ストーンリッジ

前肢にバンテージ。皮膚を薄く見せて、デキは良さそう。馬体のメリハリも利いていた。スプリント戦だけに許容範囲では有るが、テンションが高い。ゲート五分。出脚は決して速くないが、枠の利で中段やや前辺り。インを立ち回って、セコい競馬は出来た。直線も、スティクスとテイエムスパーダの間から上手く割って一旦は2番手に浮上したが、最後はママコチャに捕まって3着止まり。元々3着の多いタイプで、堅実なのも間違いないが、コース利が味方した感が強く、能力面で高い評価はし辛い。

スマートリアン

少し頭は高かったが、これもジャスパークローネと並んで、馬は良く見えた。ゲートは五分。外枠が響いたというより、他が速く、中段やや後方から。向正面は決していい方ではなかったが、逆にコーナーでは抑え気味。直線に向いてからは伸びているが、結果的に前有利の形となり、実質的には競馬が終わった後。前走福島戦の様に、もう少し時計が掛かってくれた方がいいのも確かだが、まずは鞍上も積極的に乗らないと。

ボンボヤージ

後肢にバンテージ。+12kg。馬体に張りがなく、お世辞にもいい様には見えない。気配は昨年と似た様なモノ。この馬の出脚で中段から。道中はスムーズに運べたが、昨年と違い、4角で進路を探しながら、少し外へ持ち出す形。その分、一歩後手に回った感は有った。これも最後は伸びているが、今日の展開だとこれでは苦しい。馬のパフォーマンスとしては、昨年と同じだけのことが出来ている。小倉は余程得意としている様。

モズメイメイ

-8kg。前走京都戦が+10kgで良く見せただけに、馬体減はあまり歓迎しない。前走京都戦の方が明らかに馬は良かった。歩様にも少し硬さが有った。前走程ではないにせよ、今日もゲートで半馬身位のアドバンテージは有ったのだが、それ以上にジャスパークローネが速く、好位追走の形。道中のリズムは決して悪い様には見えなかったが、4角でアラアラ。経験の問題も有るが、やはりベストは1200mではない。

サマーマイルシリーズ第3戦 第58回関屋記念(GⅢ)

アヴェラーレ

-12kg。数字分だけスッキリした印象。少なくとも細い印象はない。前を歩くディヴィーナのデキが良過ぎて少し霞む面は有るのだが、状態にケチを付けるところもない。ゲートは直ぐ内のディヴィーナの方が良かったが、それでも前走東京戦よりは出た方。そのディヴィーナを行かせて中段のイン。全体では8番手辺りから。道中はちょっと頭が高く、気負い気味の追走。その割に直線に向いた時の手応えは抜群で、最初に前を行くディヴィーナとロータスランドの間を狙って失敗しているのだが、立て直してロータスランドの外から伸びて来た。ただ、追ってからも頭が高い。前走は外枠で負けたが、脚の使いどころに難しさが有りそう。今日は直線の捌きを失敗した以外は、内枠が生かす形になったのが大きかった。今後もアテにし辛い。

ディヴィーナ

+4kg。馬体が減らなかったことが何より。例に依って数字の割に良く出来ている。伸びやかな歩様も落ちていない。前走中京戦同様、ゲートは微妙に悪かったが、今日は押して好位。それでも折り合いは付いて、スムーズに走れていた。直線入口から少し動かして前の進路を確保。新潟だと少し早仕掛けだった筈で、ラスト200mで先頭に立ったものの、アヴィラーレの強襲に遭い2着止まり。ただ、サマーマイルシリーズの優勝を考えると、今日は勝たないと意味がないレース。それ故の積極策だったともいえるだろう。結果論でいえば、もう少し大事に乗った方がということになるが、これはこれで仕方がない。サマーマイルシリーズは諦めて、東京戦迄待機する様だが、ここ2戦で地力強化は明白。何とかタイトルが欲しいところ。

ラインベック

前後肢に手先のみのバンテージ。-6kg。数字は減っているが、少し馬体の張りが甘い印象も。歩様も少し硬い。好発。外枠故に難しい部分も有っただろうが、無理に引っ張ることはせず、この馬の出脚で好位。トビが大きいので、ノビノビ走らせたかったのだろう。結果的にロータスランドがいい目標にもなった。外枠の分が影響したことも事実だろうが、最後に甘くなったという印象はない。良く食い下がっていた。中々強い内容。とはいえ、アヴェラーレの様に、内枠を引けば即勝てるというタイプの馬もなさそう。連の軸としてはいいが、単勝は狙い辛い。

フィアスプライド

シープスキンノーズバンド。+6kg。全体に造りが緩い。物見していて重心が上がっていた分も有るが、歩様にも力強さがない。ゲートは出たが、行く気なく後方に近い位置。眼前にラインベックが居た。直線に向いてからも暫く追い出しを我慢。セオリー通り、内外の合流地点から追い出し、ジリジリ伸びているが、前を捕まえるだけの迫力はなかった。ただ、札幌戦を除外されての今回。デキが甘くても陣営は責められない。この状態で頑張った馬を褒めたい。ディヴィーナ同様、東京戦へ向かう様だが、狙い目に。

メイショウシンタケ

-4kg。元々細身だが、今日は特に細く映った。馬に活気が有って、デキは悪くないのだが...。歩様も頭が高い割には悪くなかった。ゲートで分が悪く、そのまま後方から。道中は前に馬を置いて、宥めながらの追走。外には馬が居なかった割にじは末脚が残っていた。

サマー2000シリーズ第3戦 農林水産省賞典第59回小倉記念(GⅢ)

エヒト

+2kg。数字はたいして変化ないが、叩いて順当に良化。馬体の張りが良くなった。歩様もスムーズ。ゲートでトモを落として半馬身出遅れ。しかし、ポジション争いはあまり激しくならず、押したとはいえ、好位を確保。出して行った割には折り合いも付いて、リズム良く走れていた。テーオーシリウスが終始、いいペースで逃げてくれたことで、追い込みにキツい展開。好位のインにいたこの馬にとってはいい形になった。更に、テーオーシリウスは早目に動いてくれたことで直後に居たこの馬には進路のお膳立て迄してくれた。ラスト200mでテーオーシリウスに並び掛け、あとはチギる一方。展開も向いたが、完勝。今日の内容だけだと相手関係的に高い評価はし辛いのだが、出脚の問題から距離をもう少し延ばしてもいいかも。2200〜2500m戦に手薄なレースが最近多く、上手く噛み合えば面白い存在に。

テーオーシリウス

-12kg。少し細い位だが、良く言えばギリギリ迄仕上げたといえる範囲。ただ、もう少し落ち着いて欲しい。ゲート五分。出脚も速かったが、それに以上に枠の利が大きく、然程労せずハナへ。1000m通過58.7秒だから、極端なハイペースではないが、気持ち良く行けた。4角も後続を待たずに自分のタイミングで追い出し、抜け切りたかったところだが、結果的にエヒトにいい進路を与えてしまった感も。ただ、この馬自身もトビが大きくて、瞬発力には課題を残すタイプ。これはこれでベストの手。少なくとも鞍上は責められない。

ゴールドエクリプス

+6kg。例に依って牡馬顔負けの迫力。デビューした時からいい馬だったが、イレ込みがなくなった点も好材料。一完歩目に躓いて先行争いに敗れ、仕方なしに馬群の中へ突っ込んで後方に近い位置。最初はインに潜ろうとしていたが、同じ後方からの競馬でも内ラチ沿いを通れていれば、4角でエヒトの直後迄来れていた。実際は3〜4角中間から徐々に進路を求め、直線は馬場の3分どころ。今日の展開だと絶望的な位置だったが、最後にマリアエレーナを捉えた脚に性能の一端は示した。このメンバーでも勝てる力は有る。今後もチャンスは続く。

マリアエレーナ

-2kg。428kgしかないが、歩様の力強さが特筆モノ。馬体もキリッと出来ていた。デキにケチを付ける部分はない。ゲート五分。この馬の出脚で楽に3番手を確保。道中はスムーズだったが、3角過ぎからテーオーシリウスを追い掛けている筈が、ズブくて中々追い付けない。直線は離される一方で、最後はカレンルシェルブルにも捕まりそうになっていた。戦前から懸念していた通り、やはりガサのない馬に56.5kgはキツい。平坦且つ55kgで行われるレースが有ればいいが、現行ルールだと京都大賞典以外にない。ただ、これはこれで距離が微妙。使うところが難しくなって来た。

カレンルシェルブル

シープスキンノーズバンド。+2kg。512kg有る割に迫力がなく、全体に緩慢。歩様にも勢いを欠く。スタート直後にテーオーシリウスと接触して出脚が鈍ったが、そもそも鞍上に行く気がなく、後方のイン。道中はジッとして、4角から進路を探しながら、結果的にゴールドエクリプスの外へ。今日の展開でこの騎乗だと、鞍上に勝つ気が有ったとは思えないが、最後の最後に脚を使った分の入着。3走前に福島でも勝っているが、本来は広いコース向きの馬。デキがイマイチに見える点はネックだが、もう少し馬の見栄えが良くなれば重賞でも好勝負。